世界記録保持者の高木美帆(31=TOKIOインカラミ)が本命種目でメダルを逃した。過去2大会銀メダルだった1500メート…
世界記録保持者の高木美帆(31=TOKIOインカラミ)が本命種目でメダルを逃した。過去2大会銀メダルだった1500メートルで1分54秒865で6位。最大目標に掲げた大本命での頂点には届かず、500、1000メートル、団体追い抜きの銅メダル3つで大会を終えた。オランダのライプマデヨングが1分54秒09で初の金メダル。姉の菜那さん(33)が4度目の五輪を終えた美帆にメッセージを寄せた。
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今回の五輪は、どの美帆も「美」しかった。4種目それぞれ思いが乗ったレース。うれしい思いも、悔しい思いも、いろいろな美帆が見られた五輪だった。
正直に言えば、1500メートルは金メダルを取ってほしかった。めったに口に出さない妹が目標に掲げた種目で6位。北京五輪後、思うように1500メートルで戦えないことも増える中、金メダルを取りたいと宣言した。力が分かっていながら、挑み続けるのは怖いこと。どんなに頑張っても戦えないと感じることもあり、ずれていることも受け止めていた。レース後はすごく泣いていたが、後悔の涙ではなかったはず。逃げずに向き合った美帆も美しかった。
今回は解説者として現地観戦した。どの選手とも同じ立場にと、あえて「高木選手」と呼んだが、姉としての思いを捨てきれなかった。高木菜那として応援していた自分がいる。全然隠しきれなかった。4種目のうち純粋に観客席から応援したのは500メートルだけ。10年バンクーバー大会以来に、声を出して応援できてめちゃくちゃ楽しかった。姉として家族として、美帆の勝ちを願いながらレースを見られてうれしかった。
五輪10メダルに到達できたのは、孤独にならなかったから。世界のトップを走ると、孤独になるタイミングがある。私は美帆を一度も憧れと思わなかった。どんなに差が開いても追い越してやると、絶対に美帆を1人にしないと戦ってきた。私の引退後、23年からチームを作った。私は自分から行動するタイプで、美帆はついてきた子。自分の足で踏み出して作ったものは一生残る。泣いて喜び、悲しむ仲間ができた。宝物になる4年間だったと思う。だから美帆は強かった。
引退後は姉妹の関係もかなり変わった。現役のときは、2人とも心に薄いガラスの扉を張っていた。スケートの話でも、競技者同士で距離を取ることもあった。今は普通の姉妹に戻った感覚。五輪期間中は会わないようにしていた。決して仲が悪いわけではありません(笑い)。これまで選手として近くにいて、美帆がきついときにはうまくやっていた。今回500メートルのあとはうれしすぎて、テレビに隠れてミックスゾーンでグータッチをした。姉として、単純にうれしかった。1500メートルのあとも同じ。最後ならいいかなと、泣いて抱き合った。家族として一番近くで支えられるのは私。あのときは姉に戻って、美帆も妹に戻っていた。
美帆は、美しく帆を張って進んでほしいという意味を込められてつけられた名前。きっと美帆はこの名前が好き。五輪が終わってもシーズンは続く。最後の最後まで美帆らしいシーズンにして、美しいレースをしてほしい。(18年平昌五輪女子マススタート、団体追い抜き金メダル)