<ミラノ・コルティナオリンピック(五輪):フィギュアスケート>◇19日(日本時間20日)◇女子フリー◇ミラノ・アイススケ…
<ミラノ・コルティナオリンピック(五輪):フィギュアスケート>◇19日(日本時間20日)◇女子フリー◇ミラノ・アイススケートアリーナ
【ミラノ=藤塚大輔、木下淳】ショートプログラム(SP)3位から出た世界女王アリサ・リュウ(20=米国)が、逆転で初の金メダルに輝いた。フリー1位の150・20点で、合計226・79点。坂本花織(25=シスメックス)を1・89点差でかわした。米女子としては02年ソルトレークシティー大会のサラ・ヒューズ以来24年ぶりの奪還。初の団体との2冠も遂げた。
24年ぶりに最高位へ掲揚された米国旗を見つめるリュウに、涙はなかった。表彰式で銀の坂本、銅の中井と、わちゃわちゃ。取材エリアでは「一番のお気に入りなの」と、金メダルより金ドレスを記者団に自慢した。SP後「メダル? いらない」と無欲だった20歳は完璧演技の後も「金メダルを取った、だけ見出しに取らないでよ。私の物語を見てね」と笑い飛ばした。
言葉通り、波瀾(はらん)万丈だった。中国当局が民主化運動を武力弾圧した1989年の天安門事件で亡命した父を持つ移民。匿名の卵子提供者による代理母を通じて生を受けた。史上最年少の13歳で全米選手権を制し、前回22年の北京大会は16歳で6位。翌月の世界選手権で初の銅メダルに輝くと、電撃引退した。
最高峰エベレストに登ったり、ハーバード大やスタンフォード大と並ぶ超高学歴のカリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)で心理学を学んだり。スケート靴は1年半もクローゼットの奥に放り投げていたが「嫌いだった」はずの氷の上に、ふと乗った24年、わずか20分の準備運動で3回転サルコーを着氷できた。3カ月後に3回転5種を取り戻すと、昨年の世界選手権とGPファイナル、さらに五輪と1年間で3冠。天賦の才は、さびなかった。
引退から復帰して2年で五輪女王。「人から『やるな』と言われることを実行することが大事かな。人生サイコー」と大笑いし「痛みゼロだったよ」と、自ら貫通した歯茎ピアスを輝かせた。虎のしっぽのようなグラデーションの髪も振り回した演技後は、放送禁止用語の“Fワード”を発して喜んだ奔放娘。米女子初の団体との2冠も遂げた。自由の国を象徴する個性的なシンデレラが、ミラノの最優秀主演女優になった。
◆アリサ・リュウ 2005年8月8日、米カリフォルニア州生まれ。5歳の時に地元オークランドでスケートを始める。ジュニア前のノービスだった19年にシニア全米選手権で優勝。14歳の時に4回転ルッツと3回転半を同時成功(世界女子初)。引退から復帰した後の25年世界選手権で坂本の4連覇を阻む。米誌によると、お気に入りの衣装代は約124万円。父は中国四川省出身の弁護士で5人きょうだいの長女。趣味はダンスなど。158センチ。