<ミラノ・コルティナオリンピック(五輪):フィギュアスケート>◇19日(日本時間20日)◇女子フリー◇ミラノ・アイススケ…
<ミラノ・コルティナオリンピック(五輪):フィギュアスケート>◇19日(日本時間20日)◇女子フリー◇ミラノ・アイススケートアリーナ
ショートプログラム(SP)首位発進の17歳、初出場の中井亜美(TOKIOインカラミ)が、合計219・16点で銅メダルを獲得した。
伊藤みどり、荒川静香、浅田真央、坂本花織に続く女子5人目の快挙。22年北京大会の鍵山優真の18歳を塗り替える、日本勢最年少メダリストとなった。SPに続いてトリプルアクセル(3回転半)を成功。日本女子3人目となるSP、フリー両方での成功者となった。
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17歳が、女子フィギュア界の空気を変えた。シニアデビューシーズン、グランプリ(GP)シリーズ初戦のフランス大会。22年から世界選手権を3連覇した坂本花織を表彰台の端に追いやった。日本女子史上3人目の初出場初優勝。坂本に言わせた。「これが若手に負けるってやつか。初めての感覚。こっちから見たら超怖い」。上位6人によるGPファイナルでも破り、日本勢トップの銀メダルを獲得。先頭を走り続けてきた女王に、若手の勢いに押される危機感を初めて強烈に意識させたのが、高校生の中井だった。
百戦錬磨のベテラン勢にも、鮮烈な影響を与えた。22年北京五輪代表の樋口新葉は、中井が演技中に歌いながら滑る姿に触発。自らも「力が入りやすい」とまねして口ずさむようになった。今季GPフランス大会で4年連続の銅メダルを獲得した住吉りをんも、その1人。移動の機内というつかの間の休息時間でさえ、自身の演技映像を繰り返し視聴して研究に没頭する中井の姿勢に「すごい。まねしたくてもできないこと」とうならされた。
中井は練習への向き合い方でも、周囲を圧倒してきた。海外大会から10時間以上かけて帰国した直後、空港からリンクへ直行するほど。それも、大会で見せるのと変わらない純粋な笑みを浮かべながら。所属のMFアカデミーで、最も地味で、過酷とされるスピン練習を担当する竹野コーチは証言する。「亜美ちゃんは、いつでも全く変わらない。五輪が決まった後もそう。どんな時でも笑顔で練習してきた」。その姿がリンクメートで6学年以上離れた先輩たちの心にも火をともした。24歳の青木祐奈が、同じトリプルアクセルを武器とする姉貴分の渡辺倫果が、「負けていられない」と奮起。初出場の4大陸選手権を制した青木を、今季の現役続行に導いたのも中井の一言だった。
そんなニューヒロインにも、人知れず重圧を抱えていた時期があった。「試合に出るのが怖かった」。誰にも負けたくない、その一心で突き進んできた競技生活。五輪代表争いのプレッシャーから、GPファイナルでは「周囲からの期待を実感してしまった」と逃げ出したくなる怖さも味わった。だが、そのたびに思い出してきたのが「スケートが好き」という揺るぎない自己軸。「そういう時は、『これはいつもの自分じゃないな』って思います」。17歳の“自然体”。そこには、とんでもない爆発力を秘めていた。【勝部晃多】
◆中井亜美(なかい・あみ)2008年(平20)4月27日、新潟市生まれ。5歳で競技を開始。21年にMFアカデミーに移籍。22年全日本選手権4位。23年世界ジュニア選手権銅メダル。24年に通信制の勇志国際高に進学。同年ジュニアGPファイナル3位。シニア1季目の25-26年シーズンはGPフランス大会で日本女子3人目の初出場初優勝。GPファイナルは日本勢最高の2位。身長150センチ。