■渡邊…
■渡邊、富樫が語るトム・ホーバスと歩んだ4年間
「自信がついた4年間でした」
ホーバスジャパンの中心にいた渡邊雄太と富樫勇樹のリーダー2人は、2月18日に沖縄で開催されたメディアデーにおいて、「前任のトム・ホーバスヘッドコーチの下で成長したことは何か?」の質問に対し、2人して同じく『自信』だと語った。そして「トムのもとで得たことをこれからにつなげていく」(渡邊)と意気込み、新体制への決意を表した。
2月2日、日本バスケットボール協会(JBA)は、ワールドカップ予選Window2を直前に控えながらもホーバス氏との契約終了を発表。東京オリンピック後の2021年秋から続いた4年間の体制に終止符を打った。
ホーバス氏の契約終了について、JBAは、これまでの功績に感謝を示したうえで「双方の方針の違い」(島田慎二会長)を理由に挙げた。その違いが何を指すのかは具体的には語られなかったが、「今後は中長期を見据えて包括的(ホリスティック)に強化していくことが必要で、そうした中ではホーバス氏の理念を曲げてまで強要するよりも、新しい体制でスピード感を持って進めることが大切だと判断。JBAの新しい方針を強要することは、多大な功績を残した指揮官に対してリスペクトを欠くこと」と伊藤拓摩強化委員長は説明する。
事実上の解任となったわけだが、ホーバス氏のこれまでの功績が色褪せることはない。記憶に新しい『FIBAワールドカップ2023沖縄グループステージ』では全員が戦う集団となり、フィンランド、ベネズエラ、カーボベルデから勝利を挙げ、トータル3勝でアジア内1位を獲得。2006年、日本で開催された世界バスケ(現ワールドカップ)以来突破できなかった「世界舞台での1勝」を果たし、ワールドカップ(世界選手権)における「ヨーロッパ勢から1勝」という壁を乗り越え、自力でパリオリンピックの切符をつかんだ。
パリでは勝利を挙げることはできなかったものの、開催地のフランスに肉薄するなど、確実なステップアップを遂げた4年間だったことは間違いない。日本代表のリーダー2人は「自信を持つこと」で壁を突破できたと感じていたのだ。
「トムにはすごい感謝をしています。『思い切りの良さ』というところは、間違いなくトムが伸ばしてくれた部分。まず、誰もがシュートを狙う。自分の目の前が空いたら3ポイントをしっかり狙う。これらができるようになったのはトムのおかげで、これからもトムの下で得た『自信を持ってプレーする』ことは引き継いでいきたい。(Window1の)チャイニーズ・タイペイ戦で連勝することができ、トムがいい形で終われたのは良かったと思います。公式発表が出る前に聞いていたので、直接トムに会って感謝の気持ちを伝えました。日本が成長した楽しい4年間だったのは間違いありません」(渡邊)
「個人的にも、チームとしても、トムさんには『自信』をつけさせてもらいました。沖縄で開催したワールドカップでパリオリンピックの切符をつかみ、パリでは3連敗したとはいえ、東京オリンピックと比べれば、試合の質の違いを見せることができ、それは見ている皆さんも感じだと思います。Bリーグが10年目になり、代表でもトムさんのもとで少しずつ成長している姿を見せることができました。自分もその中に一緒にいてすごく成長を感じることができたので、それをどう継続していけるかです」(富樫)
■桶谷新体制のもとに集合した「最強のメンバーたち」
強化方針について新任の桶谷大HCは、これまでの日本の良さであるスピード感や3ポイントを打ち切るスタイルについて「いいところは引き継いでいく。温故知新ではないですけど、いいものをしっかり残すところから入っていきたい」と語る。それに加え、自身が琉球で展開している「選手個々の良さを生かすチーム作り」のもと「さらなるディフェンス強化」をしていくことになる。
Window2の中国戦と韓国戦に臨むにあたり、Window1のメンバーをほぼ変えずに継続させたことについては「準備期間が短いこともあり、コンセプトをガラッと変えたくなかった」と桶谷HCは説明するが、理由はそれだけではない。今回の候補メンバーたちは、Bリーグで実績を残している選手たちで「前回のチャイニーズ・タイペイ戦で与えられた役割をこなし、良いバスケットを見せてくれた最強の選手」(桶谷HC)と判断したうえでの選考だ。Window1ではホーバス氏も「ベテランが多いことで練習の理解度が早く、チームの雰囲気がとても良かった」と手応えをつかんでいたことからも、今回のメンバー選考に異論はない。
大事なことは、ホーバス体制で得られた「自信」をどう継続し、新体制につなげていくかだ。その点はリーダーの渡邊が語る「(ヘッドコーチ交替は)JBAが決めたことなので、僕たちはそれをしっかりと受け止めて、新しいコーチ陣とともにやっていく気持ちでみんな切り替えています」という言葉にあるように、選手たちはすでに一つになっている。
■「NO LAG」を継続し、ボールと人が動く展開で勝利を目指す
戦術として継続していく部分に対して渡邊は、Window1で強調して取り組んだ「NO LAG(ノーラグ)」を挙げる。最近のホーバス体制の反省点としては、ガードがオンボールスクリーン(ピック&ロール)を多用し、ウイング陣がコーナーに張り付くことから、動きが止まることが多かった。Window1ではそうした連携のなさを修正し、オフボールスクリーンやカッティングを多用し、全員が判断を早くして連携を作ることに取り組んだ。こうした動きに加えて今回は「ポジションレスのような形で、ボールと人を動かすことにも取り組んでいる」(渡邊)という。
「Window1ではコート上でのラグ(遅れ)をなくそうと取り組んできましたが、今回もそこは継続しています。こうした展開は、誰がヘッドコーチであっても重要な部分だと思っていて、今回コーチが変わっても、練習では『NO LAG』ができた部分が多かったので、そこはトムから引き継いでいきたいですし、僕らにフィットすると思います」
続けて富樫は、どんな体制になっても「ワールドカップに出続けることが大切」と力説する。
「やっぱり、ワールドカップに出続けることが、大変でもあり、大切なこと。次のワールドカップに出て、そのワールドカップで次のオリンピックにつなげていくことが大切。これからもワールドカップに出続けて、大会ごとに成長していく姿を見せていきたい。危機感と責任感を持って戦います」
2023年に歓喜を味わった沖縄の地で、桶谷大、ライアン・リッチマン、吉本泰輔の新体制がスタートを切った。ホームで戦う重要な2月26日の中国戦、3月1日の韓国戦に向けて渡邊は、選手全員の思いを代弁するかのように、取材の最後にこう語った。
「自分たちは次の目標に向かって、(体制が変わっても)そこはプロフェッショナルな集団として、新しいコーチ陣とともに、お互いが信頼しながらやっていきます」
文・写真=小永吉陽子
【動画】渡邊雄太が日の丸を背負う”覚悟”を語る