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■「継承」と「進化」――桶谷HCが描く新たな日本代表像


 2月18日、バスケットボール男子日本代表(22位)は『FIBAバスケットボールワールドカップ2027アジア地区予選Window2』に向けた直前合宿を公開。トム・ホーバス氏の後任としてロサンゼルス2028オリンピックへ向けた舵取りを任された桶谷大ヘッドコーチ(HC)ら新体制になって初めての合宿は、コーチ陣、選手ともに時折笑顔がこぼれる和やかな雰囲気でスタートした。

 今月末には中国代表(27位)戦 、韓国代表(56位)戦を控える。短い準備期間の中で、百戦錬磨の指揮官はどのようなスタイルでチームを作り上げようとしているのか注目が集まる。

 桶谷HCは「トムさん(ホーバス前HC)のバスケットの良い部分を引き継ぎながら、選手の個の良いところをしっかりと出てチームとしてまとまっていこう」と、最初のミーティングで選手に伝えたと語る。

 HCを兼任する琉球ゴールデンキングスでは、強力なビッグマンを擁したインサイドを強調するスタイルで4年連続Bリーグファイナル進出に導いてきた。しかし、日本代表は世界やアジアの強豪チームに比べてフィジカルで劣る。琉球のスタイルを基盤にするのではなく、3ポイントシュートを重視するスタイルを引き継ぐ形になるのだろうか。

■琉球型は持ち込まない? 素材で変わる戦術設計


 桶谷HCは「チーム作りの考え方はあまり変わらない。僕が今までやってきたことは、『素材を活かして、いかに生産性を上げるか』です。選手の個性をしっかりと引き出しながら、一つ一つの個の力を大きくしていくことで、大きな輪を作っていく、そういうイメージでチームを作っています」と説明する。

 要するに、素材である選手が変われば、生産性を上げる手法であるバスケのスタイルは必然的に変わるということだ。

 生産性の最大化を図るためには、第一に素材の持ち味を知ることが求められる。桶谷HCは練習中、足を止めることなくコートを歩き回り、選手に目を配っていた。「一日1万歩歩くことを日課にしているので」と冗談を交えつつも、「歩きながら、選手の顔の表情や、誰が気持ちよくバスケができているかを見ていた。選手とコミュニケーションをとりながら、これまでの映像も見て考えていきたい」と話す。

 2022年以来の代表復帰となったシェーファーアヴィ幸樹は、「桶谷HCはマネジメント能力が高い印象がある。細かい部分はコーチに任せながら、しっかりとゲームを見て正しい方向にチームを向かせる力がある」と感じているという。

■リッチマン×ダイス吉本――攻守を分業する新体制の狙い


 短期間で生産性を上げるという意味においても、ホーバスジャパンの良い部分を引き継ぐという方針は理にかなっている。その土台に、オフェンスでは「ペースとスペーシング」、ディフェンスでは「規律」という独自のカラーを加えていく。

 先立って行われた就任会見で語ったように、オフェンスはライアン・リッチマンアシスタントコーチ(AC)が、ディフェンスは吉本泰輔ACが構築を担う。NBAでのコーチング経験を持つ二人が、日本代表にどのような変化をもたらすのかも興味深い。

 ホーバスHC指揮下の日本代表で継続的にプレーし、所属クラブのシーホース三河でリッチマンACと共闘する西田優大は、チームの変化についてこう語る。

「これまでの代表でオフェンスがうまくいっていない時間帯は、ボールが上(アウトサイド)でしか回っていなくて、タフショットを打って、リバウンドを取られて走られるという感じでした。桶さんが目指すオフェンスは、コート全体をうまく使いながら、ボールがしっかりとインサイドに入るので、ハーフコートのペースは非常に変わるかなと思っています。韓国はスイッチディフェンスをよく使ってきますけど、うまく攻略できそうな手応えを感じています」

 また、リッチマンACがオフェンスを担当することで、「プレーがしやすい。みんなが覚えなきゃいけないことを僕は覚えなくてもいいので、違う部分に頭を使える」と笑顔を見せた。三河でキャプテンを務める西田は「ライアンのもとで3シーズンプレーしているので、架け橋になりたい。僕が先頭に立ってやることで、みんなもうまくついてきてくれると思うし、そうすることによって練習がうまく回ればいいなと思っています」と、チームを引っ張る覚悟を高めている。

 同じく三河に所属するシェーファーも「三河でやっている、非常に流動的で、このポジションはこの動きと固定されずに、いろいろな動きができるバスケは、今の代表でも意識している部分。個人的には非常にやりやすい」と話し、「数年間一緒にプレーしてきたメンバーが多く、連携がすごく取れているので、良いところは残しながら、そのケミストリーに自分も入っていきたい」と、練習中も渡邊雄太らと笑顔でシュート対決をするなど積極的にコミュニケーションを図っていた。

 ディフェンスに関して、西田は「もちろんコンセプトはありますけど、まだ1セッションしか練習していないので……。でもその1回の練習で僕はダイスさん(吉本AC)のパッションをすごく感じました。なので、ディフェンスの強度がグッと上がりそうだな」と率直な印象を話す。

■再び沖縄から――新生ジャパンの船出


 新生桶谷ジャパンは、2月26日に沖縄サントリーアリーナで初陣を迎える。琉球を率いてきた指揮官にとっても「特別な場所」であり、日本代表にとってもパリ五輪の切符を掴んだ“聖地”。ロサンゼルス五輪への新たな旅は、あの熱狂の記憶が刻まれた地から始まる。

「ここで日本代表を背負ってバスケができることを幸せに感じますし、このメンバーと一緒にバスケができることを楽しみにしています。大事な試合、ホームで2試合勝ちたい」

 新指揮官は縁の深い地から再び大きな熱狂の輪を生み出すことを誓った。

文・写真=山田智子

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