筆者がスポーツ紙記者だった頃の昔話から。1995年6月、シカゴのマイケル・ジョーダンレストラン店内の大型ビジョンに、ニ…

「WMフェニックスオープン」では優勝争いを演じた松山英樹(左)と久常涼

筆者がスポーツ紙記者だった頃の昔話から。1995年6月、シカゴのマイケル・ジョーダンレストラン店内の大型ビジョンに、ニューヨーク州シネコックヒルズGCでの「全米オープン」中継が流れていた。上位争いを演じる尾崎将司さんの姿に、ステーキを食べていた野茂英雄さんが「すごいっすね~」と感心している。「世界一、争ってるんでしょ?かっこええなあ」。結果的に尾崎さんは3日目に「80」をたたき28位に終わったが、後に日本野球界のレジェンドとなる野茂さんもMLB挑戦1年目で初勝利を挙げたばかり。“世界のジャンボ”がまぶしそうだった。

日本男子ゴルフ界は黄金期だった。青木功、尾崎さん、中嶋常幸の“AON”に倉本昌弘らがまだ元気で、学生上がりの若手プロが挑んで世代交代が進んだ。2002年「全英オープン」では5位の丸山茂樹を筆頭に伊澤利光片山晋呉久保谷健一谷口徹の5人が予選通過。1994年(尾崎さん、友利勝良渡辺司、中嶋、飯合肇)、79年(青木、尾崎さん、中村通、島田幸作さん、山本善隆)大会に並ぶ日本男子のメジャー最多記録だった。

2026年、ようやく新時代が始まる予感がする。「WMフェニックスオープン」で松山英樹が2位、久常涼が10位。「AT&Tペブルビーチプロアマ」でその2人が8位。日本男子2人がPGAツアー(米ツアー)で2週連続トップ10を記録したのだが、これは近年ではとてもレアなことなのだ。

松山が米ツアーを主戦場にした2014年から昨年まで、松山本人が62回のトップ10を記録している一方で“日本人マルチトップ10入り”は16年「CIMBクラシック」(2位・松山、10位・石川遼)、21年「ZOZOチャンピオンシップ」(優勝・松山、7位・金谷拓実)、23年「ZOZO」(4位・石川、6位・久常、平田憲聖)、25年「バターフィールド バミューダ選手権」(3位・金谷、8位・星野陸也)の4大会だけだった。しかも「CIMB」はマレーシア開催、「ZOZO」2大会は日本開催、「バミューダ選手権」はプレーオフ後でシード争いのフォールシリーズ。今回の2大会は世界のトップランカーが集うフィールドの分厚い“王道トーナメント”とあって、はっきり言えば格が違う。

松山の米ツアー参戦後、15年に“第5のメジャー”「ザ・プレーヤーズ選手権」で8位になった石川、18年「RBCヘリテージ」で優勝した小平智らが奮闘したが、好結果は続かなかった。しかし、久常は参戦2年目の昨季もトップ10を4大会で記録。今季は前週まで3週連続だから、もう偶発的ではない。

一緒にコースチェックを行うことも増えた

今季の米ツアーには松山、久常に加え、すでにトップ10が6度の金谷、久常と同様にDPワールドツアー(欧州ツアー)から昇格した中島啓太、下部コーンフェリーツアー(KFT)から昇格した平田憲聖の5人が参戦している。また来季の昇格を目指し、KFTには石川、杉浦悠太大西魁斗が挑戦。欧州ツアーでは昨季の日本ツアー賞金王・金子駆大桂川有人らが顔をそろえる。昨季アジアンツアー年間王者の比嘉一貴や、故障に悩まされてきた星野陸也も上のステージを見据える。

多くの有望株が明確なビジョンを描き、世界に踏み出すのが当たり前になった。そこに今回の“王道大会”で2人がトップ10入り。松山の孤軍奮闘ばかりが目立った日本男子ゴルフ界の潮目が変わりつつある。そう思いたい。(編集部・加藤裕一)