26年ミラノ・コルティナ五輪(オリンピック)のフィギュアスケートで、日本勢の五輪ペア初となる表彰台、金メダルに輝いた三浦…
26年ミラノ・コルティナ五輪(オリンピック)のフィギュアスケートで、日本勢の五輪ペア初となる表彰台、金メダルに輝いた三浦璃来(24)木原龍一(33)組(木下グループ)の強みとは-。かつて三浦とペアを組み、現在はコーチとして活動する市橋翔哉さん(28)が、元選手目線で分析した。17日に日刊スポーツ・プレミアムのライブ配信に出演。ショートプログラム(SP)5位からの大逆転劇に信頼関係を見た。
【聞き手・ミラノ=松本航】
金メダルの瞬間は言葉が出ませんでした。「どうか自分たちのために滑って、納得のいく演技をしてください」と思っていました。日本人ペアが五輪であれだけの演技をする。私自身も「ペアをやってきて良かった」と思えた瞬間でした。
“りくりゅう”の強みは間違いなく信頼関係の強さです。全ての要素が世界最高峰。それは大前提として、会話をしなくても、互いのことを把握している。個人SPでは中盤のリフトで珍しい失敗がありました。多くのペアは動揺が、以降の要素に出ます。それでも続くスロー3回転ルッツを成功。これはただ毎日一緒に練習をしている、仲がいいからできるものはないですし、他にまねができない2人の関係性といえます。
シングルではどんな失敗も自分に原因があります。ペアは、そうではない。私も過去に技と技の間で「大丈夫。落ち着いていこう」と声をかけたのに「安心できる顔で言ってくれないと、逆に焦る」と言われたことがあります。言葉だけでなく、表情、立ち振る舞い…。互いがそろっていないと、次の技に影響します。
ペア特有の技は命に関わります。男性は「命を預かっている」という意識を強く持って、練習や競技会に臨んでいます。リフトは自分の身長に加え、手を伸ばした上に女性がいる。2メートル以上の場所に挙げている責任感を、強く持たないと成り立ちません。責任を背負った木原選手の気持ちも少し分かる気がしています。
危険が伴うため、ペアはシングル選手と一緒に練習ができません。リンクを貸し切ると費用もかかり、日本にコーチがいないとなると、海外への渡航費や生活費もかかります。何より人と人が力を合わせて取り組む種目。興味や意欲があっても、ペアが誕生すること自体が奇跡に近いと思います。そこからトップ選手になる過程で築いた信頼関係。今大会、三浦選手が木原選手を励ます顔つきも、世界で戦うアスリートだと感じました。「自分たちが世界一」「絶対にうまくいく」。心と心のつながりを感じた五輪金メダルでした。
◆市橋翔哉(いちはし・しょうや)1997年(平9)11月5日、広島市生まれ。小学校入学前に大阪市へ引っ越し、小2で競技を始める。高3で本格的にペア転向し、関大へ進学。三浦璃来と世界ジュニア選手権3度出場。18年4大陸選手権10位、19年世界国別対抗戦出場。21年から柚木心結とペアを組み、23年に現役引退。現在はコーチとして関西で活動。175センチ。
◆松本航(まつもと・わたる)1991年(平3)3月17日、兵庫・宝塚市生まれ。武庫荘総合高、大阪体育大でラグビー部。13年に日刊スポーツ大阪本社へ入社。2年間はプロ野球の阪神タイガース担当、以降は五輪競技やラグビーを主に取材。21年11月に東京本社へ異動。五輪取材は18年平昌、21年東京、22年北京、24年パリに続き、ミラノ・コルティナ大会で5大会目。ラグビーW杯は19年日本、23年フランス大会で日本代表の全9試合を現地取材。185センチ、100キロ。