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NBAが長年の課題である「タンク(=意図的な敗戦)」対策に、これまで以上に強いトーンを示している。
コミッショナーのアダム・シルバーは、オールスター・ウィークエンドの会見で今シーズンのタンク行為について「今年は近年で最悪の行動が見られているでしょうか? 私の見解はイエスです」と断言。ユタ・ジャズに50万ドル(約7500万円)、インディアナ・ペイサーズに10万ドル(約1500万円)の罰金を科したのは、その問題意識の表れである。
健康上に問題のない出場可能な主力の扱いは、競争の公正性とファン体験を著しく損ねる。シルバーは「勝利よりドラフト順位を優先する露骨な行為は、NBAの競争の基盤を歪ませます。試合の公正性を損なうさらなる行為があれば、それに応じて対応します」と強い口調で警告する。
メディアが注目したのは、シルバーが罰金や注意喚起以上に、リーグ単位で“次の一手”を公然と語ったことだ。シルバーは「現在、この行動を止めるための、ありとあらゆる救済策について話し合っています」と述べ、ドラフト指名権の剥奪を含む追加のペナルティー、さらにはドラフトやロッタリー制度そのものの見直しの可能性に言及。競争面を議論するリーグの委員会がロッタリー構造を再検討していることも明かしている。
ドラフトのロッタリー制度とは、プレーオフ進出を逃した球団を対象に、1巡目4位指名までの権利を抽選で決定する仕組みである。これらの上位指名を獲得する確率は、勝率が悪いほど高くなっており、球団はプレーオフが非現実となれば、より良い若手を指名する方向に舵を切ることができる。特にドラフトの豊作が謳われる年はその傾向が顕著なり、来年はダリン・ピーターソン、AJ・ディバンツァ、キャメロン・ブーザーなど、即戦力級のスター候補生が多数エントリーする見込みだ。
NBA理事会は、ロッタリー順位をシーズン終盤ではなく途中時点で固定したり、4位指名以上を連続で引けないようにするアイデアなども検討しているという。
また、『The Athletic』のデイビッド・オルドリッジ記者は、“負けた方が得”とされる現行のドラフト制度を廃止し、新人をFAとして市場に出す大胆な再設計案も提唱している。もし仮にドラフトが廃止されれば、戦力、育成環境、設備、経済力など、球団や都市の魅力が新人たちの判断材料となり、交渉でも激しいバトルが繰り広げられることになる。こうした場合、強豪や大都市に人材が偏り、リーグの戦力均衡が崩れる恐れがある。また、制度が変われば、球団の取る手段も変化し、学生時代から水面下でのタンパリングが横行するリスクも潜んでいる。
一方、ドラフト廃止の弊害は選手側にも発生する。現在はルーキースケール契約により、最低年俸の底上げ、4年のチーム契約、制限付きFAまでの導線が明確に設定されている。しかし、新人がFAとなった場合、交渉力の弱い選手は買い叩かれ、中位以降の新人の待遇は不安定化し、エージェントやマーケットの力に大きく左右される未来が予想される。
だが、オルドリッジ記者はNBAのサラリーキャップやエプロンにも言及。この制度がある限り、大都市の球団が金に物を言わせてスター軍団を組むのは事実上不可能であり、ルーキー指名、トレードにかかわらず、現在はオクラホマシティ・サンダーやインディアナ・ペイサーズなど、リーグのどこを見渡しても各球団にスター選手が在籍している。また、彼らの多くは理不尽なトレードを要求することはなく、スター選手が健康であれば一定数の競争力を維持している。さらに、大手NBAエージェンシーは、出場時間やショットの奪い合いになることから、トップ選手が同じ場所に集まることを望んでいないとも指摘する。
もっとも、ドラフト制度の抜本改革は利害が複雑で、即断は難しい。だからこそリーグは、選手出場方針(Player Participation Policy)の運用強化や罰金に加え、ドラフト関連の追加措置まで含めた“総合パッケージ”として検討を進める構えだ。だからこそ、シルバーは会見で今後のリーグ運営の最重要テーマとしてタンク対策を掲げ、各球団に本気で競争する姿勢を求めたに違いない。
文=Meiji