◆ミラノ・コルティナ五輪 ▽フィギュアスケート ペアフリープログラム(16日、ミラノ・アイススケートアリーナ) 「りくり…
◆ミラノ・コルティナ五輪 ▽フィギュアスケート ペアフリープログラム(16日、ミラノ・アイススケートアリーナ)
「りくりゅう」が日本フィギュア界に新たな金字塔を打ち立てた。三浦璃来(24)、木原龍一(33)組=木下グループ=が合計231・24点で金メダルを獲得した。フリーで世界歴代最高の158・13点をマークし、ショートプログラム(SP)5位から五輪ペア史上最大、6・90点差をひっくり返した。カップル競技では日本初の表彰台。五輪では女子で2006年トリノの荒川静香、男子で14年ソチ、18年平昌の羽生結弦に続く頂点に立った。このメダルで日本勢の今大会通算メダル獲得は18個となり、冬季五輪で過去最多だった22年北京大会に並んだ。
「りくりゅう」は優勝が決まっても、20秒間固まっていた。最終滑走のドイツペアを上回ったが、現実は上の空。右隣では、チーム関係者が跳びはねて喜んでいた。場内アナウンスでやっと金メダルを確信すると、木原がひざまずき、三浦を優しく包み込んだ。交わした王者の抱擁。日本初の五輪チャンピオンペアが誕生した。木原は「もう本当に、ありがとうございます」。声にならない声を、絞り出した。
33歳、木原の涙はかれなかった。15日のSPはリフトにミスが出て、まさかの5位発進。失意のあまり、フリー当日の公式練習直前まで自然と涙が出た。三浦は、結成7年のパートナーに伝えた。「今日は、龍一君のために滑るよ」。魔法の言葉のように、木原は前を向いた。「じゃあ、お互いのために滑ろう」。公式練習後、1時間弱の仮眠を取り心に闘志が戻った。フリーで五輪ペア史上最大6・90点差を逆転してV。金メダルを見つめると、木原はまた涙ぐんだ。「マジで泣いてばっかり」。9歳下の三浦は「(私が)お姉ちゃんになったよ、ね?」と優しい視線を向けた。
勝負のフリーは、イタリアの古代ローマが舞台の映画「グラディエーター」。テーマは「道は自分たちで切り開く」と、りくりゅうらしいプログラムだ。3回転トウループからの3連続ジャンプを決め、不安のあったリフトもミスなし。最終グループを残し、158・13点の世界歴代最高をたたき出した。22年北京五輪金の中国、同3位のロシアペアの点数を上回った。三浦は「団体戦を、3点(近く)上回るパフォーマンス。可能性って、無限大だな」と堂々たる滑りだった。
19年7月、経験者の相性を探るトライアウトを受けて結成した「りくりゅう」。4大会連続出場の木原だが、18年平昌まではフリーにすら進めなかった。日本初入賞の7位となった22年北京は、三浦に「フリーを滑らせてくれて、ありがとう」と語りかけた。4年がたち、初表彰台を飛び越えての初の金。33歳6か月、冬季五輪史上最年長となった金メダリストは「普段は、僕の方がしっかりしています」と前置きし「今回は、璃来ちゃんが心からサポートしてくれて。これが長年の絆かなと。感謝しかない」と、心からの言葉。三浦は「龍一君に出会えたのは奇跡。最高のパートナー」と寄り添った。
シングルでは世界と渡り合っていた日本フィギュア。ついにペアでも、頂点を極めた。かねてカップル競技の繁栄を願っていた2人。日の当たらない時代を知っている木原は、思いを込めた。「先輩方が支えてくださったチャンスを、今こうして僕たちがつかむことができた。競技の魅力を知ってもらい、ペアをやってみたいという子どもたちが増えたら僕たちが頑張ってきたことには意味があると思う」。切り開いた日本フィギュアの未来。歴史の開拓者として「りくりゅう」が名を刻んだ。(大谷 翔太)