東京ヴェルディ・アカデミーの実態~プロで戦える選手が育つわけ(連載◆第35回)Jリーグ発足以前から、プロで活躍する選手た…

東京ヴェルディ・アカデミーの実態
~プロで戦える選手が育つわけ(連載◆第35回)

Jリーグ発足以前から、プロで活躍する選手たちを次々に輩出してきた東京ヴェルディの育成組織。その育成の秘密に迫っていく連載の第3章。ここからは、同クラブのアカデミーで育ち、指導者としても後進の育成に尽力してきた菊原志郎氏と冨樫剛一氏が、同アカデミーの歴史、伝統、環境、哲学、本質......すべてを語り尽くしていく――。


鹿島アントラーズの三竿健斗ら、東京ヴェルディ・アカデミー出身者の多くが各Jクラブで活躍している

 photo by Miki Sano

 東京ヴェルディのアカデミーでしか身につけられないものとは何か。

 その答えとして、昨季ヴェルディのユースチームで監督を務めた小笠原資暁(現トップチームコーチ)は、「ひと言で言えば、『プレー』じゃないですか」と表現し、こんなことを話している。

「ユースの子のプレーを見てジュニアユースの子が、ジュニアユースの子のプレーを見てジュニアの子が、『すごいプレーだな。あれをやってみたいな』と思って真似をする。みんながここで一緒に練習をしているので、その繰り返しになるんです。

 コーチにしても、口でああだこうだ言うんじゃなくて、一緒にまざってプレーで見せる。そのコーチたちももともとヴェルディで育っているので、それが脈々と受け継がれているんだろうなって気がします」

 その言葉は、かつてヴェルディの前身である読売クラブの育成組織で育ち、16歳にしてトップチームデビューを果たした、菊原志郎(現FC今治U-12監督)の記憶とも合致する。

「コーチとかにも、コテンパンにやられていましたからね。コーチは相手が子どもでも本気で当たってあげて、『こうやって体を使うんだ!』っていうのを教えなきゃいけない。だから、手は抜かない。本気でやってあげる。いい手本を見せてあげる。

 年齢も性別も関係なく、熱いゲームを夢中でやって、プレーを磨いていく。僕は、すごくいい環境でサッカーをやらせてもらったなって思います」

 そんな環境下で重視されていたのが、判断である。菊原の言葉を借りれば、当時の読売では「判断が悪いと、『おまえ、サッカー知らないな』って言われるんです」。

「『サッカー知らない』って言われちゃうのは、子どもには結構強い言葉。サッカーを知らないままだと、だんだんボールが来なくなる。だから、必死に考えるようになるんです。ボールに触りたいし、関わりたいから」

 常に試合が動き続けるサッカーでは、瞬間的な判断が要求されるシーンは数多い。しかも、「レベルが上がれば上がるほど、相手選手は能力が高くなり、瞬間的にいろんなことを変えてくる」と、菊原は言う。

「ということは、こちらも相手を感じて、瞬時に対応していかなきゃいけない。監督の指示を待っていたら、やられ放題になっちゃいますから。ピッチのなかでいろんなものを感じて、瞬時に正しく判断する。しかも、それを仲間と一緒にできるかっていうのが、本当に高いレベルでは必要になってきます」

 だからこそ、読売では、選手は常に主体的であることが求められた。それはヴェルディへと名を変えても、ずっと継承され続けているものだ。

「自立する気持ちを持って、自分で考えて動けなければいけなかった。誰かに教えてもらう習い事では、相手が弱ければうまくいくけど、強い相手になっていろんな変化を加えられてしまうと対応できません」

 近年、ヴェルディのアカデミーで育った選手がJ2時代のトップチームに昇格したあと、次々と他クラブ、それもJ1クラブへ引き抜かれていったのには、おそらくそうした要素が影響していると、菊原は見ている。

「なにしろ、自分で見て考える。そのなかで、いかに仲間とうまくやるか。自分の力を出すか。安西幸輝が鹿島アントラーズで、渡辺皓太が横浜F・マリノスでプレーしたりと、たくさんのヴェルディ出身の選手たちがどこへ行っても比較的うまくプレーできるのは、たぶん育った環境が影響していると思います。

 畠中槙之輔(現セレッソ大阪)とか、DFの選手なんかは、子どもの時から散々(コーチや上のカテゴリーの選手に)やられてきて、普通なら『えっ?』って思うようなことでも、うまい選手がどうやって崩しにくるかっていうことをひととおり経験している。三竿健斗(現鹿島)なんかもそうですよね。そういう環境があるので、どんなチームに行っても、自分で考えて、予測が立つようになるんだと思います」

 それこそが、まさにヴェルディのアカデミーで身につきやすいこと、なのだろう。菊原が語る。

「ヴェルディという環境のなかで、たくさんのことを吸収し身につけていく。そのなかでも、より深く考えた子、より観察力の高い子、より感性の鋭い子が、どこでも、誰とでも、どんな戦術でも、うまくプレーできる選手に育っていくんじゃないかなと思います」

(文中敬称略/つづく)◆読売クラブに憧れた"サッカー小僧"の回顧 チーム入りを直談判