「日本人の今のやり方でやっていけば海外でも十分通用する」 来月にWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)を控える野球…

「日本人の今のやり方でやっていけば海外でも十分通用する」

 来月にWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)を控える野球日本代表「侍ジャパン」の宮崎合宿が14日から始まった。大谷翔平投手(ドジャース)らメジャーリーグ所属組はまだ合流していないが、アドバイザーとして参加しているダルビッシュ有投手(パドレス)が唯一無二の存在感を発揮。合宿入り早々から、“侍投手陣”の心をがっちりつかんでいる。

「周りの選手たちから『仏(ほとけ)だよ』と聞いていたのですが、本当に仏でした」。ダルビッシュとの初対面をこう表現したのは、隅田知一郎投手(西武)だ。「野球の知識量がすごいのはもちろん、初めてなのに僕の体の心配もしてくださいました」。予想以上の優しさにも触れ、感激の面持ちである。

 ダルビッシュは合宿初日からブルペン入りし、全ての投手と万遍なく、積極的にコミュニケーションを取っている。日本代表レベルの投手たちとあって、手取り足取りのアドバイスをするというよりは、弾道測定器「トラックマン」で測定した投球データが表示されるタブレットを一緒にのぞき込みながら、同じ目線で会話を交わしている雰囲気だ。

 ダルビッシュがメジャーへ移籍した2012年から、既に14年間の月日が流れた。合宿に参加しているNPB所属の投手陣の投球を見て、「自分が日本にいた時とはレベルが違う。もうこんなところまで来ているんだなと感じます」と述懐する。

 今の日本の選手たちは、トラックマンなどによって得たデータを活用し「数字をちゃんと見ながら、自分がどうやっていかなくてはならないかがわかっている。メジャーリーグとはタイプが違うけれど、日本人の今のやり方でやっていけば(海外でも)十分通用すると思います」と太鼓判を押す。

 それでも、現代の日本の投手たちがダルビッシュとの会話に胸を打たれ、アドバイスを求めるのはなぜだろう。1つは、日本球界でプレーしていた頃から、いち早くデータを重視し、独自のトレーニング法や体の使い方を科学的に研究していたのが、他ならぬダルビッシュだったからだろう。

日本最終年に残した奪三振数、投球回数を、その後誰も超えていない

 そして、日本球界にいた時に残した数字が凄い。北山亘基投手(日本ハム)は「シンプルに、ありえない成績を残されています。自分も去年1年間先発で回りましたが、見比べてみると、とんでもない違いがある。同じ先発でこんなに差ができるのかと思います。奪三振数が“おかしい”レベルですし、投球回数もおかしいです」と苦笑するしかない。

 ダルビッシュは日本球界最終年の2011年に、日本ハムで28試合18勝6敗、防御率1.44をマーク。276奪三振と投球回数232はいずれも両リーグを通じてトップで、翌年以降この数字を超えた選手は日本に存在しない。

 ちなみに、北山は昨季22試合に先発し9勝5敗、リーグ2位の防御率1.63という好成績を挙げたが、143奪三振、投球回数149で、さすがにダルビッシュの比ではなかった。これはもう憧れるしかない。

 それでいて、頭ごなしにアドバイスするのではなく、人当たりが実に柔らかいところも、今どきの若い選手に合っているように見える。北山は「僕が聞きに行くというより、近くに来てくださる感じです。僕の方からゴリゴリ行ける人ではないので、“気付いたら話が始まっている距離感”でいてくださるのが凄くありがたいです。本当は僕から行けたらいいのですが、さすがに緊張するので……」と証言する。

「何を考えて、どうやって、その結果どう感じているのか、会話がちゃんと解決し、あやふやな部分がないくらいまで話をしてくださるので、凄くすっきりします」と北山が語るように、かなり深いところまで突っ込んだディスカッションが成立しているようだ。

 逆に、ダルビッシュが若い“侍投手”から吸収するものもある。北山と高橋宏斗投手(中日)が、羽根付きのやりを投げる「ジャベリックスロー」を行っていると、興味深々に見守り、ダルビッシュの方から質問する一幕もあった。山本由伸投手がよく取り組んでいるトレーニングでもある。

「僕は単純に話をするのが好きですし、若い選手がどういう感じで野球をやっているのかを知りたいだけです」とダルビッシュはさりげない。本人によると、侍ジャパンのメンバーと帯同するのは「(今月の)20日か24日まで」。アドバイザーとしてこれ以上の存在は考えられないだけに、若い投手たちは吸収できるうちに最大限吸収しておかないと、もったいない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)