3月開幕の第6回WBCで連覇を目指す侍ジャパンが、14日からの宮崎合宿でいよいよ最終調整に入った。日の丸戦士の原点をひ…

 3月開幕の第6回WBCで連覇を目指す侍ジャパンが、14日からの宮崎合宿でいよいよ最終調整に入った。日の丸戦士の原点をひもとく企画「侍外伝」。日本ハム・伊藤大海投手(28)にスポットを当てる。大学1年で中退し、苫小牧駒大(現北洋大)に再入学した右腕。規定で1年間試合出場できない中、黙々と鍛錬を積んで才能を開花させた日々を、同大の大滝敏之監督(71)が回顧した。

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 明確に将来を見据える目と揺るぎない意志で、伊藤は自らを磨き上げた。大滝監督は言う。

 「1年の時は試合にも投げられないのに我慢して。ただ、自分の目的、目標をしっかり持ってやっていた。だからあの1年間が、人間的にも体力的にも後々の現在につながってると思いますよ。その挫折も含めてね」

 2016年に進学した駒大では、1年時からリーグ戦8試合に登板。だが、4年間プレーするビジョンが描けず、同年秋に退学した。翌春に故郷・北海道の苫小牧駒大に再入学。規定で試合出場できない1年生の期間に、しっかりと成長への土壌を耕した。

 大滝監督の印象に残るのは、ブルペン奥にある人工芝のサッカー場でいつも体幹トレーニングに励む姿だ。キャンプで知り合ったトレーナーに連絡を取って相談したり、本を読んで研究したりと自分で考えて鍛錬を積んだ。当初は「まだまだ細い感じ」だった体はたくましさを増していった。

 大学での練習が終わった後、母校・駒大苫小牧高に移動して練習することもしばしば。「ウチで体幹ばっかりやっていて、あいつランニングやんねえなと思って、高校の部長に電話したら『監督、今日はポール間をすごい走ってましたよ』って」。見える場所だけでなく、見えないところでも一切の妥協はなかった。

 出場解禁となった2年春のリーグ戦では6勝、防御率0・35という成績で優勝の立役者に。大学日本代表にも選出された。大滝監督は「相手チームも言っていましたが、球が本当にホップしているというか、指にかかった球。真っすぐとカーブ、スライダーで抑えてました」と振り返る。

 考え、学び、実践する姿勢。伊藤は自然と投手陣のリーダーとなった。「大海の方から『監督、今日はピッチャー陣、坂に行ってきますから』って来て。全部メニューを考えながらやってましたね。私1人でみんな見なきゃいけなかったので、大海がそっちをやってくれると大変助かったんです」。近くの坂道と階段でのトレーニングも先導するなど、コーチ的な役割まで担った教え子を、大滝監督は頼もしそうに懐かしんだ。「風通しはよく、人数も少ない。常に話をしながらやれたことも含めて、大海には合っていたんだと思います」と、小所帯が成長を促した側面に言及した。

 指導した監督として感じる伊藤のすごさ。大滝監督は「やはり一番は集中力と気迫」と即答した。4年時の秋季リーグ、東農大北海道との優勝決定戦。リリーフ待機となった伊藤は、2点リードの四回1死三塁から救援した。「ブルペンを見たら、大海と目が合って『行くぞ』って」。ピンチを切り抜けると、その後も無失点に抑えて優勝に導く力投。「あの時の気迫は素晴らしかった。アイコンタクトもそうだけど、4年の最後でしたから」。ピンチになればギアが上がる、一流投手には不可欠な要素がしっかりと備わっていた。

 ◆伊藤大海(いとう・ひろみ)1997年8月31日生まれ、28歳。北海道出身。176センチ、85キロ。右投げ左打ち。投手。駒大苫小牧から苫小牧駒大を経て、2020年度ドラフト1位で日本ハム入団。21年に新人特別賞。24年に最高勝率、24、25年最多勝。25年に最多奪三振とゴールデングラブ賞、沢村賞。