男子500メートル日本記録保持者の新濱立也(29=高崎健康福祉大職)が34秒46で6位だった。24年に結婚した、妻でカー…

男子500メートル日本記録保持者の新濱立也(29=高崎健康福祉大職)が34秒46で6位だった。24年に結婚した、妻でカーリング女子ロコ・ソラーレの吉田夕梨花(32)が観客席から見守る中、奇跡的な復活劇を果たした。昨年は交通事故で大けがを負うなど、山あり谷ありの4年間を経験。メダル候補で挑んだ22年北京五輪20位から躍進し、30年までの現役続行も明言した。

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赤く腫らした目で、駆け寄った。新濱はレース後、会場外で行われた夕梨花のインタビューに“乱入”した。身長が31センチ低い妻を力強く抱きしめて「出し切った。メダルは届かなかった」。6位の誇りと悔しさを、まっすぐに口に出した。

五輪に戻ってきた。スタート前、右拳で左胸を2度たたいた。低く構え、鋭く飛び出す。183センチの巨体を生かして力強く加速。暫定1位でゴールに飛び込んだ。6位となったが「スタートラインに無事に立てて、ケガなくゴールラインを切れた。タイム以上に価値のあるものだった」と満足感にあふれた涙を流した。

追われる立場から、追う立場になった。メダル候補として臨んだ22年北京五輪は20位。そこからの4年間は山あり谷あり。「谷の方が多かった」と明かす。24年3月に氷上で転倒し、腰椎骨折。昨年4月には「死亡事故レベル」の交通事故で顔面骨折。五輪まで1年を切る中、大けがに見舞われた。「4年間、精神的、肉体的に苦しかった。戻ってくることすら正直厳しいと思った」と告白した。

それでも“山”があったから頑張れた。24年に夕梨花と結婚。「はまちゃん」「ゆりちゃん」と呼び合う2人は、一緒に過ごす時間は限られる。海外遠征中は時差を考えつつ電話。不安な思いを明かし、支え合った。昨年9月、カーリング代表決定戦を北海道稚内で観戦。五輪出場を逃す瞬間を目にした。かけられた言葉は「ミラノは託したよ」。2人分の思いを背負った。18年平昌で銅、22年北京で銀の妻には「3大会連続メダルをかける」と宣言していた。約束は果たせなかったが、妻に「大満足。初めて五輪を見る側で、幸せな日だった」と喜ばせた。

2度目の五輪を完走し「2030年までは絶対やりきる。次がラスト五輪になる」と宣言した。夕梨花からは「全然やめてもいいくらいの成績はあるけど、突き進んでいってほしい。納得いくまで、最後の最後まで現役生活を楽しんでほしい」とエールを送られた。アスリートとして、夫婦として。2人の道は続いていく。【飯岡大暉】