2023年前回WBCで当時の栗山英樹監督が口にした「ダルビッシュ・ジャパン」 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC…

2023年前回WBCで当時の栗山英樹監督が口にした「ダルビッシュ・ジャパン」

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)連覇を狙う野球日本代表「侍ジャパン」の宮崎合宿が14日にスタート。アドバイザーとして参加しているパドレスのダルビッシュ有投手が、初日から唯一無二の存在感を見せつけている。代表選手たちはもちろん、首脳陣にとっても勉強になることが多そうだ。

「井端(弘和)監督から提案を受けて、自分にできる範囲ならできます、とお受けしました」。ダルビッシュはアドバイザー就任の経緯をそう語り、自身の役割については「(自分がアドバイスできるのは)ピッチクロック、ピッチコム、ボール(WBCで使用されるMLB球)の扱い、それに(MLBに所属する)打者の傾向といったところだと思います」と認識している。

 今回のWBCには、MLBで採用されているピッチクロック(投手はボールを受け取ってから、走者なしの場合は15秒以内、いる場合は18秒以内にお投球動作を開始しなければならない)、ピッチコム(バッテリー間のサインに代わり、電子端末を使って球種、コースなどを伝達)が導入される。日本のNPBには未導入のルールで、昨秋の侍ジャパンの合宿でも練習が行われたが、選手たちの戸惑いはまだまだ大きい。

 そこでダルビッシュである。今回選出された侍ジャパンのメンバーのうち、MLB所属組が不在の宮崎合宿で、実地に裏打ちされたアドバイスが聞けるのはNPB所属選手にとって貴重だ。

 しかもダルビッシュは過去、2009年と2023年に2度WBCに投手として参加し、いずれも優勝に貢献。大会の雰囲気を熟知している。特に2023年にはメジャーリーガーでただ1人、宮崎合宿から参加し、投手陣をリーダーとして牽引した。その存在感は、当時の栗山英樹監督が思わず「このチームはある意味“ダルビッシュ・ジャパン”」と表現したほどだった。

ファンの熱い要望を受けてサインに応じ「神ファンサ!」の声も

 昨年10月に右肘のトミー・ジョン手術を受けたため、プレーはできないが、今回も“ダルビッシュ・アドバイザー”が放つ輝きはまばゆいばかりだ。初日からブルペン入りした松本裕樹投手(ソフトバンク)、北山亘基投手(日本ハム)らと話し込んでいたが、「あれはアドバイスではありません。自分は話をするのが好きですし、若手の人たちがどんな感じで野球をやっているのかを知りたい。松本くんは変化球の握りを変えたとのことだったので、その握りを見せてもらったりしていました」と言う。同じ目線に立った、押しつけがましさのない言葉だからこそ、耳に入りやすく、若い選手のヒントになっていくのだろう。

 また、サブグラウンドで吉見一起、能見篤史両投手コーチと“3者会談”を行う一幕もあった。傍目にはダルビッシュが語り、両コーチが耳を傾けることが多いように見えた。

 一方、これは井端監督の狙いとは別だろうが、合宿初日からピカイチの人気を博したのが“ダルビッシュ・アドバイザー”だった。宿舎ホテルへ戻るバスに乗り込もうとした際、ファンと“関係者以外立ち入り禁止スペース”を隔てる柵の向こうから、大勢のファンから猛然と「ダルビッシュさん、サインお願いします!」といった声が上がった。自ら歩み寄り、ペンを走らせている最中には「神ファンサ!」などという声も上がっていた。

 そんなダルビッシュのために、侍ジャパンは首脳陣や選手と同じ仕様の背番号「11」のユニホームを製作。本人は「いやもう、本当にこれは、ここまでしていただけるのは光栄なことで感謝しています」と感激の面持ち。ただし合宿初日は、ユニホームのパンツと、左腕部分にナンバー「11」が描かれたパーカー姿。ユニホームの上着は着用しなかった。

「いただいてはいますが、着るつもりはないです。着る資格があるとは思っていなので」と、さらっと真意を明かす。あくまで日の丸を背負って実際に試合を戦う首脳陣・選手たちをリスペクトし、一線を引いた格好だ。

「今回はあくまでアドバイザーなので、コミュニケーションはなるべくグラウンド内にして、あまりでしゃばらないようにしようと思います」。こういった野球人としての立ち居振る舞い、在りようも、若い選手たちを刺激するのだろう。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)