転倒を繰り返し、力強さとは程遠い内容に終始したマリニン(C)Getty Images 世界が騒然となる転落だった。現地時…

転倒を繰り返し、力強さとは程遠い内容に終始したマリニン(C)Getty Images
世界が騒然となる転落だった。現地時間2月13日に行われたミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート男子フリーで、まさかの8位フィニッシュとなったイリア・マリニン(米国)。ショートプログラム(SP)で首位に立っていた絶対王者の乱調に会場では悲鳴も上がった。
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“らしさ”をことごとく欠いた。冒頭の4回転フリップを難なく決めた。まさに完璧な滑り出しだったが、続くジャンプがシングルアクセルになると、マリニンはここから音を立てて崩れた。
2度の転倒に加え、ジャンプも乱れるなど、精彩を欠いた。最後の最後まで狂ってしまった歯車を戻しきれなかった21歳は、悲壮感に満ちた表情でフィニッシュ。試合後には金メダルを手にしたミハイル・シャイドロフ(カザフスタン)を「人々は僕らを仲の悪いライバルだと決めつける。でも実際は逆」と称えたが、同時に「僕は失敗したんだ……」とも吐露。失望は隠しきれなかった。
完全無欠の絶対王者が喫した敗北を、往年の名手はどう見ていたのか。米版『Yahoo! Sports』で解説を務め、現地からあらゆる情報を発信している元世界王者のネイサン・チェン氏は「何かが起こった。正直に言って、それが何だったのかを正確に言葉では言い表せない。僕自身の2018年の経験を振り返ると、大きなプレッシャーと不安、そして多くの疑念を抱えながら挑んでいたのだろう」と分析する。
チェン氏は、平昌五輪で金メダル候補として期待されながらショートプログラムで17位と大失速。フリーでの挽回も虚しく5位に甘んじ、表彰台にすら上がれなかった経験があった。ゆえに想像を絶する“重圧”がマリニンを苦しめたと推測した。
そして、「どのエレメントでも、徐々に抑え気味になっていくのが目に見えて分かった。そして最後には、彼にとって最高の夜ではなくなっていた」と説いたチェン氏は、マリニンのパフォーマンスに呼応した会場の異様な雰囲気も影響を及ぼしたと論じている。
「あれだけ満員になった観客の前で演技する上で最も難しいことの一つは、彼らの反応を本能的に感じるということ。今日もイリアが初めて転倒した時、観客全員が『ああああ!』と叫び、本当に心が痛んだのを覚えている。僕の経験からしても、あれは胃がえぐられる気持ちになるんだ。それでも立ち上がって、精神的にリフレッシュしなければならない。即座に何が悪かったのかを考え、次の要素に向けてどのように立ち直ればいいのかを考えなければいけない」

今はプロスケーターとしても活動しているチェン氏(C)Getty Images
絶対勝利が求められるスタースケーターの苦悩
さらにチェン氏は、こうも続ける。
「でも、その時には会場全体のエネルギーが一変している。とてつもない緊張感が漂っているんだ。スケーターとして、その緊張感は肌で感じる。自分では落ち着こうと努力するけど、ミスを重ねるごとに、その重みはどんどんと増していく。本当に、あの状況がどれほど大変だったかは言葉では言い表せない」
絶対勝利が求められるスタースケーターとしての苦悩。その重みを熟知するチェン氏。マリニンの心情を慮ったレジェンドは、「イリアはまだ若く、間違いなくハングリー精神にあふれている。彼にはまだ大きな可能性がある」と断言。失敗からのリスタートに期待を寄せた。
「今夜は彼にとって、精神的にも肉体的にも、これまでの自分の状態を再評価し、次のオリンピックでどのように臨み、異なる結果を出せるかを見極める夜となる。ただ、彼が、この先も話題に上がる選手であることは間違いない」
失敗を糧にどう変貌を遂げるのか。五輪での敗北から這い上がるであろうマリニンの姿を興味深く見守りたい。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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