フリーでは巻き返しを見せた三浦佳生 photo by Sunao Noto / JMPA 2月13日(現地時間)、ミラノ…


フリーでは巻き返しを見せた三浦佳生

 photo by Sunao Noto / JMPA

 2月13日(現地時間)、ミラノ。ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート男子フリーで、三浦佳生は第1グループ3番目の滑走だった。本来、こんなに早く滑るような選手ではない。ショートプログラム(SP)はまさかの22位での発進だった。

 6分間練習で三浦は吹っ切れたような表情でリンクに立っていた。ジャンプの調子は取り戻したように見えた。サルコウ、ループ、トーループと問題なく跳び、4回転トーループ+3回転トーループもきれいに決めていた。

「今日は自信があったというか」

 三浦はそう振り返っている。

「昨日(12日)、日下(匡)先生に少しブレードをいじってもらったのが復調の要因だと思います。なんで体が思うように動かないなんだろうと考えた時、エッジがちょっと強いかなと思って、そこを落としたのが正解だったかなと。ループは今朝からうまくできていたし、不安はありませんでした」

【ジャンプを次々成功でガッツポーズ】

 SP後、色を失った様子だったが三浦は必死に巻き返しを誓っていた。不屈の精神だったが、彼はそうした反骨のメンタルのスイッチが入ったほうが強いところがある。

 冒頭、『シェルブールの雨傘』の雨音が滴り落ちる音が優しく響くなか、三浦は4回転ループをみごとに降りている。一斉に歓声が上がった。次の4回転サルコウ、ジャンプは悪くなかったが着氷がつぶれてしまい、歓声とため息が混ざる。しかし、そこからすべてのジャンプを降りた。

 まず、4回転トーループ+3回転トーループを成功。フライングキャメルスピンからステップシークエンスの流れも悪くなく、持ち前の疾走感も抜群だった。4回転トーループも着氷し、トリプルアクセル+オイラー+3回転フリップ、トリプルアクセルと次々に決めている。演技直後には両腕でガッツポーズを決め、表情は生気がみなぎっていた。

「昨日まで靴をテープで巻いていたのは、少しでもその状態を長くキープするため、これ以上は折れないようにするため。今日は(フリーの)4分間、自分を見せようと思って気合いを入れ直しました」

 三浦は言うが、前向きな姿勢が彼には似合う。

「今日は非常によく滑れたと思います。最後まで落ち着いて1点でも多くもぎ取るというスケートができました。オリンピックの経験としてもよかったですし、あとは4年後、しっかりメダルを取れる選手になれるように。それが今回、オリンピックという舞台を経験させてもらった自分の役割、やるべきことかなと思います。あとは(鍵山)優真と(佐藤)駿が結果を残せるのを信じて......」

 取材エリアに出てきた三浦は、同世代の盟友ともいうべき鍵山と佐藤にエールを送っていた。「ふたりともメダルを獲れる」と信じ、なんと優勝候補のイリア・マリニンがまさかの絶不調で、ふたりともメダルを獲得することになった。三浦にとってふたりは道しるべで、ライバルで、仲間だ。

【4年後は"ひとつの大会"として】

「優真や駿と一緒の表彰台に上がれるなんて、漫画みたいなことあるんですね」

 全日本選手権後、取材エリアでメダルを首にかけた三浦は感慨深げに語っていた。それは事実上、今回の五輪出場が決まった瞬間のことだ。

「ふたりとはジュニアからずっと一緒にスケートをやって仲良くなって、オフも過ごし、未来図も描いて......本当にドラマみたいです。表彰式も泣きそうになるくらいでした。ふたりがいなかったら、4回転も試みていないし、全日本で表彰台にも乗れていない。ふたりとの巡り会いは"持っていたな"って思いますね」

 どんなライバルに巡り会えるか。その点、三浦は競技者として恵まれていたのだろう。技を競い合い、理解を深め合うことで切磋琢磨し、彼は五輪という檜舞台に辿り着いた。ショートでは無念な形になったが、フリーでは挽回し170.11点で10位と健闘した。

「点数は、もうちょっと出てもよかったかなというのが正直な自分の意見です。大きなミスはなかったし、ベースも点を稼げているのに、なんで(優勝した)四大陸選手権を超えられなかったのか。とくにPCS(プログラム・コンポーネンツ・スコア)の78点は、自分がわりとひどい演技をした時の数字で」

 三浦は正直な気持ちを吐き出した。その負けん気も彼らしい。次の五輪へ向けての教訓についてはこう語った。

「4年に1回というのを意識しないということだと思います。ひとつの大会にするというのが大事。ショートは不安もあったなかでの滑りで、『4年に1回の舞台を背負って出ているのだから、結果を残さないと』というのが強くて。フリーはラフな状態で臨めたのがよかったと思います」

 三浦はそう振り返りながら、前を向いていた。246.88点の総合13位。それが彼のミラノでの成績だ。