『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載vol.2(22)KUROBEアクアフェアリーズ富山 山口真季 前編今年のオール…
『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載vol.2(22)
KUROBEアクアフェアリーズ富山 山口真季 前編
今年のオールスターゲームに出場した山口
photo by YUTAKA/アフロスポーツ
【自分を追い込まないことによる強さ】
KUROBEアクアフェアリーズ富山の山口真季(26歳)は、いつだって超然としている。ミドルブロッカー特有の硬骨さを漂わせながらも、強いこだわりや執着を見せない。
「『自分はこうだから、周りも合わせてほしい』よりも『周りがそうなら、自分がそれに合わせて動く』というタイプですね。こちらから何かを言って相手がパニックになるくらいなら、自分がプレーを合わせます。そのほうがラクだと考えているので」
山口は「ラク」という言葉を使ったが、それは「合理的」とも言い換えられる。彼女は目的に向かって、情動ではなく理性で動ける。それがプレー効率を向上させているのだ。
2025-26シーズン、山口はミドルブロッカーとして異彩を放っている。1セットあたりのブロック決定本数は0.88でランキング2位(2月12日時点)。上位を外国籍選手が占めるなか、堂々と渡り合っている。
クイックも鮮烈で、総得点は日本人ミドルで1、2を争う。ネット際に立ちはだかり、攻守の両輪を回す姿は頼もしい。そびえ立つ仁王のように怨敵も退散させる迫力がある。
しかし山口は、華々しい活躍も淡々と受け止める。数字に関しては、もはや"他人事"だ。
「そもそも、ランキングは意識したことがないです。ブロックの本数に関しては、"今日はブロックが決まる日"という試合でいっぱい稼いだんじゃないですかね(笑)。相手のチーム状況にもよりますが、流れがよくなると向こうが焦って、こちらのブロックにスパイクを当ててくれることがあるんです。あとは、サーブで崩してからいい形でシャットすることも多いですしね。」
そう言って笑う彼女は、自分に余計な重圧をかけない。
「自分を追い込むとか、そういうのから逃げてます。"いい感じ"で生きているんです(笑)」
山口はもう一度大きく笑った。まとわりつくエゴをはがすような能力は、トップアスリートの世界では異能と言っていいだろう。エゴを燃やして高みを目指すのもアスリートとしてあるべき形のひとつだが、自分以上のものになろうとして自滅するケースも少なくない。彼女はできることに専念する縛りによって、最大出力を発揮することを可能にしているのだ。
【父から「バレーを続けてほしい」】
その姿勢が、オールラウンドさにつながっているのかもしれない。
「たくさんポジションを変えてきたので、ミドルのこだわりなどもありません」
彼女はきっぱりと言うが、執着を捨てていることが、選手としての器を広げているのではないか。
「そうなんですかね(笑)。(コートでの自身の役目に関しては)できないものはできないですけど、必要とされているなら、『じゃあ、やってみます』という感じです。たまにライトをやるのも飽きなくていいです。ミスしても、『本職じゃないし』って気楽に開き直れるから楽しいですよ」
山口は捉えどころがない。飄々とし、バレーに対する"体温"は低そうにも映る。ただ、体内には熱いものが流れている。大和南高校時代には、今でも忘れられない経験をした。
「3年生の最後の春高バレーで、(下北沢)成徳戦に負けたあと、体育館の外で集合したんです。監督と選手、保護者も集まったんですが、そこで監督が泣いたんです。見た目は"いかつい"し、それまで泣くことなんかなかったのに、私たちの前で涙を流した。それから、3年生ひとりひとりと握手をしたんですよ。それで、私たちもみんな泣き出して......それは今でも覚えてますね」
山口はその情景を愛おしむように言った。言葉よりも、行動そのものに重きを置いているのかもしれない。
「プレーする姿を見ていたいから、バレーを続けてほしい」
高校卒業を前に、山口の父はそう言って競技続行を促したという。娘はそれに応え、大学、Vリーグ、SVリーグでもトップのミドルになっている。一方の父は、試合を会場で見る。黒部での試合も、神奈川から5時間以上も運転して観戦しにやってくるという。親子ふたりの"有言実行の絆"があるのだろう。
「父は深夜に家を出るらしいですが......特に話をすることはなくて、試合が終わったあとに『お疲れさま。明日も頑張れよ』と声をかけられて、こちらが『気をつけてね』って見送るくらいですね」
【日本代表で得たもの】
2025年、山口はフェルハト・アクバシュ監督体制でスタートした日本代表メンバーに初選出された。
「代表で考え方が変わりました。『うまい人って、こういう時にこう考えるんだ』という状況判断も学べましたし、今まで以上に一歩引いて、客観的に全体が見られるようになりました。とにかく全体のレベルが高かったですね。私が(必要なことを)言おうと思った時には誰かが口に出しているんです」
山口は感心するように言った。ただ、日本代表の話をしながらも、「オリンピックで活躍する」といったように話を飛躍させないところが彼女らしい。
「代表で刺激は受けましたけど、それで『自分の未来が見えた』という実感はありません。目の前のことをやる、というのが持ち味、長所でもあるので、継続していきたいですね」
現実主義者の夢の追い方だ。
(後編:【ハイキュー‼×SVリーグ】山口真季が選んだベストメンバーは、黒尾・月島の「師弟コンビ」など安定感抜群>>)
【プロフィール】
山口真季(やまぐち・まき)
所属:KUROBEアクアフェアリーズ富山
1999年3月13日生まれ、神奈川県出身。175cm・ミドルブロッカー。小学3年の時に友達に誘われてバレーを始める。中学時代にJOC神奈川代表チームに選ばれ、大和南高校3年時に春高バレーに出場。国士館大学でも活躍し、2021年にルートインホテルズ信州ブリリアントアリーズ(現・信州ブリリアントアリーズ)に入団。翌年にKUROBEアクアフェアリーズ(現・KUROBEアクアフェアリーズ富山)に移籍した。2025年に日本代表に選出された。