<ミラノ・コルティナオリンピック(五輪):フィギュアスケート>◇13日(日本時間14日)◇男子フリー◇ミラノ・アイススケ…
<ミラノ・コルティナオリンピック(五輪):フィギュアスケート>◇13日(日本時間14日)◇男子フリー◇ミラノ・アイススケートアリーナ
【ミラノ=木下淳】メダルの色が今夜、決まる。当地の13日午後7時(日本時間深夜3時)から4年に1度の男子フリーが始まり、前回22年の北京五輪銀メダルでショートプログラム(SP)2位の鍵山優真(22=オリエンタルバイオ/中京大)は日本の14日午前6時40分ごろ登場する。
投入を明言しているジャンプが「4回転フリップ」だ。大舞台で今季初挑戦。公式練習でも高い精度で着氷しており、本番でも成功が期待される。跳ぶ直前にクルッと後ろを向く動きが特徴。利き足が右の場合、左足内側のエッジ(刃の側面)に乗り、右つま先(トー)を突いて跳ぶ。
現行ルールで4回転フリップの基礎点は11・00点。SP首位のイリア・マリニン(21=米国)が世界で1人だけ跳べるクワッドアクセル(4回転半)の12・50点と、次に高い4回転ルッツの11・50点に次ぐ。
鍵山は、今季1度も跳んでいないジャンプを五輪で初投入することを決めた。基礎点の差を少しでも埋めないと、とてもマリニンに及ばないからだ。相手は「クワッド・ゴッド(4回転の神)」の異名を取り、全6種7本の4回転を今夜予定している。
ジャンプの基礎点を足していくと99・07点。一方の鍵山は4回転トーループ、世界一美しいと言われる4回転サルコーに4回転フリップを加えた3種4本の構成で勝負すると、基礎点の合計が76・77点となる。
この時点で22・30点も下回るが、関係者によると、今大会4演技目で疲労が蓄積しているマリニンが、安定感を高めるため構成を4回転4種5本に落とすとの情報もある。実際、その構成だった団体の男子フリーは4回転ルッツの乱れもあって200・03点。その再現があるわけではないが、SPから5・09点差を追う鍵山が、反対に構成を上げて自己ベストの208・94点(北京五輪の団体男子フリー)を更新できれば、勝負になる。
鍵山はマリニンの直前に滑走。ジャンプの出来栄え点(GOE)と、SPは2回とも満点だったステップなど技術点を自身の限界まで求め、相手を上回る表現力などの演技構成点を稼いで、プレッシャーをかけたいところだ。
ドラマもある。鍵山は出国前、日刊スポーツのインタビューに応じ「4年前の自分に勝つ準備はできている」と闘志を燃やしたと同時に、今回の4回転フリップ投入を初めて明らかにした。父正和コーチに、事前に伝えず「やる! と自分で決断した。五輪で、いま持てる技術の全てを出し切りたかった」。1月5日の早朝、カナダの振付師ローリー・ニコルさんとリモートで練習し、初演から100周年のフリー曲「トゥーランドット」のジャンプ2本目に4回転フリップを組み込むプログラムへ最終調律した。
演技全体の完成度を重んじて見送ってきたが「見たことのない景色を見に行きたい」と覚悟。正和氏も驚いた。初めて優真をリンクに連れて行き、氷をなめて遊んでいた5歳から、同じオリンピアンの自身に並ぶ2度目の五輪に出場した22歳まで、父は全てのジャンプ構成を授けてきた。その中で「初めてかもしれないね、意思表示は。本人が強い気持ちで決めたなら」と目を細めて歓迎。優真の成長を物語る挑戦にもなる。
4回転フリップは10年前に、宇野昌磨さんが世界で初めて成功させた。16年4月の北米・欧州・アジアによる3大陸対抗戦で決め、国際スケート連盟(ISU)に公認されている。今夜のフリーでは、SP9位の佐藤駿(エームサービス/明治大)も投入を模索している。
◆木下淳(きのした・じゅん)1980年(昭55)9月7日、長野県飯田市生まれ。飯田高-早大。4年時にアメフトの甲子園ボウル出場。04年入社。文化社会部時代の08年ベネチア映画祭でイタリア初出張。ミラノは2度目。東北総局、整理部、スポーツ部。23年からデスク。25年からDCI推進室と兼務。高校野球の甲子園取材は春2回夏3回。サッカーW杯は1回。五輪は夏3回冬2回。五輪パスはE、Es、ET、Ecの4種を保有している。