【ミラノ=日刊スポーツFigure365取材班、木下淳、松本航】2026年ミラノ・コルティナ五輪(オリンピック)のフィギ…

【ミラノ=日刊スポーツFigure365取材班、木下淳、松本航】2026年ミラノ・コルティナ五輪(オリンピック)のフィギュアスケート団体で2大会連続の銀メダルに輝いた日本が、思わぬアクシデントに見舞われました。2連覇の米国、初のメダル獲得に沸いた3位の開催国イタリアとともに並んだ表彰台。その表面が、ラバーなどスケート靴のブレード(刃)を保護する仕様になっておらず「刃こぼれ騒動」が起きたのです。

日本スケート連盟(JSF)は、専門の工房でリペアを段取り。研磨のスペシャリストでもある佐藤駿(エームサービス/明大)の日下匡力コーチ(46)が全選手の修復を請け負いました。

男子のエース鍵山優真(オリエンタルバイオ/中京大)も「すぐ対処していただいたので、全く大丈夫。全然、気になりませんでした」とショートプログラム(SP)後に、潔く影響はなかったと強調。一方で、ブレードの破損はどれだけ危険で、繊細なアスリートの感覚を狂わすのでしょうか。

会員制サービス「日刊スポーツ・プレミアム」で日本時間10日の午後9時から開催した「オンライン生配信トークイベント」に、アイスダンスの「りかしん」こと紀平梨花選手(23=トヨタ自動車)、西山真瑚選手(24=オリエンタルバイオ)組が出演。2人の拠点カナダとイタリア、日本をつないだ配信では、タイムリーにもブレードの話題が上がりました。

女子シングルの18年グランプリ(GP)ファイナルを16歳にして初制覇し、全日本選手権や4大陸選手権も2連覇。昨年9月にアイスダンスへの挑戦を電撃的に発表した紀平は、靴と刃へのこだわりがスケーターとしても有名です。

選手の中でトップクラスの見識を持っている紀平選手と、同じく男子シングル出身でアイスダンスとの靴の違いなど知り尽くす西山選手が、オンライン配信の中で語った内容を一部紹介します。

スケーターが、ファンから寄せられた質問に答える-。日刊スポーツ・プレミアムで昨年7月から開催している生配信イベントの最新回。その終盤に「アイスダンスで使用するブレードとシングルのブレードの違いを教えてください」と問いがありました。「ダンス用の靴に変えて3カ月ほど」だという紀平選手が難しさを打ち明けました。

「ミラノでも『刃こぼれ問題』が起き、話題になりました。影響は、やはり大きいものですか?」と質問された際の一問一答が、以下の通りです。

◇  ◇  ◇

-ブレードが傷つくと、選手目線では、どれほどの影響があるのでしょうか。西山さん、お願いします

西山(以下、敬称略)「ブレードの話に関しては、僕よりもプロフェッショナルが隣(紀平)にいるので。梨花さんはブレードに関しては、もううるさいぐらいで(笑い)」

紀平「そうですね(笑い)。普通は真っすぐ研いであって、触っても凹凸がないんです。それが、傷ついて『ガタッ』って指で触っても分かるくらいの傷ができてしまうと、少し横滑りしてしまうというか、抜けてしまう感覚になります。そういう凹凸は、かなり危険だと思いますね」

西山「グリップ力(刃が氷をつかむ力)がなくなったり。それが一番怖いと思います。特にシングルのジャンプを跳ぶために上がる瞬間は、ものすごく力を使いますから。そこでグッといって転んでしまうかもしれないし、せっかく着氷しても、スルッと滑ってしまうかもしれない。アイスダンスも同じで、ブレードをものすごく倒すので、グリップがある程度、必要になるところ、抜けてしまったりするんです。反対に、グリップがありすぎるのも問題で、ありすぎるとシングルだったらスピン、アイスダンスだったらツイズルの回転がしづらくなってしまう部分はあります。グリップが効きすぎて回転しにくくなる。だからこそ、団体の表彰式に出席した人…アイスダンスは、すぐ次の日が個人の競技でリズムダンス(RD)だったんですけど、研磨しないといけなかったと思うので、その状態で競技会に出たマディソン・チョックさん(米国のエバン・ベーツとの夫婦カップル。RD2位からフリーダンス=FD=も2位で銀メダル)だったり、イタリアのチームは本当にすごいなと思いました。それで、あれだけ完璧な演技ができるのは…本当に経験がモノをいう種目で、技術力もあるからこそだと思わされました」

-メンタル的にも「大丈夫かな…」と不安になる気がします

紀平「研磨も違う方に研いでもらうと、ものすごく違ってくるんです。研いでもらったはいいものの、私とか繊細だからかもしれないんですが、トリプルアクセルとか、もう左足の研磨具合だけで跳んでいくぐらいの時もあって。スキッド(横滑り)をかけて(エッジ系のジャンプを)シュンッといく。研磨具合がすごく大事になってきます。なので、アクセルを跳ぶ時は自分でヤスリを持ち歩いていたぐらい。研磨がとがりすぎていたら、練習中でもザラッとこすって、シュッシュッって感覚を研ぎ澄ませていました。ですから、アイスダンスの皆さんは前日に研いだとすると『いつもより、とがっている…』とか、そういう影響が出てしまう可能性が十分あったと思います。本当に、そのような状態の中でRDの試合、いつもと変わらないような滑りを見せていただけて『すごいな』っていう。もっていく力だったり、経験が生きていたりするのかな、と。『さすがだな』と思わされました」

華やかで芸術性の高いフィギュア。その足元を、本当に繊細な感覚が支えている。一流選手の感覚はやはり特別なものがあるようです。