スピードスケート男子500メートル日本記録保持者の新濱立也(29)=高崎健康福祉大職=が14日に出場する。2024年3…

 スピードスケート男子500メートル日本記録保持者の新濱立也(29)=高崎健康福祉大職=が14日に出場する。2024年3月に練習中の骨折、25年4月には交通事故による顔面骨折を乗り越え、2大会連続出場を果たした。苦しい時期を支えたのは妻で、カーリング女子の五輪メダリスト、ロコ・ソラーレの吉田夕梨花(32)。自身の出場がかなわなかったミラノ五輪で、夫に思いを託す。(取材・構成=富張 萌黄)

 吉田の目には涙が浮かんでいた。昨年12月、全日本選手権が行われた長野エムウェーブまで足を伸ばし、夫・新濱が五輪切符を手中に収めた瞬間を見届けた。「どういう気持ちでアイス(リンク)に乗ったかなとか、そんなことを考えていたらあっという間に(レースが)終わっていた。かっこよかったです」。500メートルを34秒40で滑り抜け2位。ここまでの道のりを思い返すには、足りないタイムだった。

 24年3月、新濱はドイツで練習中に転倒し腰椎を骨折。さらに昨年4月には沖縄・石垣島合宿で、自転車でトレーニング中に交通事故に遭った。左上顎骨壁(ひだりじょうがくこつへき)骨折、左膝部挫創などの大けが。選手としてだけではなく、人として生命の危機に直面した。吉田が「生きていてくれてよかった」と漏らすほどの大事故だった。

 五輪まで1年を切ったタイミング。夫はすぐにリハビリ、トレーニングを再開した。「私は応援するしかない」。そっとそばで祈り続けた。同じアスリートとして「自分の目標をクリアしていく姿を見られた。すごい精神力だな」と驚かされた。妻としては「心配せずに行っておいで」と夫を信じて、代表選考会に送り出した。

 2年前に結婚し、夫婦として臨む初五輪は、現地で見守る予定だ。考えを巡らせてから「(この先)オリンピック(のこと)を忘れないように、瞬間を覚えていてほしい。あと、本当にけがをしないで。無事で帰ってきて。それだけでいいや」と言った。2人の思いを乗せた35秒弱の戦い。新濱家にとって、奇跡の五輪が始まる。

 ◆新濱 立也(しんはま・たつや)1996年7月11日、北海道・別海町生まれ。29歳。釧路商―高崎健康福祉大出身。高崎健康福祉大職。小学1年で本格的にスピードスケートを始め、2019年3月のW杯最終戦の男子500メートルで33秒79の日本新記録をマーク。世界スプリント選手権は20年に日本勢33年ぶりの総合優勝。183センチ、91キロ。

 ◆吉田 夕梨花(よしだ・ゆりか)1993年7月7日、北海道北見市出身。32歳。5歳から競技を始める。4人制のロコ・ソラーレに創設時の2010年から所属し、リードを務める。16年世界選手権銀メダル。五輪は18年平昌大会で日本史上初メダルとなる銅、22年北京大会で銀メダル。