【島田明宏(作家)=コラム『熱視点』】 先週ここに栃木の鍋掛牧場の基礎牝馬となった第二オーイエーの末裔について書いた。…
【島田明宏(作家)=コラム『熱視点』】
先週ここに栃木の鍋掛牧場の基礎牝馬となった第二オーイエーの末裔について書いた。
では、これまで私が取材した、ほかの往年の名牝の末裔はどうか。
まずは、明治時代にオーストラリアから輸入された「日本初の名牝」ミラについて。ミラは横浜の根岸競馬場で素晴らしい競走成績をおさめたのち、新冠御料牧場で繁殖牝馬となった。3代仔に初代ダービー馬ワカタカ、5代仔に皐月賞と日本ダービーを凄まじい追い込みで制したヒカルイマイなどがいる。
私は、ちょうど10年前、グリーンチャンネル特番の取材で、佐賀競馬場で走っていた牝馬タイムオブレディーと、新ひだか町の坂本智広牧場にいた牝馬トウケイミラに会いに行った。タイムオブレディーはミラの10代仔で、トウケイミラは11代仔である。
そのトウケイミラの半姉トウケイダヴィンチが日高町の細川牧場で産んだボンレジェンド(牡3歳、父タイセイレジェンド)が、先月、佐賀競馬場で2回走り、10着、6着となっている。
そして、戦時中の1943年、20歳の前田長吉を背に、日本ダービー、オークス、菊花賞の「変則三冠」をすべて圧勝で制した女傑クリフジ。11戦11勝で引退し、故郷の下総御料牧場で繁殖牝馬となって桜花賞馬ヤマイチなどを送り出した。
その血も繋がれている。7代仔のオオエライジンが史上初の無敗の兵庫ダービー馬となるなど活躍し、その半妹エンジェルツイートはNAR賞2歳最優秀牝馬に輝いた。
私は、2012年の夏、兵庫の橋本忠男厩舎でオオエライジンに会い、さらに、生産者の浦河・伏木田牧場を訪ねた。オオエライジンの母フシミアイドルが、ファインモーションと同じ放牧地でのんびりと草を食べていた。
エンジェルツイートの娘エンジェルパイロが繁殖牝馬となり、昨年、父ピクシーナイトの牝馬を産んだ。同牧場代表の伏木田修さんによると、残念ながら、エンジェルパイロは出産後死亡してしまったが、その仔が牝馬なので、血をつなげていくつもりとのこと。
1歳になったその牝駒は、「ウォーター」の冠で知られる山岡正人オーナーの所有馬として栗東・秋山真一郎厩舎に入厩予定だという。
また1頭、追いかける馬ができて、とても嬉しい。
そしてさらにもう1頭、新冠のレジェンドファームで生産された、クリフジの7代仔イクノオリンピア(牡5歳、父トゥザワールド)が先週川崎で6着になっている。
このように、生産者やオーナーの強い思いによって、「血脈そのものが競馬史の印象的なワンシーン」と言うべき、貴重な牝系がつながれていくのだ。
鍋掛牧場を創設した沖崎エイの孫で、現代表の沖崎誠一郎さんに、今も第二オーイエーの血がつながれていて、末裔のエスプリワールドが先月大井で走っていたと伝えたら、喜んでいた。鍋掛牧場では2004年に競走馬の生産を中止している。第二オーイエーと、その娘で、鍋掛牝系の「中興の祖」と言うべきキヨハの血がすべて牧場の外に出てから20年以上経っても、その血を有する馬が走っているというのも、考えてみたらすごいことだ。
さて、ミラノ・コルティナ冬季五輪たけなわ、である。
時差の関係で、決勝が深夜や早朝となって見られない競技も多いが、スノーボードのビッグエアで日本が男女ともに金メダルを獲って「お家芸」と言えるほどになっているなど、日本人らしさ、日本人の強みが、わかりやすい形で感じられて面白い。
今週末はサウジC、来週末にはフェブラリーSが行われる。
それが終わると、スポーツメディアはワールドベースボールクラシック(WBC)のニュース一色になるだろう。
前回、2023年のWBCのときは、日本対アメリカの決勝戦をテレビで見てから、ドバイワールドカップ取材へと向かう飛行機に乗り込んだ。今年はWBCの決勝がドバイより1週間早いのでタイミングはズレてくるが、競馬好き、スポーツ好きにはたまらない日々が、これからもしばらくつづく。
区の胃がん検診で胃カメラによる検査を受けてきた。私はあれが苦手で、今回も、ゲーゲー言って泣きながらよだれを垂らし、看護師に背中をさすられ「力を抜いて」「ゆっくり息をして」と励まされ、終わったときにはクタクタになっていた。胃カメラを操作する医師が「もう後半です」と言いながらさらにカメラを奥に入れたときの絶望感は、しばらく忘れないと思う。
前にも触れた、写真家の内藤律子さんの写真展「サラブレッドに導かれて」が、2月11日から丸善日本橋店3階ギャラリーBで催されている。最終日の17日は午後3時までだが、それ以外の日は午前10時から午後7時まで、内藤さんが在廊予定とのこと。興味のある方は足を運んでみてはどうか。