(11日、ミラノ・コルティナ冬季オリンピック フィギュアスケートアイスダンス) フランス国旗を見つめるギヨーム・シゼロン…
(11日、ミラノ・コルティナ冬季オリンピック フィギュアスケートアイスダンス)
フランス国旗を見つめるギヨーム・シゼロンの目から涙がこぼれた。ロランス・フルニエ・ボードリーとカップル結成1年目で金メダル。個人としては北京五輪に続く連覇となった。
座席を震わせるような重低音の中、滑り出した。シゼロンが「この振り付けは私たちにとって『我が子』のような存在なんです」。独創的な動きが続く。
90度以上、深くひざを曲げ、パートナーを左腕で抱きかかえる。そのまま、S字を描くように後方に滑る。相当な力が求められるはずだが、表情には出さない。深く傾けられたエッジは氷に吸いつくようだ。
観客は、ただ静かに演技に見入った。
■一度は引退
31歳のシゼロンは、北京五輪シーズン後に一度は引退した。その間、日本男子五輪代表の佐藤駿らの振り付けを手がけてきた。
「世界一のスケーティング。見ていて言葉にならない」と佐藤は敬う。
振り付けの際には、カナダに渡って練習もつけてもらう。全身をしなやかに使うように求められる。「首も、ふくらはぎも太もももすごい筋肉痛になる。いかにふだん意識していなかったかわかる」と言う。
日本女子五輪代表の千葉百音も教わったことがある。「肩がすごくやわらかい。かなり筋力もあるけれど、動きは力感を感じさせずしなやか」と舌を巻く。
アイスダンスには、世界選手権3連覇中の米国をはじめ、カップル結成から年月をかけて成熟した強豪がひしめく。まとめて破って、結成1年目での金メダル。「信じられない」。当代随一のスケーターが、離れ業をやってのけた。(内田快)