<ミラノ・コルティナオリンピック(五輪):フィギュアスケート>◇10日(日本時間11日)◇男子ショートプログラム(SP)…
<ミラノ・コルティナオリンピック(五輪):フィギュアスケート>◇10日(日本時間11日)◇男子ショートプログラム(SP)◇ミラノ・アイススケートアリーナ
【ミラノ=木下淳】22年北京オリンピック(五輪)銀メダリスト、日本のエース鍵山優真(22=オリエンタルバイオ/中京大)はSP2位で出た。最終滑走で登場し、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)が乱れながらも大台の103・07点。団体のSPで完璧だった男にミスが出たが、第一声で「楽しかった」と笑みを振りまいた。
108・16点で首位のイリア・マリニン(21=米国)を5・09点差で追って13日(日本時間14日)のフリーへ。7日(日本時間8日)の団体SPは、自己ベストまで0・10点差と肉薄する108・67点をマークした。世界王者マリニンに10・67点もの差をつけたが、今回はビハインドだ。
なぜ、鍵山の3回転半は乱れたのか。より基礎点の高い、冒頭の4回転-3回転の2連続トーループも、続く4回転サルコーも美しく成功。最後に前向きで踏み切ったジャンプだけが乱れた。ステップシークエンスに至っては、この日も出来栄え点(GOE)満点を稼いだ、絶好調の中で。
本人は「ちょっと、回転を押さえ切れませんでした…はは。回り過ぎてしまいました」と笑顔で明かす。
午後5時30分(日本時間深夜1時30分)の公式練習から、同10時37分(同午前6時37分)の出番まで約5時間。「(選手村に)帰る時間がなく、ずっと会場にいて休憩していたんですけど、短い時間だったこともあって公式練習のまま体がキレキレで。めちゃくちゃ動いていた分、自分が思ったよりも浮き上がっちゃったのかな」と振り返った。
高く跳べて、速く回れて…好調だった分、勢いがついて制御が難しくなり、着氷が乱れるステップアウトとなった。
他の影響は、全て否定した。
(1)重圧 自身の1つ前で、マリニンが完璧に演じ切った。4回転ルッツ-3回転トーループなどの高難度構成で、ノーミス。場内が沸騰する歓声に包まれた。得点が出る瞬間、氷上に出ていたが、鍵山は気にしなかったという。
「正直、対イリア選手の場合、ショートの点数は、どれだけ近くても遠くても全く参考にならないので、まずは自分のできることを最大限やるだけでした」
フリーの自己最高点は、自身が208・94点でマリニンが238・24点。まさに、人事を尽くして天命を待つしかない状況だけに、必要以上に意識はしなかった。
(2)疲労 団体SPから中2日で迎えたが「もう全く疲れはないです」と断言した。団体のエントリーが発表される前から、当然本人には起用順が伝えられており、備えられた。
「どうリカバリーして、こうギアを上げていく、という計画をしっかり立てていたので、全部が全部、順調にいったわけではないですけれども、自分の中でルーティンを大事にしながら過ごせていたので、今日も100%全力で滑り切れました」
何より、マリニンは2日前に団体フリーも滑っている。言い訳する気などなかった。
(3)影響 団体の表彰式で刃こぼれ騒動があり、鍵山も多分に漏れず、愛用スケート靴のブレードが傷ついた。即答で首を振る。
「全く大丈夫でした。(日本連盟や、研磨のスペシャリストで佐藤駿を指導する日下匡力コーチが)すぐ対応してくださったので。本当に全然、気になりませんでした」
そう潔く強調し「(3回転)アクセル自体、落ち込むようなものではなかったので、すぐに立て直せました」と、その後のステップで全29選手の中で2人しかいない最高評価のレベル4を、さらには唯一のGOE満点をたたき出した。
運命のフリーは2日後。相手は世界で唯一、クワッドアクセル(4回転半)を含む全6種の4回転ジャンプを跳ぶ、直近2シーズン無敗の絶対王者だ。しかも5点以上を追って-。限りない逆境だが、前回大会の銀を上回る色は諦めない。
「金メダルは、オプションというか。後から付いてくるものだと思うので。フリーでは4回転フリップも久しぶりに投入しますし、しっかり調整しながら、とにかく悔いのない演技をすることが一番の目標です」
無心の先に、最高の輝きを信じて。「谷の方が多かった」という4年間の道のりを、自分で納得できる4分間で締めくくるだけだ。