ミラノ・コルティナ五輪フィギュアスケート団体で銀メダルを獲得した日本 photo by Sunao Noto / JMP…
ミラノ・コルティナ五輪フィギュアスケート団体で銀メダルを獲得した日本
photo by Sunao Noto / JMPA
フィギュアスケート団体は、五輪新種目として導入された2014年ソチ五輪や次の2018年平昌五輪ではアメリカやロシア、カナダが強力で日本のメダル獲得は想定できなかった。
しかし、男女シングルの力だけではなく、ペアの三浦璃来・木原龍一が世界と戦える位置まで来た前回の2022年北京五輪は、アイスダンスを除く3カテゴリーでカナダを抑えて3位に入り、のちにロシア・オリンピック委員会がドーピング問題で失格となって銀メダルを獲得した。
そして、北京五輪後に三浦や木原、坂本花織に鍵山優真らで話した「団体でもう一回メダルを獲りたい」という目標。各選手のレベルアップに加え、ロシア不在という状況のなかで、金メダルを意識するまでになっていた。
【日本vsアメリカのガチンコ】
2月6〜8日(現地時間)、ミラノ・コルティナ五輪の戦い。アメリカは世界王者イリア・マリニンがいる男子シングルと、世界選手権3連覇中のマディソン・チョック/エヴァン・ベイツのアイスダンスで優位に立ち、日本は三浦と木原のペアが優位で、女子シングルはアメリカとほぼ互角という状況だった。
そんななかで日本が金に迫るための絶対条件は、三浦と木原がショートプログラム(SP)とフリーで確実に1位になり、SP・フリーともに起用する坂本がアメリカ勢に競り勝つことだった。そして、団体のみの出場のアイスダンス吉田唄菜・森田真沙也が、リズムダンスで1点でも多い得点を獲得できるか。僅差でアメリカにつけ、隙を伺って勝機を見つけるのが日本チームの戦略だった。
初日の日本は、最初のアイスダンスのリズムダンスが北京五輪より順位をひとつ落とす8位で3点獲得のみと小さな誤算はあったが、ペアSPは強さを発揮して1位に。女子SPも坂本が世界女王アリサ・リュウを抑えて1位と、想定内の発進をした。
2日目の男子SPでは、マリニンが小さなミスを連発。一方、完璧な滑りをした鍵山が108.67点で勝利。SPは3カテゴリーで日本が1位になり、合計ポイントはアメリカに1点差の2位と上出来の滑り出しだった。
全力で金メダルを狙いに行く日本に対し、アメリカも決勝では本気の対応を見せた。2カテゴリーはSPとフリーで選手を変更できるルールのなか、女子はリュウと同レベルの力を持つアンバー・グレンにしてきたが、個人戦の日程が近いアイスダンスと男子シングルで他の選手がいるにもかかわらず、選手を変更せず。勝負を仕掛けてきたのだ。
そのアイスダンスのフリーダンスは想定内のアメリカ1位、日本5位で5点差とされたが、これは想定内。だが再び1点差まで詰め寄ることを期待された最終日のペアのフリーでは、アメリカのエリー・カムとダニー・オシェイがノーミスの滑りで自己最高得点を出し、SPでは敗れていたカナダに勝って4位に。三浦・木原が1位だったが、2点差が残った。これは日本にとってひとつの誤算だった。
しかし次の女子フリーではアメリカにミスが出た。坂本がきっちり1位になって10点を獲得したのに対し、グレンが序盤の3本のジャンプで小さなミスを繰り返し、シーズンベストを出してきたアナスタシア・グバノワ(ジョージア)に次ぐ3位になって8点。その時点でポイントは並び、各カテゴリーの勝利数で日本がアメリカを上回り暫定1位に立った。そして、勝負は最終種目の男子フリーまで持ち込まれた。
【見ごたえたっぷりの最終決戦】
竹内洋輔監督は男子フリーでの佐藤の起用について「彼の場合は今季のフリーでは自己最高得点を2回更新し、GPシリーズ2戦と全日本選手権で鍵山選手を上回っている。その内容や今季の成長度合いを総合的に判断し、すべての選手に相談をしたうえで決定しました」と説明した。
佐藤は、同点でのマリニンとの戦いを前に、ジャンプの構成を上げて勝負することも意識したという。だが、竹内監督は「究極の状態になってきた時こそ、ふだんと同じようにやるべき。もう体に染みついた感覚を信じてやりきること。それをできるように我々はいつもどおり送り出しましょう」と提案した。
その勝負はマリニンが4回転アクセルと4回転ループを回避しながら、後半の4回転ルッツでミスをして200.03点にとどまったことで混沌とした。そして最終滑走の佐藤は逆転の可能性も残る極度のプレッシャーのなか、精神面での成長をきっちり見せ、4回転3本を含む7本のジャンプをすべてノーミスで降りる冷静な滑りをした。
ただ、終盤のステップとスピンがレベル2と取りこぼすミスが出て、マリニンを追い込みきれず5.17点差の2位にとどまった。それでも、竹内監督は「佐藤の演技に対して全員が『誇らしく思う』と評価していた」と言う。
本気で勝負をしてきたアメリカを最後の最後まで追い詰めたメダルは、まさに金に限りなく近い銀だった。
カテゴリーを完勝した三浦と木原、世界トップのアメリカ勢2選手に勝利した坂本、マリニンに対してSPで勝利した鍵山、マリニンに真っ向勝負で挑んだ佐藤......。この団体戦の経験と結果は個人戦へ向けて大きな自信になったはずだ。大接戦で手にした銀メダルは、強烈な追い風になるだろう。