<寺尾で候>日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。   ◇   ◇   …

<寺尾で候>

日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

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衆院選投開票から一夜明け、今後は政局が激しく動くことが予想される。かつては祖父が地元の福井県で選挙管理委員長の役職にあったので、政(まつりごと)の“数は力”に触れて育った。

新人3人を含むプロ野球監督で人気投票が行われた場合、トップ当選が確実視されるのは、やはりこの人だろう。日本ハムをリーダーとして引っ張る新庄剛志と膝詰めになった。

今年のビッグボスは顔つきが違う。あまたの監督を取材してきたが、オーラというだけで片付けられない雰囲気は、歴史に刻まれた名将からは少なからず伝わってきた。

グラウンドを見渡したとき、監督がどこにいるのかわからないチームもあるにはあった。その存在感は監督の器と比例する。これまで派手さがゆえに目立ったビッボスだったが、今では監督力で引きつける。

世界が認める人間国宝の女形歌舞伎役者からは「居方(いかた)」という独特の一語で教わった。立ち居振る舞いの意味で、いわゆる“たたずまい”が大事と。そんな気高さを感じさせる人になったということだろうか。

「メジャーリーグに挑戦したときも『お前が活躍するわけねぇだろ』と、監督になったら『なんちゅう采配しとんねん』と言われ続けた。負けて責任をとるなんて簡単です。でもダメな時期から、ここまでこれた。ぼくを監督にしてくれた責任は果たしたいと思ってるんです」

ビッグボスの意外な感性がにじんだのは、25年シーズンでチームは2位に終わったが、セ・パ両リーグで最多だったチーム完投数(23)に話が及んだときだった。今年もこの点にこだわるのだという。

もっとも活躍した先発完投型投手を選考する昨年の「沢村賞」は、27試合、196回2/3を投げ、14勝(8敗)、防御率2・52、6完投の日本ハム・伊藤大海(ひろみ)が受賞した。

実は、その選考委員会で、日本ハムの断トツだったチーム完投数が話題になった。100球をメドに継投が当たり前の分業制が確立された時代に、沢村賞に該当する投手の台頭はなかなか望めなくなったからだ。

阪急ブレーブス(現オリックス)で通算284勝を挙げ、選考委員の山田久志(元中日監督)は、最近の監督にない先発完投にこだわった新庄の采配を「野球界に一石を投じた」と評した。

「沢村賞は選考基準を見直すことになったが、完投をヨシとする新庄監督の姿勢には、選考委員というより、投手として拍手を送りたい。今のままでは絶対にこれから日本を代表するような先発投手は育ってこない。新庄監督はピッチャーを完投に導く指導をしながら、人を育てているように映った」

その新庄は、ドジャース山本由伸が、昨年のポストシーズンで2試合連続の完投勝利を収めたことを引き合いに出す。01年カート・シリング投手以来の快挙。どうして新庄は完投主義なのだろうか。

「最初マウンドに上がったピッチャーが最後まで投げるって、かっこいいじゃないですか。ヨシノブがやったことで、メジャーが変わってくれませんかね。日本と違って中4日のメジャーはリリーフが大変。完投する投手が出てくればリリーフは元気に投げられます。100球で交代って、暗黙の了解みたいで、野球がおかしくなっている。100球縛りっていうのを変えたらいい。投手コーチは反対するでしょうけどね」

すでに今年の完投数についても“シンジョー流”のビジョンを描く。

「30はいってほしい。でもぼくは区切りってのが好きじゃないので、31は投げてほしいです。オレも、オレもといって、完投を目指すチームにならないといけない。ただ9回になったら、こっちは祈るのみですよ。頼むぞ、頼むぞとね。2位から上にいくか、いかないかって、そんなとこから、最後に上り詰めるほうが面白いでしょ」

そこはトップの公約通りにいくとは限らない。前評判が良すぎるのも気になる。チームの引き締めは手綱さばきというマネジメントにかかってくる。その先に改革が実現するのかもしれない。ビッグボス党が“買い”であるのはひしひしと伝わってきた。

(敬称略)