フィギュアスケート団体でSP、フリーともにトップの得点を出した三浦璃来・木原龍一ペア photo by Sunao No…

フィギュアスケート団体でSP、フリーともにトップの得点を出した三浦璃来・木原龍一ペア
photo by Sunao Noto / JMPA
【日本チームを支える得点源】
2月8日、ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート団体が最終日を迎えていた。ペアの「りくりゅう」(三浦璃来・木原龍一)のフリーダンスが先陣だった。ショートプログラム(SP)でりくりゅうは『Paint It Black』を滑り、82.84点でトップの得点を勝ち取っていた。
リンクサイドの応援ブースには、この日は出場がないアイスダンスの「うたまさ」(吉田唄菜・森田真沙也)や鍵山優真、コーチたちが陣取った。1日目、2日目とみんなでバトンをつないできた。首位のアメリカと5ポイント差の2位、逆転を狙える状況だった。
「ショートは今まで積んできた練習が嘘じゃなかったという自然な演技ができました。全体的に一つひとつ集中して、ベストを尽くせたかなって」
三浦は明るい声で言っていた。
「自分は(五輪出場)4回目なので、普通の試合の雰囲気と変わらずにできました。たくさんの応援をしてもらって、周りを見渡せながらできてよかったです」
木原龍一も充実した表情で語っていた。
ふたりの存在によって日本が団体でメダルを狙える布陣になったと言っても過言ではない。
2014年ソチ五輪からスタートした団体。ソチでは、日本はシングル男女がポイントを重ねたが、カップル競技のアイスダンス、ペアは得点が伸びず5位に終わった。2018年平昌五輪も同じく5位。それが、りくりゅうが参戦した2022年北京五輪は2位(※ROCのドーピング問題で繰り上がり)に躍進した。ペアで世界王者にもなった彼らが、一転して得点源になったのである。
「ソチ、平昌とチームに貢献できず、助けてもらうことが多かったんですが、北京で力になれたのがうれしくて。日本が団体戦にこのように『いい色のメダル』を狙って挑めるとはなかなか想像できなかったですが......」
木原はそう言って、時代の変化を生きてたどり着いた境地を語っている。
【今までの練習を信じて......】
りくりゅうは、ミラノでの団体フリーをどう戦ったのか?
団体の最終日、ペアは1番手で滑ったアメリカのペア、エリー・カムとダニー・オシェイが会場に火をつけた。乾坤一擲の演技で心を動かす。会場全体が熱を帯びた。結局、彼らが4位に食い込んだことが団体の順位も大きく決定づけたのだが、次のカナダ、イタリア、ジョージアとボルテージは上がり続け、選手たちが解き放たれたような演技を続けていた。
りくりゅうは興奮のるつぼのなかリンクに立った。スタンドで日の丸が揺れるなか、『グラディエーター』の音が螺旋(らせん)を巻く。そのうねりで、力を引き出されたのか。
冒頭のトリプルツイストを成功。3回転トーループ+ダブルアクセル+ダブルアクセルはトーループで回転不足がついたが、そのあとは完璧に近かった。5アクセルラッソーリフト、スロートリプルルッツでは高いGOE(出来ばえ点)を獲得。コンビネーションスピンは溶け合うようで、トリプルサルコウ、5リバースラッソーリフト、スロートリプルループと丁寧にエレメンツを仕上げ、最後のコレオシークエンスは万感に迫るものがあった。
演技後、木原に持ち上げられた三浦が空中で左腕を突き上げた。三浦は氷上に降りてからも、ぴょんぴょんと小さく何度もジャンプ。木原はその姿を愛おしそうに見つめる。彼は国旗が振られるスタンドに向け、誇らしげに手を振った。三浦はお茶目に観客席へ向けて投げキッスを送り、キス&クライではハイタッチで迎えられた。
155.55点というハイスコアで、堂々の1位だった。
「まず、大きなミスがなく終えられたのがうれしい。こっちに来てからもいい練習を積むことができていたので、ショートよりはちょっと緊張しましたが、考えすぎず今までの練習を信じて一つひとつ丁寧に取り組めたと思います」
三浦は弾む声で言っている。
一方、木原は「ショートのほうが緊張して、フリーは冷静にできました」と言って、こう続けた。
「前回の北京では団体戦のあとが難しくて。団体でメダルを獲った瞬間、目標を達成した感じがあったんです。ただ今回もショートは緊張したし、個人戦のシミュレーションにもなりプラスになりました」
団体でりくりゅうがSP、フリーをどちらも1位で戦い抜いた姿は頼もしかった。
【個人戦に向けて大きな一歩】
五輪のメダル争う領域にまで来た選手は、リンクで人生そのものを見せつける。その姿が人を感動させる。そこで生まれた熱によって、選手は限界を超えた演技をする。今回、イタリアの選手たちが最高の演技で銅メダルに滑り込んだのは、会場と一体化したからだろう。それぞれが限界を超えたなか、本当の実力が試される。
りくりゅうは、大舞台でみごとに真価を発揮した。彼らはとても自然体だった。王者だけが見せる、荒々しいが静謐(せいひつ)な迫力を放っていた。
「155点台もいただけると思っていなかったんですが、自分たちのベストを出せば150点は出るかなとも思っていました。まだまだ伸ばせる。個人戦に向けて、大きな一歩ですね」
三浦は言ったが、もはや自分たちとの戦いだろう。それだけ突出した存在になった。演技後は、個人戦も照準に入っていた。
「みんな完璧な演技で、すばらしい選手ばかりだなとあらためて思いました」(三浦)
「チームジャパンで一番いい色を狙いたいと初めて臨むオリンピックでした。全員でベストを尽くして勝ち獲ったメダルで、北京のメダルとも違ううれしさをみんなも感じているんじゃないかと」(木原)
日本は、アメリカにわずか1点及ばず、金メダルには届かなかった。しかしチーム一丸、狙って獲った銀メダルの輝きは格別だろう。それを糧に、次は個人戦だ。