プレーの再現性が日増しに高まっている鈴木(C)Getty Images地元記者も「あれは凄い」と唸ったワンプレー ドイツ…

プレーの再現性が日増しに高まっている鈴木(C)Getty Images

地元記者も「あれは凄い」と唸ったワンプレー

 ドイツの古豪フライブルクでプレーする鈴木唯人が素晴らしい。

 ブンデスリーガ第19節ケルン戦に勝利したフライブルクの順位は7位に浮上。来季のヨーロッパカップ戦出場権を狙える位置につけているチームにあって、今季から加入した鈴木の存在感は日増しに高まっている。ここ最近は完全にレギュラーポジションを確保し、試合を重ねるごとにチームメイト、監督・コーチ、そしてファンからの評価は高まり続けている。

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 先のケルン戦でみせたアシストシーンは、フライブルクの目の肥えた地元記者も「あのパスはすごい。あれで決まった」と驚きの声を隠せないほどの洗練性があった。

 ペナルティーエリア付近でボールを受けた鈴木は瞬間的に前を向く。この動作に相手守備陣が慌てて囲いにかかったが、24歳は動じない。ボールを巧みに運びながら、DFラインの裏に出来たスペースに飛び出してきた味方に、これ以上ないタイミングでスルーパスを通したのだ。

 鈴木のパスから生まれた絶好機をモノにしてゴールを決めきったデリー・シェルハンドは、「(鈴木は)とてもクリエイティブな選手で、視野が広い素晴らしい選手だよ。お互いにうまくサポートし合えていると思うし、チーム内で彼の価値観はとても高いものがある」と称賛の言葉を残している。

 鈴木の素晴らしさが凝縮されたシーンだった。ここで本人の言葉とともにさらに掘り下げていきたい。

「たぶん失点してから1分ぐらいだったと思います。それまでなかなかボールが入らなかったんですけど、ライン間で受けて何かするのは求められているところ。普段走ってほしいところで裏に走る選手が少ない中で、(味方が)いいタイミングで中に入ってきてくれて、センターバックの裏を取ってくれた。いい動きだったと思います」

 そう語る本人は、「特別なことじゃないですけど」と付け加えたが、いや、そんなことはない。

 鈴木がボールを受けた瞬間、周囲にはケルンの選手が4人もいた。さらに危険なエリアへの侵入を阻止すべく一気に寄せてくるという場面だった。相手が密集すれば、視界は妨げられるし、一番近くにいた相手DFに至っては、すでに鈴木へのボディコンタクトをとっている。パスコースを見出すのも簡単ではない。

 プレッシャーが四方からかかる中で、鈴木は手をうまく使ってバランスを取りつつ、ボールをコントロール。しかも同時に味方の動きを認知し、ゴールへの軌道を作り出した。この一連の動きを「一瞬のひらめき」という表現だけで片付けるのは、あまりにシンプルで、勿体ない。

 本来、左サイドにいるはずのシェルハンドが相手守備陣の背後に走りこむ動きが見えた瞬間が、果たしてどこにあったのだろう。

味方との連携も強化され、自信は深まるばかりだ(C)Getty Images

「味方がいる位置は感覚で分かってました」

 そんな質問をぶつけると、鈴木はちょっとだけ考えてから、当時の感覚を説明してくれた。

「ボールを受ける前に、周りがセカンドボールを拾いに来ている状況だったので、ある程度、味方がいる位置は感覚で分かってました。『斜め後ろぐらいにいるな』っていう感覚があって、ボールを受けてターンした時には、『あ、ここら辺にいるな』って。あとはどこに走り込むかなというのを感覚で察知してパスを出したという感じですね。ほぼ気配でしか見えてないですけど」

 鈴木はそう笑った。平然と言うが、これを刹那の瞬間に判断し、実行しているのだからすごい。目だけで認識するだけではブンデスリーガのスピードにはついていけない。研ぎ澄まされた感覚で得た情報がもたらすものもプレーの肝となる。今の彼の身体には、それが染みついている。

 加えて当該シーンは、相手の守備ラインとGKまでの距離も狭い。わずかでもパスのコースやタイミングがずれたり、スピードが速かったり、遅かったりしていたら、味方には届いていなかった。相手DFが対応できず、GKも飛び出してこれないところへと送られた、まさに絶妙な一本だった。

「ようやくああいうシーンで点が取れたので、自分にとっては価値あるアシストだったかなと思います。確かにスピード感も含めて、よくできたと思うので、良かったです。ただ、ああいうシーンを毎回完璧にできるとは思ってないので、回数を増やすことが大事だと思います」

 こうした好機演出の回数を増やしていく上で、再現性を高めることは重要になる。その点で、後半にとても興味深いプレーがあった。右サイドでパスを受けた鈴木が相手DF二人を抜き去り、グラウンダーのクロスを供給。これに反応したマキシミリアン・エッゲシュタインが放ったシュートが相手DFのハンドとなり、フライブルクがPKを獲得したシーンだ。

 ドリブルで相手2人を突破したプレーも素晴らしかったが、筆者はその前のパスをもらう動きに再現性があったとクローズアップしたい。

 実は似たようなシーンが前半にもあった。右SBのルーカス・キューブラーからセンターの位置でパスを受けたCFイゴール・マタノビッチがダイレクトで右サイドへパス。同サイドに流れていた鈴木だったが、マタノビッチにパスが入った瞬間にほんのちょっとだけ足を止めており、パスに追いつくことができなかった。

 この時、マタノビッチの方を振り返った鈴木が、パスに反応できなかったことを謝るようなジェスチャーをしていた。しかし、その振る舞いはお互いの共通イメージの表れを感じさせた。試合後、このシーンについても尋ねると、うなずきながら答えてくれた。

「マタノビッチはサイズが大きいですけど、足下は意外とうまい。1回目も裏を狙ったんですけどタイミングが合わなくて。そういうすり合わせも徐々に増やしていければと思います」

 味方とのコミュニケーションを深めながら、共通イメージを作り上げ、それを高いレベルで実践していく。そんな再現力を高めていく鈴木の取り組みが、相手守備を翻弄する共創力へとつながっている。ワールドカップが迫る日本代表でも活躍を楽しみにしたい選手なのは間違いない。

[取材・文: 中野吉之伴 Text by Kichinosuke Nakano]

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