WEEKLY TOUR REPORT米ツアー・トピックス 松山英樹に、新たなライバルの出現か? もとUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のスター選手である、パトリック・カントレー(25歳/アメリカ)のことだ。2017-2018シ…

WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 松山英樹に、新たなライバルの出現か?

 もとUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のスター選手である、パトリック・カントレー(25歳/アメリカ)のことだ。2017-2018シーズンの第5戦、ラスベガスで開催されたシュライナー・ホスピタル・フォー・チルドレン(11月2日~5日/ネバダ州、TPCサマリン)でついにツアー初優勝を飾ると、「いよいよカントレーの時代が来るだろう」と米ゴルフ界では多大な注目を集めている。



ツアー初優勝を飾ったパトリック・カントレー

「もし僕が健康な体を維持できれば、必ず自分が望んでいる場所に戻ることができると思っていた」

 そう語るカントレーはこの5年間、本当に過酷な時間を過ごしてきた――。

 カリフォルニア州ロングビーチ出身のカントレーは、UCLAに進学してオールアメリカンのメンバーとして活躍。2011年には、ジャック・ニクラウス賞、フィル・ミケルソン賞、マーク・マコーマック・メダルなど主要タイトルを総なめし、翌2012年にかけて最長記録(当時)となる通算55週間、アマチュア世界ランキング1位の座をキープした。

 そして2012年、将来を嘱望されたトップアマは、鳴り物入りでプロ転向を果たした。現在、ジョーダン・スピース(24歳/アメリカ)、ジャスティン・トーマス(24歳/アメリカ)ら”ヤングガン”がツアーを席巻しているが、実はそれ以前に、彼らよりも学年的にはふたつ上のカントレーにこそ、その期待がかかっていた。しかもその度合いは、スピースやトーマスをはるかにしのぐものだった。

 ところが、プロ転向後のカントレーに、思わぬ事態が待ち受けていた。

 2013年5月、クラウンプラザ招待atコロニアル(現ディーン&デルーカ招待)のウォーミングアップ中、突然背中に痛みが走った。診断結果は「腰椎の疲労骨折」。かなりの重症で、それから3年もの間、彼はその痛みに苦しめられてきた。

 さらに昨年2月、キャディーを務めてくれていた親友を交通事故で亡くした。それも、カントレーの目の前で起こった悲痛な出来事で、当時は「人生のどん底だった」とカントレーは振り返る。

 それでも、彼は「戦いたい」という気持ちだけは失わなかった。

 そうして、2016-2017シーズンに公傷制度を使ってツアー復帰を果たすと、3月のバルスパー選手権で2位、4月のRBCヘリテージで3位などとコンスタントに結果を残し、シーズン最後のメジャー全米プロ選手権でも33位と健闘。わずか出場9試合で見事プレーオフ進出を決めた。

 プレーオフに入ってからも、初戦のノーザントラストで10位、第2戦のデル・テクノロジー選手権が13位、第3戦のBMW選手権でも9位と着実に結果を出して、上位30名しか出場できない最終戦のツアー選手権まで駒を進めた。

 そのツアー選手権では20位にとどまったものの、結果的に昨季はトータル13試合に出場して予選落ちは一度もなし。限られた出場試合の中で、フェデックスランキング29位という成績を残してシーズンを終えた。この結果は、とてつもない”快挙”と言っても過言ではない。

 1866位。これは、昨年末のカントレーの世界ランキングである。それが現在は、44位にまで急浮上。年内までこのまま50位以内をキープできれば、来年のメジャー初戦、マスターズへの出場権が獲得できる。

 カントレーがマスターズ出場を決めれば、プロ転向直前の2012年以来、2度目となる。2012年大会は、松山が2年連続でベストアマを目指して奮闘したが、最終日にカントレーが逆転してベストアマを獲得。その姿は今でも鮮明に覚えている。

「僕はケガをして、いろいろなことを諦めなければならなかったが、ゴルフだけは絶対に諦めなかった。もし背中の痛みが一生治らなくても、痛みを抱えながらゴルフをしていこうと思っていた。それを思うと、今こうして僕が試合に出場し続けられることは奇跡かもしれない。

 ジョーダン(・スピース)、ジャスティン(・トーマス)……彼らとはずっと一緒に戦ってきた。今は少し水をあけられてしまったけど、新シーズンではそんなツアーを引っ張る”ヤングガン”たちと数多く戦えると思ったら、こんなにうれしいことはない。目指すのは、もちろん世界ランキング1位だ」

 きっぱりとそう宣言したカントレー。彼の頭の中にあるライバルには、もちろん松山英樹の名前も入っていることだろう。シーズンが本格化する来年、多彩なタレントがそろう”ヤングガン”たちがどんな戦いを見せてくれるのか、期待は膨らむばかりだ。