潜入には“条件”があった。静寂を保つこと-。その場の主役、栗山巧外野手(42)が設定した条件ではない。5日、高知・春野で…

潜入には“条件”があった。静寂を保つこと-。その場の主役、栗山巧外野手(42)が設定した条件ではない。5日、高知・春野での西武2軍キャンプ。午後1時ごろ、室内での個人練習が始まった。18人のファンが立ち会った。

名球会入りも果たしたバットマンは今季限りでの現役引退を表明している。話題の人だ。それでも高知まで訪れた18人は誰も撮影しない。小声での会話さえしない。栗山との距離は40メートルもあるのに。

プロ25年目、練習への真剣さはファンにも知られるところ。栗山自身は「シャッター音とか聞こえないですよ」というほど、いつも極限の集中下で練習している。それでも「騒ぐ場所じゃないからね」と40デシベルの静寂さに感謝した。

横浜から訪れた女性ファンはイスに座って微動だにせず。栗山が水分をとるとようやく「ふぅ」と息をつき、手でひざをこすった。振り返る。

「めっちゃ神聖でしたね。例えるなら神社でお清めを受けている時のような。今日は45分間くらいでしたけどずっと見ていられますし、飽きないですし」

昼にはメイン球場で打った。右翼への柵越えで締めた。「練習なんでホームランくらい出ますよ、さすがに」。それでも去年より快調だ。飛距離もキャッチボールの距離も。「去年は寒かったからね。全然あったかいです」と気温の高さを口にしつつ、打球の強さに期待も膨らむ。

静寂の時間を終え、メイン球場へ戻る。ファンから「サインお願いします」と声が飛ぶ。書かない。「練習後にお願いできますか?」の声には会釈で返す。練習中はとにかく集中。誰よりも先に準備する。たぐいまれな実績に加え、その姿勢こそがライオンズの宝。後藤オーナーも「非常に尊敬できる選手。こういう選手がライオンズひと筋でやってくれたということは非常にうれしく思います」とたたえるところだ。

球場入り口にはメッセージボードが置かれ、熱い言葉の数々が書かれる。栗山はキャンプでの若手たちの姿も見てほしいと願う。「打撃いまいちやなと思ってもブルペン行ったらすごいやついるし、その逆もあるし。絶対楽しめるし、ぜひ来てほしいです」。それでもやはり、今は主役。100人近いファンが帰りを待った。今度は言葉を交わしながらサインに応じた。神聖さを共有した18人にも、もちろん。【金子真仁】

【西武栗山の“引退表明”からここまで】

◆25年11月24日 契約更改後の会見で「2026年シーズンで締めくくりのシーズンとさせていただくことを報告します」とあいさつ。異例の“1年後の引退”を表明した。

◆26年1月1日 元日の過ごし方は「その時の感じで」と話していたが、その後、素振りしたと明かす。日刊スポーツ読者への年賀状では「バシッといきましょう」と手書き。

◆同1月4日 埼玉・川越市内でのスポーツイベントに参加。多くのファンから「あけましておめでとう」を伝えられた。

◆同2月1日 高知・春野でプロ25年目のキャンプがスタート。