<寺尾で候>日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。   ◇   ◇   …

<寺尾で候>

日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

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琉球の国・沖縄が、ヒカンザクラの開花とともに、プロ野球キャンプでにぎわっている。県庁で沖縄県文化観光スポーツ部スポーツ振興課主事、野球担当の島尻拓実に今キャンプの傾向をうかがった。

「キャンプインした初日に、阪神がキャンプをする宜野座をのぞいたんですが、大勢のファンが来ていました。どちらかというと、県外からのお客さんが多いという印象でしたね」

今年もNPBの6球団が来沖。中旬には宮崎県から巨人、広島、ロッテが加わって、最終的に計9球団が集結する。ファームの6球団を合わせると、県内15カ所でキャンプが行われることになる。

沖縄キャンプの先駆者は日本ハム。本土復帰から7年後の1979年(昭54)、数人のピッチャーで名護市営球場を使用したのが契機になった。81年にそれまでの徳島・鳴門球場を撤退し、野手を含めたチーム全体が沖縄キャンプをスタートさせる。

その年の日本ハムは、前身の東映フライヤーズ以来、19年ぶりのリーグ優勝を達成。キャンプ地が沖縄に定着したのは、大物経営者で、オーナーだった大社義規の先見の明といえる。その後は高知、宮崎が主流だったキャンプが、徐々に流れを変えていった。

以前の沖縄では、県内の集客数、売り上げが伸びても、航空会社、旅行代理店など本土に吸い取られ、県経済への実質的波及が限定された。高付加価値の観光を目指すために掲げられたのが、プロ野球のキャンプ誘致。今では貪欲に誘致を進めた結果が“キャンプ銀座”になった数字に表れている。

地元のシンクタンク、りゅうぎん総合研究所の試算によると、沖縄県における25年プロ野球春季キャンプの経済効果は、過去最高を更新する224億2100万円を算出した。24年は宜野湾キャンプを展開するDeNAが3位から日本一になったシーズンだ。

延べ観客数の約43万9000人は、前年比3・9パーセント減だが、県外からの観客数は過去最高の約12万人を集客したから、各キャンプ地が大勢ファンで盛り上がった。地元飲食店、宿泊、グッズ、レンタカー利用など、県外客を中心にした観光消費額が大きく影響したわけだ。

沖縄は13年から「スポーツアイランド構想」を前面に押し出し、その形成に積極的に取り組んできた。今春はNPBと同時に、韓国からも6チームが現地入り。プロ野球のキャンプ期間中は、地元の少年少女が自由に練習、試合ができる球場が見つからない課題は残されている。

だが沖縄県文化観光スポーツ部スポーツ振興課主事で、同じ野球担当の下地海人が「プロ野球の球団をチーム単位で受け入れることができる施設は、県内では飽和状態と言えます」と語ったように、アウター施策と位置づけたキャンプ誘致は大成功を収めたといえる。

昨夏は甲子園大会で沖縄尚学が優勝し、9月にはWBSC(世界野球ソフトボール連盟)主催の「U-18W杯」が沖縄で開催されるなど“野球大国”の様相。島尻は「県民性として野球好きが多い」とキャンプの盛況ぶりを予想する。

「巨人に沖縄出身の山城京平投手(ドラフト3位)、小浜佑斗内野手(同5位)、知念大成外野手(育成5位)の新人3人が入団したので、巨人キャンプを応援に行く県内の人も増えるかもしれませんね」

プロ野球沖縄キャンプ事務局は、伝統工芸の紅型(びんがた)模様を取り入れた「かりゆしユニホーム」を制作。さらに春季キャンプのパンフレットを作成し、交通情報、各キャンプ地の観光案内など発信に力を入れる。

キャンプイン当初は天候も不安定だったが、それでも気温が20度近くまで上昇する国内唯一の亜熱帯地域は魅力的。地元にとってスポーツ産業をけん引する重要コンテンツのプロ野球キャンプ。第3期を見据える「スポーツアイランド沖縄」の持続的動きに注目している。(敬称略)