SVリーグ 主要選手インタビュー 山本智大/大阪ブルテオン 中編(全3回)【世界のトップを相手に自分たちのプレーを出せた…

SVリーグ 主要選手インタビュー 
山本智大/大阪ブルテオン 中編(全3回)

【世界のトップを相手に自分たちのプレーを出せた】

「世界一のリベロ」

 山本智大には、その称号がふさわしい。実際、大阪ブルテオンが参加した昨年12月の世界クラブ選手権では、決勝でイタリアの欧州王者ペルージャに敗れたものの、大会を通じて最多のディグ(ラリー中の攻撃に対するレシーブ)数を記録し、「ベストリベロ賞」に輝いている。


2025年12月にブラジルで開催された男子バレーボール世界クラブ選手権でベストリベロに選出された山本智大(右端)

 photo by ZUMA Press / Aflo

「いくら打っても拾ってくる」

 外国のチームの選手たちが半ば呆れるほど、ブルテオンの守備は強力だったが、その中心にいたのが山本だった。

 ブラジルのベレンで開催された世界クラブ選手権でも、山本は世界の猛者たちのサーブやスパイクを次々に拾った。うなりを上げたボールを、どうやって、どんな角度で、どの部位に当てているのか。魔法でも使ったように、悠然とセッターにAパス(セッターへの完璧なパス)を返していた。

 山本の高い守備力が、勝利の確率を上げていたように思える。たとえば相手のサーバーやアタッカーが、山本を避けようとする。それは自ずと心理的な負荷を生み出す。"逃げてしまった"──そんな後ろめたいメンタリティが相手をさらにひるませるのだ。

「今回の世界クラブ選手権では、どこのチームとやっても、僕に打ってくる選手はニヤニヤしていたんです(笑)。ペルージャのチュニジア代表(ワシム・)ベンタラ選手とかは、『ヤマモト!』って名前を叫んできたり。自分のプレースタイルが知られている証拠だと思います。率直にうれしいですね」

 決勝まで戦って、山本は高水準のバレーを堪能したという。

「僕自身、"絶対に決めさせない"という気持ちでプレーできたので、世界クラブ選手権は楽しかったですね。ペルージャ戦はとくに。決勝戦もそうですが、予選の試合ではフルセットまでいったので(2-3で敗北)、"僕らもやれるんだ"と感じられた。

 相手は世界のトップ(ペルージャは2024-25シーズンの欧州チャンピオンズリーグ王者)。その選手たちを相手に、自分たちのプレーを出せたのは収穫だし、自分も調子がよかったんで、楽しかったです」

 最高のバレーで競い合う。それこそ、彼にとっては至福の瞬間だ。

「ここだけの話ですけど、ブラジルからイタリアに連れて行ってもらおうかなって思いました」

【山内晶大、石川祐希と深夜までバレー談義】

 山本はそう冗談を言った。世界の名だたる選手たちから一目置かれることは、リベロとして技を磨いてきた山本にとって勲章だ。

「そうは言っても、イタリアのセリエAではコートに入れる外国籍選手が3人までなので、そこで(外国籍の)リベロを取るか。現実的には、イタリアは難しいかなと思います。でも、世界クラブ選手権のような大きな大会で刺激を受けることができて、よかったですね」

 現地では同じ日本代表の山内晶大と同部屋で、そこにペルージャの石川祐希がやって来て、深夜までとことんバレーボールの話をしたという。

「表彰式が終わり、彼が部屋に来たので、0時から3時までずっと話していましたね(笑)。彼もバレーについて話すのが好きだし、(年齢が)ひとつ下の僕は信頼されているのか、パリ五輪のときも、いろいろ彼の話を聞いていました。彼自身も悩んで心の拠りどころが必要だったというか。いつか日本でも一緒にやりたい。そんな思いもありますけどね」

 山本は屈託のない表情で、そう明かした。その本質的な明るさが、チームを救うことがよくある。勝利を信じるポジティブな姿勢が、チームのエネルギーに変換されるのだ。

「周りには『その笑顔、作っているの? わざと笑っているんでしょ?』とか、よく言われるんです。いやいや、自然にバレーを楽しんでいる笑顔ですよ。シンプルにバレーが楽しくて、こみ上げてくるものなんです。

 自信を持ってプレーし、駆け引きに勝って、相手の渾身の一撃を拾う。まさにリベロをプレーする楽しさで笑顔になる。コートでは、すべての瞬間を楽しんでいます」

 世界最高のリベロのスマイルを間近に見ていると、救済の人の慈悲を感じる。一方で、守備者は葛藤も抱えているものだ。いくら拾っても、バレーボールにおいて、守備が正当に評価されることは少ない。どんなボールスポーツも例外なく、得点のほうが目立つし、失点は"どうして防げなかったのか"となりがちだ。

 昨シーズンのSVリーグ・チャンピオンシップ準決勝で敗れた後、山本は記者会見で「どうして他の人のボールを取る工夫をしなかったのか」という趣旨の質問を受けた。その時、山本にしては珍しく苦虫を噛み潰した表情で、感情を抑えているようだった。守備者の自負心が蠢(うごめ)いていた。

【「ミスはするものだから、切り替えられるように」】

「正直に言えば、"何を言っているのかな"という気持ちでした(笑)。フローターサーブだったら代わりに出られるところはあるんですが、(ボールが一瞬で到達する)ジャンプサーブはできることが限られている。トスを上げた後は(位置を)入れ替わっていいルールになりましたが、動いちゃうとリスキーで、そこは相手も見ているから難しい。逆に打ったりもしてくるので」

 そう言う山本は、これまでに何度も、理解されない現実と直面してきた。

「最初はいろいろ考えましたね。リベロになりたてのときや、代表に入りたての頃は、『なんで取れない』、『なんでそこにいない』と言われることもあって。でもそのうちに、割り切れるようになりました。

 全部取れるに越したことはないですけど、取れるボールと取れないボールを見極めることも大事だなと。たとえばライトから打たれ、ブロッカーの位置が悪く、変なところを抜かれて自分の脇に落ちたりしたら、割り切るしかないです」

 過ぎたるはなお及ばざるが如し──。完璧を求めすぎれば、アベレージが下がりかねない。アップダウンをなくすこと、つまり高く安定することで、チームの勝利につなげる。

「もちろん調子の波もありますけど、自分はそれが少ないほうだと思います」

 そこに山本が求めるリベロの真価があるのではないか。

「コンスタントにプレーできることが自分の強みです。めっちゃ調子がいい、めっちゃ調子が悪い、と波があるよりも普通を保ちたい。ミスはするものだから、切り替えられるようにする。ミスをする前提のマインドと言うべきでしょうか。

(大阪ブルテオンの)トーマス・サムエルボ監督にも『人はミスをする。どんな素晴らしい選手でも。バレー界だけじゃなく、(リオネル・)メッシも、レブロン(・ジェームス)も、いつも完璧じゃない』と言われます。普通にやり続けられるか。それが大事ですね」

 質の高い普通。それは一流のリベロに不可欠なものかもしれない。

(つづく)

後編を読む >>> ベテラン山本智大の飽くなき向上心「まだいける」「謙虚さを忘れず、もっと上を」

山本智大(やまもと・ともひろ)
1994年11月5日生まれ、北海道江別市出身。小学1年生のときにバレーボールを始め、酪農学園大附とわの森三愛高、日本体育大を経て、2017年にFC東京(現・東京グレートベアーズ)に加入。2018年に日本製鉄堺ブレイザーズへ移籍するとレギュラーに定着し、2019年に日本代表に初選出された。東京、パリと2度の五輪のほか、世界選手権に5回、ネーションズリーグに5回、ワールドカップに2回出場。日本随一のリベロの座を確立している。2024-25シーズンのSVリーグのベストリベロ、2025年世界クラブ選手権のベストリベロにも選出されている。