【ミラノ4日=木下淳】フィギュアスケート男子の22年北京五輪(個人、団体)銀メダリスト、鍵山優真(22=オリエンタルバイ…
【ミラノ4日=木下淳】フィギュアスケート男子の22年北京五輪(個人、団体)銀メダリスト、鍵山優真(22=オリエンタルバイオ/中京大)が出国直前にインタビューに応じ「4年前の自分に勝つ準備はできている」と激白した。6日に開幕するミラノ・コルティナ五輪で2度目の大舞台に挑み、大技4回転フリップを加えたプログラムで勝負すると表明。前回を上回る金メダルを狙う。花形競技の先陣を切って先月29日に当地入り。男子ショートプログラム(SP)出場が見込まれる団体戦は6日から。個人戦の男子SPは日本時間2月11日、同フリーは同14日に行われる。
◇ ◇ ◇
独断、だった。今季1度も試合で跳んでいない4回転フリップを、五輪の1カ月前に投入。父正和コーチにも事前に伝えなかった。
「何も言わず、話し合いもせず。やる! と自分で決断したので。年明け最初の曲(かけ練習)で、いきなりフリップを入れました。父は『あ、やるのね』みたいな感じだったと思うけど(笑い)。五輪の舞台で、いま持てる技術の全てを出し切りたかった。あとは試合で誠意を示すだけ」
昨年末、全日本2連覇の後は大みそかまで練習し、元日から2日間だけ静養した。アイスショー出演の翌5日早朝、カナダの振付師ローリー・ニコルさんとリモートで練習し、父に初披露した。フリー曲「トゥーランドット」のジャンプ2本目に4回転フリップを組み込むプログラムに最終調律。演技全体の完成度を重んじて見送ってきたが、覚悟した。「見たことのない景色を見に行きたい」と。
正和コーチも驚き、目を細める。初めてリンクに連れて行き、氷をなめて遊んでいた5歳から、自身に並ぶ2度目の五輪に挑む22歳まで、父は全てのジャンプ構成を授けてきた。しかし「初めてかもしれないね、意思表示は。うれしいというか『やるのね』と(笑い)。押しつけたことはなく相談してきた中、本人が強い気持ちで決めたなら」と歓迎した。息子も全幅の信頼を寄せてきただけに、成長も物語る挑戦となった。
世界で唯一、クワッドアクセル(4回転半)を操る男が標的だ。2シーズン無敗の王者イリア・マリニン(米国)に挑む。1歳下の「ラスボス」とは、国別対抗戦を除いて1勝8敗。五輪前哨戦、昨年12月のグランプリ(GP)ファイナルも、ショートプログラム首位の鍵山が3位マリニンに約15点差をつけたが、フリーで4回転の全6種7本を決められて大逆転された。
借りを返す“鍵”がフリップ。4回転3種4本+世界一の表現力で勝負する。採用こそしていないが「自分の中で最も難しい」という4回転ループも練習では成功しており「今が全盛期」と最高の状態。現在はイタリア北部バレーゼの非公開合宿で集中しており、今日5日、本番会場での初の公式練習でベールを脱ぐ。
昨季は、父子ともマリニンを意識し過ぎたあまり、大技に挑み自分を見失っていた。今季は「本来の鍵山優真を取り戻す」(正和氏)ため封印してきた代物だが、今なら解禁できる。本人も、昨季は「感覚で跳んでいた」と不安定だったが「研究して3回転と同じ要領で進入速度、構え等をルーティン化して、上体が起きる癖も抑えて跳べている」と言語化もできている。
4年前は18歳。初出場の勢いで、日本フィギュア界の最年少メダリスト(銀)になった。その後、羽生結弦、宇野昌磨から受け継いだエースの座。負傷で大半を棒に振るシーズンもあり「重圧、けが…谷の方が多い4年間だったけど、自分の身体を知れて、理論的になれた。4年前の自分に勝つ準備はできている。五輪の魔物? おいしいの? そんなの無視して楽しまないと。もちろん狙うは金。うれし涙の経験がないので流してみたいな」。4回転フリップを投じるフリーも合計点も、自己ベストは前回の北京五輪。己を超えた先に、最高の輝きが待つ。
◆鍵山優真(かぎやま・ゆうま)2003年(平15)5月5日生まれ、横浜市出身。19年の全日本3位は高校1年では24年ぶり表彰台。20年のユース五輪金メダル。22年に星槎国際高横浜から中京大へ。主な実績は世界選手権2位3回、4大陸1位1回、GPファイナル2位2回など。趣味は写真撮影、縄跳びは4重跳び。スヌーピー好き。160センチ。父正和コーチは91~93年に全日本3連覇。92年アルベールビルと94年リレハンメル五輪に連続出場。
◆鍵山の22年北京五輪 羽生、宇野に次ぐ全日本3位で初出場。団体戦の男子フリーで4回転ループに初成功するなど、現在も自己ベストの208・94点をマークした。会心の演技で10点(1位)を獲得し、日本の準優勝に貢献。個人戦はSP108・12点、フリー201・93点、合計310・05点で、全てが金メダルのチェン(米国)に次ぐ日本勢最高の2位だった。18歳9カ月のメダル獲得は日本フィギュア史上最年少。