直近の五輪世代の選手がどれだけ活躍できるか。ワールドカップの成績を占ううえで、それが重要な要素となることは、過去の歴史…
直近の五輪世代の選手がどれだけ活躍できるか。ワールドカップの成績を占ううえで、それが重要な要素となることは、過去の歴史が示している。
では、今年6月に開幕するワールドカップをおよそ4カ月後に控え、現在の日本代表はどうか。
直近の五輪世代とは、すなわちパリ五輪世代にあたるわけだが、現状において当該世代の台頭が進んでいるとは言い難い。
ワールドカップ出場が決まった、昨年3月のアジア最終予選バーレーン戦当時の招集メンバー27人を振り返っても、そのうちパリ五輪世代は5人のみ。しかも、実際に試合に出場したのは、鈴木彩艶、久保建英のふたりだけだ。
その鈴木彩、久保にしても、ともに飛び級で東京五輪の登録メンバーに入った選手であり、パリ五輪には出場していない。本当の意味でパリ五輪世代の台頭具合を表わす存在と言っていいのかどうか、微妙なところだ。
また、現時点で最新の日本代表戦となる昨年11月の親善試合(ガーナ戦、ボリビア戦)時の招集メンバーを見ても、26人中8人。数のうえでは、アジア最終予選時より増えてはいるが、従来の主力を脅かす立場に成長してきたのは鈴木淳之介だけで、あとは、ようやく藤田譲瑠チマがコンスタントに名を連ねるようになった、というのが実情である。
現時点で、いわゆるレギュラークラス、あるいはそれに準ずるクラスと呼べるのは、鈴木彩、久保、鈴木淳の3人くらい。彼らは、コンディションに問題がなければ、おそらくワールドカップ本番でも登録メンバー入りする可能性が高いだろうが、パリ五輪世代全体として見たときには、少々寂しい状況にあると言わざるを得ない。
北中米W杯では藤田譲瑠チマらパリ五輪組の活躍が期待される
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ただ、このところの日本代表は、よもやの災禍に見舞われており、鎌田大地、南野拓実、久保といった主力に負傷者が相次いでいる。
だからこそ、なお一層のパリ五輪世代の台頭が期待されているとも言える。
昨夏ヨーロッパへ渡った高井幸大がドイツで復調気配を見せ始め、同じくドイツでは藤田が著しい成長を自身のパフォーマンスによって示している。
また、パリ五輪で日本の中盤を支えた山本理仁は、持ち前の優れた技術に力強さを加え、ベルギーで明らかな進歩を見せており、今年5月にヨーロッパでのシーズンが終わったときに、彼らがどんな変化を遂げているかは、非常に楽しみだ。
しかしながら、現在の日本代表において、ボランチから後ろのポジションは、かなりハイレベルな競争が繰り広げられている。今後、コンディションの問題が出てくる選手がいるかもしれないが、高井や藤田、山本にとっては狭き門というのが現状だ。
その一方で、前述した負傷者は主に攻撃的なポジションに多く、それに代わる選手が必要とされている。
加えて、攻撃的なポジションのほうがスポット的に選手を起用しやすく、守備的なポジションとの比較で言えば、大会直前であっても新戦力を加えやすいというメリットもある。
まして日本がグループステージ突破にとどまらず、ベスト8以上を狙うのであれば、2002年日韓大会の稲本潤一、2010年南アフリカ大会の本田圭佑、2022年カタール大会の堂安律のようなラッキーボーイの台頭も不可欠。未知の可能性を秘めたアタッカーには、より大きな期待がかかる。
そうなると楽しみなのは、平河悠、斉藤光毅、細谷真大、鈴木唯人、三戸舜介、北野颯太といった点を取れるポジションの選手になるのだろう。
だが、未知の可能性という意味で言えば、むしろ面白いのはパリ五輪世代よりも、もうひとつ下のロサンゼルス五輪世代かもしれない。
実際、昨年11月の親善試合のメンバーには、後藤啓介、佐藤龍之介が選ばれており、その他にも、ヨーロッパで着実にゴールという結果を残している塩貝健人もいる。
確かに、東京五輪世代の層は厚い。
2021年東京五輪で4位となった選手たちの多くが、すでに前回のワールドカップを経験し、現在も日本代表の主力を成している。その後に台頭してきた新興勢力、すなわち早川友基、渡辺剛、安藤智哉、小川航基、佐野海舟らにしてもまた、東京五輪世代なのである。
いわばパリ五輪世代は、ひとつ上の世代の活躍に押し出されてしまっている格好だ。
言い換えれば、本来はパリ五輪世代が果たすべき日本代表の底上げという役割を、東京五輪世代のなかでも、五輪本大会に出場できなかった選手たちが担っている。そう見ることもできるだろう。
とはいえ、概ね20代後半の東京五輪世代と、20代前半のパリ五輪世代。過去のワールドカップを振り返ったときに、直近の五輪世代の選手が活躍しているのは、彼らが急成長する可能性を秘めた年齢だったことと無関係ではあるまい。
ワールドカップ本番まで、およそ4カ月。残された猶予は決して長くないが、伸び盛りの選手が化けるには、十分すぎる時間ではないだろうか。