「スペシャルアサインメントコーチ兼コンサルタント」としての働きが評価された かつてソフトバンクやロッテでプレーした福田秀…

「スペシャルアサインメントコーチ兼コンサルタント」としての働きが評価された

 かつてソフトバンクやロッテでプレーした福田秀平氏が2026年も、メジャーリーグ・マリナーズの「スペシャルアサインメントコーチ兼コンサルタント」に留任することとなった。同職を務めた昨季の働きが球団に評価された形で、再契約を掴み取った。米球界の指導者として2年目を迎えることとなった福田氏は、Full-Countの単独インタビューで思いを語った。

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「こうやって2年目の契約をいただけると思ってもなかったので、まず素直に嬉しいということと、今年は2年目なので、昨年以上に色々なことを求められると思っています」

 福田氏はそう口を開くと、コーチとしての成長への意欲を示した。

「僕自身も昨年勉強したことを、また今年新たな自分のスキルとして選手たちに還元できたらいいなと思いますし、マリナーズも昨年いいところまで行ったので、なんとかチームの勝ちに少しでも貢献できるように頑張っていきたいなというふうに思ってます」

 福田氏は昨年スペシャルアサインメントコーチとして、主に外野守備と走塁を担当。メジャーリーグだけでなく3Aからルーキーリーグまでのマイナー全体、そしてドミニカ共和国のアカデミーまでをカバーして選手たちを指導してきた。仕事内容は想像以上にハードなものだった。

「基本的に球団として、メジャーからマイナーまである程度、一貫したマニュアルがあります。そこをしっかり自分の中に落とし込んだ上で、試合後に良かったプレー、悪かったプレーとかを試合後にコーチミーティングで話して。1週間に1回、球団にレポートを提出するっていうことが僕の業務でした。他にも練習メニューを担当したり、選手の質問に答えたりもありました」

 渡米1年目のため、英語もまだまだ満足に話すことはできない。翻訳アプリなども頼りに、必死にコーチ陣や選手たちとコミュニケーションを重ねてきた。目まぐるしい日々を送りながら、全カテゴリーをカバー。メジャーリーグと3Aで日々を過ごすことが最も多かったが、1週間から2週間のスパンでカテゴリー間を移動していた。

メジャーからマイナーまで全カテゴリーで指導…スカウトとしてNPBの試合も視察

「もう1人で移動する、飛行機に乗ることがこんなにも大変だとは思わなかったですね」

 米国内、そしてアカデミーのあるドミニカ共和国への移動は全て1人。3Aタコマの本拠地はシアトルから車で40分ほどだが、2Aアーカンソーはシアトルから乗り継ぎを入れて、8時間ほどのフライト。1Aのモデストは、サンフランシスコ空港まで車で2時間ほどの距離にあり、朝5時に起きて車を運転しなければならないこともあった。

「全部レンタカーです。球団が全部用意してくれます。まず空港に着いたら、レンタカーショップに行くんです。アメリカのレンタカーって車種を選べるんです。同じランク内で選べるんですけど、選ぶのもまた楽しいんですよ。今週はどの車に乗ろうかなっていうのは1つの楽しみとしてありましたね」

 コーチ業と並行して、コンサルタントという立場でスカウト業も兼務してきた。実際にNPBの試合に足を運んでスカウティング活動を行うだけでなく、マリナーズの編成会議に参加して、自身の考えを伝えることもあった。

「ターゲットはNPBからMLBに挑戦するような選手と、NPBで活躍する元メジャーリーガーですね」

 昨季でいえば村上宗隆(ヤクルト→ホワイトソックス)、岡本和真(巨人→ブルージェイズ)、今井達也(西武→アストロズ)といった選手たち。実際に日本に帰国した際に視察し、マリナーズの編成スタッフと一緒にスタンドで選手をチェックしてスカウティングレポートも書いた。

「僕の何が一番の強みかというと、どのカテゴリーにも行ってるんですよ。メジャーリーグだけじゃなく、3A、2A、ハイA、ローA、ルーキーリーグっていう全ての段階を経験している。『この守備はどのレベル?』とかって聞かれて『2Aかな』とか『3Aかな』っていう会話ができる」

 コーチとして各カテゴリーを見てきたからこそ、カテゴリーの基準に合わせた具体的な評価ができる。編成会議にも参加し、NPBで18年プレーした経験と米国で学んだ知識を融合させた視点で助言を送ってきた。

「自分を実験台に」するためにベースボールユナイテッドに参戦

 1年足らずの期間だが、米球界で濃密な時間を過ごしてきた福田氏。その中で、自身が目指すコーチとしての“理想像”を描くようになってきた。それが“実際にプレーするコーチ”だ。

「コーチ業をさせていただいて、いろんなことを学びました。同じ野球ですけど、国も、文化も、もちろん言葉も違う。これまでと180度異なる考え方もあって、ちょっと自分に落とし込みたい、試してみないと(選手に)伝えれないなっていうことがあった。プレーヤーとしての側面も持って、自分を実験台にして伝える方が説得力が増すじゃないですか。だから実際にプレーしてみようと思ったんです」
 
 昨年11月から12月にかけて、福田氏はUAEのドバイで開催されたベースボールユナイテッドに、2年連続で参加した。「学んだことを自分で試したかった」からで「あくまでもコーチとしてのスキルを上げるため」に、自らプレーすることにした

 実際にプレーすることには恐怖もあった。

「コーチってプレーをしたがらない。やっぱり怖いんです。怖かったです、僕も。プレーすることが」

 試合でプレーするということは、他の人の目に触れるということ。当然、マリナーズの選手やコーチたちが見る可能性もある。自身がミスをしたら、説得力がなくなってしまうのでは……。「プレーするってそういうことじゃないですか。(野球は)ミスのスポーツなので」。

 そのリスクを背負ってでもプレーしたのは、どうしても試したかったことがあったから。その最たる例が、マリナーズの会長付き特別アドバイザーであるイチロー氏から教わった走塁技術。イチロー氏が高校生たちに伝えている“シャッフルの技術”などについて、だった。

「イチローさんから教えていただいた走塁技術が、日本の教え、今まで教えられてきたこと、アメリカで習ったこととは180度違うような走塁の技術だった。細かいことはなかなか言えないですけど、殿堂に入られた方ですから、1つ1つの技術に理論があるんです」

ドバイではトルピードバットを使用して実際にホームランも放った

 もう1つ、福田氏がドバイで試したのが、昨季序盤、米球界で話題となった先端が細くなるトルピードバット。福田氏はベースボールユナイテッドの期間中、このトルピードバットのみで打席に立った。

 マリナーズでも昨季60本塁打を放ったカル・ローリー捕手をはじめ、多くの選手がトルピードバットを使っていた。「僕が現役だったら絶対に使わないと思うようなバットだった」。とはいえ、ただ素振りで振っただけでは何も分からない。実際に打席に立って、投手の生きたボールに対して使ってみないことには評価のしようがなかった。

 現役を引退して約1年が経っていたが、福田氏はこのバットを使い、ドバイでホームランも打った。実際に実戦で試したことで「これはこれでありだなって。確かに先端の重さがない分、先にヘッドが返ってしまったり、前に出されたら拾えないような感覚はありました。であれば、もうちょっと引きつけてアプローチできるとか利点はあるな、と。(自分の中で)否定的だったことも、実際にやってみると『あ、これいけるじゃん』『これが合う選手も出てくるよな』と感じられて選択肢が広がりました」と感じることができた。

「自分を実験台にできるっていうのは誰もいないじゃないですか。コーチしておきながら、ちょっと選手ちょっとやってとか、そういう道もあるかもしれないなっていうのも思い始めてはいます」。今後も体が動く限りは、自分でプレーして試して、それを落とし込んでいく、という新たなコーチ像を思い描いている。

 今季も籍を置くことになったマリナーズは昨季、24年ぶりに地区優勝を果たした。その瞬間を福田氏もベンチで迎えることができた。

「震えましたね、本当に。(ポストシーズン進出を決めたロッキーズ戦で)ジョシュ・ネイラーが逆転の二塁打を満塁から打ったんですけど、あの時、なぜか僕も泣きそうになりました」

 喜びに沸く首脳陣、選手たちを目にして、胸が震えた。ただ、マリナーズはリーグ優勝決定シリーズでブルージェイズに敗れ、ドジャースとのワールドシリーズに進むことはできなかった。チームとしてその“忘れ物”を取りに行く今季、コーチとして2年目となる福田氏も更なる成長を誓う。

「コミュニケーションを取る上で、言語は絶対ですし、語学力の向上っていうのは一番にあります。選手1人1人のことをもっと知っていかないといけないですし、もっとたくさんいろんな質問をしていただけるように、1人1人と向き合いながらやっていきたい」

 マリナーズのワールドシリーズ制覇、そして、コーチとしてより多くのことを学ぶため――。福田氏の米球界での第2章が始まる。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)