難病と向き合う二人の間には、同じ経験を持つ者同士だからこそ共有できる部分があった(C)CoCoKARAnext 国指定の…

難病と向き合う二人の間には、同じ経験を持つ者同士だからこそ共有できる部分があった(C)CoCoKARAnext

 国指定の難病・黄色靱帯骨化症と向き合い現役生活を送ってきた元DeNAの三嶋一輝氏が、同じ病と闘う阪神・湯浅京己とキャンプ地で言葉を交わした。限られた時間ではあったが、その対話は、同じ経験を持つ者同士だからこそ共有できる、濃密なものだったという。

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「練習しているところは見られなかったんですけど、ウェイトの合間に少し話すことができました。ちゃんと面と向かって話すのは、実は今日が初めてでした」

 これまで電話やメッセージを通じて連絡を取り合ってきた2人だが、実際に顔を合わせて言葉を交わしたのは、この日が初めて。「僕が感じていた感覚と、ほぼ一緒でした。一番つらいのは、なった人にしか分からない“感覚のズレ”。疲れやすさも含めて、『それあるよね』っていう話が自然とできました」と振り返り、当事者同士だからこそ通じ合う感覚があったことを明かした。

 手術後の身体の状態や、日常生活で気をつけていること、身体を温めるための工夫など、具体的な情報も、これまで共有してきた。今回の対面では、互いに傷口を見せ合う場面もあったという。

 湯浅は手術後も1軍の舞台で結果を残し、昨季は40試合に登板。三嶋氏はその姿を、同じ病を経験する立場から強くリスペクトしている。

「本当によく戻ってきたなと思います。外から見たら十分通用しているように見えても、本人の中では以前の自分と比べてしまう部分がある。それを埋めていく作業は、相当大変だと思います」

 国指定の難病である黄色靱帯骨化症に「完治」と呼べる状態は、現時点の医学では基本的にない。再発への不安と向き合いながら、自分に合った動きや治療法を探し続ける日々が続く。

「付き合っていくしかない病気。だからこそ、自分の身体が一番動く方法を探し続けるしかないんです」

 三嶋氏は、1年前のある出来事を振り返った。昨年のキャンプのオフの日に、沖縄で偶然、阪神の藤川球児監督と顔を合わせた際のことだ。

「休みの日にたまたまお会いして、挨拶をさせてもらったんです。その後、藤川監督が改めて僕のところに来てくださって、症状について『手術後はどんな感じだった?』『感覚はどうだった?』と、聞いてくれたんです」

 湯浅と同じ病と闘う三嶋氏の言葉に、藤川監督は真剣に耳を傾けたという。相手チームの投手であるにも関わらずだ。

「選手のために、そこまでしてくれるんだなって。正直、僕がすごく嬉しかったです。同じ病気をした身として、ああやって親身になってくれる指揮官がいるのは、本当に心強いと思いました」

藤川監督の気遣いに三嶋氏は感動したという(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

 そうした指揮官の気遣いが、湯浅の起用やケアにもつながり、昨季40試合登板という結果に結びついたのではないかと、三嶋氏は感じている。

「いろんなことがつながって、あのシーズンになったんだと思います。監督が選手のことを本気で考えているチームなんだなって、外から見ていても伝わってきました」

 現役時代、三嶋氏自身も「自分が自分じゃなくなったような感覚」に苦しんだ。

「なんでこれくらいしかできないんだろうって、ずっと考えていました。神経の病気って、周りからは分かりづらいし、説明してもなかなか伝わらない。その孤独感が一番きつかったですね」

 だからこそ、湯浅の存在、そして藤川監督の姿勢に、強い意味を感じている。

「監督自ら、選手のために病気のことを理解しようとしてくれる。それだけで、選手は救われると思うんです。神経障害って、本当に人に分かってもらえない病気なので」

 引退後、三嶋氏の中には新たな思いも芽生えている。難病と向き合う選手が、孤立せずに競技を続けられる環境をつくること。そのために、自身の経験を伝えていきたいという。

「これから同じような病気を抱える選手は、きっと増えていくと思います。だからこそ、まずは知ってもらうことが大事。病気の存在や、どういう症状があるのかを理解してもらえれば、選手も周りも、少し楽になると思うんです」

 湯浅にかけた言葉も、決して特別なものではなかった。

「『無理しないで』とも『頑張って』とも言い切れない。ただ、『俺でよければ、いつでも相談して』って。それだけです」

 同じ病と闘う者として、そしてプロ野球界の一員として。三嶋氏の言葉には、様々な枠を超え、難病への理解と支え合いの大切さを伝えたいという、静かな願いが込められていた。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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