G1・22勝(重賞70勝)を含む1119勝を挙げる国枝栄調教師(70)=美浦=が、3月3日に定年を迎える。牝馬3冠に輝…

 G1・22勝(重賞70勝)を含む1119勝を挙げる国枝栄調教師(70)=美浦=が、3月3日に定年を迎える。牝馬3冠に輝いたアパパネとアーモンドアイなど、多くの名馬を送り出してきた名伯楽のホースマン人生もいよいよ最終コーナー。国枝師と開業当初から厩舎を支えてきた鈴木勝美助手(59)が、これまでの道のりを対談で振り返る。スポーツ報知では定年が迫った調教師にスポットを当てた特集記事を随時、掲載する。(取材構成・坂本 達洋)

  ―国枝厩舎で大切にしてきた「流儀」は?

 国「基本的には無理くりさせないことかな。レースそのものが調教の延長線上で、レースもそれ1回こっきりではなくて、先につながっていくからね。そういう点では、騎手にあんまり事故やけががなかったのはよかった。調教においても人に大きなけがはないよな?」

 鈴「ないですね。もちろん競馬なので攻めていくところはありますが、調教を進めていくことに関して自分たちは『やめる勇気』はないんですよ。でも、先生はすぐに『やめよう』という判断をしてくれるので、大きな事故につながらずに済んだというのはあると思います。普通に客観的に見ると『無理をしない』になってしまうんですが、『我慢をする』ということは先生に習いました。G1でも何でも普通は使いたいところなのに、必ず先生は無理をさせませんでしたね」

 国「まあ、そこらへんは微妙で男馬に関して言えば、結局はクラシックを狙うにあたって馬の質もあるんだろうけど、もう少し(調教で攻めて)いってもという気がしないでもなかった。要するに調教だけではなく、レースの使い方もね。明らかに『これでクラシックを狙っていくんだ!』というのが足りなかったのかな、という気はしなくもないよね」

 ―アーモンドアイが19年の香港カップを発熱のため回避したこともありました。

 国「直前にちょこっと熱が上がって、フジさん(藤沢和雄元調教師)に冗談で言われたよ。『お前、熱なんて測るからだ』って(笑)。それはそれとして有馬記念の選択肢もあったし、飛行機に積んで具合が悪くなったら、すごく無駄じゃん。これだけの馬だし、万全じゃないとね。それに俺が思うのは、馬の故障っていうのは九分九厘、全部だいたい分かるんだよ。俺や勝美が脚元などをチェックして、何かあるなという時に故障があるものなんだよ」

 鈴「雰囲気で分かるんですよね」

 国「馬はだいたい、そういうふうに訴えているんだよ。そういう意味では、さっきも言ったけど騎手をけがさせて大事に至ることがなかったのは、すごくよかったと思っているんだよね」

 鈴「そうですね。先生や藤沢(和雄元調教師)さんは、何が格好良くて、何が大切か、馬に対して全部の責任を負う『ホースマン』というものがどういうものか。つまりは馬を大切にする、ということを教えてきたと思います。そういうホースマンの美学を先生は持っていて、今もずっと続けていらっしゃると思います」

 ◆国枝 栄(くにえだ・さかえ)1955年4月14日生まれ。岐阜県出身。70歳。71年の日本ダービー馬ヒカルイマイをきっかけに競馬に興味を持ち、東京農工大農学部獣医学科卒業後、78年から美浦・山崎彰義厩舎で調教助手。89年に調教師免許を取得して、90年に開業。JRA通算9493戦1119勝。JRA・G1・22勝を含む重賞70勝。著書に「覚悟の競馬論」がある。趣味はゴルフとボウリング。

 ◆鈴木 勝美(すずき・かつみ)1967年1月26日、群馬県出身。59歳。85年4月に美浦・矢野幸夫厩舎の厩務員になり、山崎彰義厩舎、八木沢勝美厩舎を経て、90年9月から国枝厩舎の調教助手に。忘れられない思い出の一頭は、厩舎に重賞、G1初勝利をもたらしたブラックホーク。