G1・22勝(重賞70勝)を含む1119勝を挙げる国枝栄調教師(70)=美浦=が、3月3日に定年を迎える。牝馬3冠に輝…

 G1・22勝(重賞70勝)を含む1119勝を挙げる国枝栄調教師(70)=美浦=が、3月3日に定年を迎える。牝馬3冠に輝いたアパパネとアーモンドアイなど、多くの名馬を送り出してきた名伯楽のホースマン人生もいよいよ最終コーナー。国枝師と開業当初から厩舎を支えてきた鈴木勝美助手(59)が、これまでの道のりを対談で振り返る。スポーツ報知では定年が迫った調教師にスポットを当てた特集記事を随時、掲載する。(取材構成・坂本 達洋)

  ―厩舎に初めての重賞制覇をもたらしたのは、98年のダービー卿CTを制したブラックホークです。

 国「“苦節十年”だったんだな(笑)。やっぱり金子真人さんのお陰だよね。ノーザンファームの吉田勝己社長の紹介で、あれだけの馬主が最初にうちに来てくれたというのは大きかったね」

 鈴「先生が海外(米国のキーンランド・セール)に行った時のことでしたよね」

 国「その頃、やっぱり外国の馬の方が、(内国産馬と比べて)圧倒的に力があったからね。さかのぼればマルゼンスキーやギャラントダンサー。ブラックホークは、とにかくすごい馬だった。大きなゴロッとした馬だけど、スピードがあって性格も良くて乗りやすかった」

 鈴「厩舎は頑張っているけど、重賞まで手が届かなくて苦労していましたよ。オーナーは重賞、G1勝ちも、うちが初めてだったんでしたっけ?」

 国「そうだよ。ピンクカメオ(07年NHKマイルC制覇)はその妹だし、同じ外国産馬のつながりでソルティビッドが来て、その子や孫のアパパネ(10年の牝馬3冠などG15勝)やアカイトリノムスメ(21年秋華賞制覇)につながって、そういう意味ではラッキーだったよなあ」

 ―強いて思い出の一頭を挙げるとすれば。

 国「一頭と言えば、アーモンドアイが圧倒的にね。G1馬と言っても、年度代表馬に2回なるくらいの抜けた馬だった」

 鈴「もちろんアーモンドアイですよね。ちょっと衝撃的でした。最初のゲート試験くらいまでは乗っていましたが、いいバネがあってすごい馬でしたよね」

 国「個人的にはマツリダゴッホの思い出が面白いかな。勝った(07年の)有馬記念は、調子はいいし、中山の長距離戦で強い勝ち方をしていたから相当自信があった。だけど、オーナーも生産者も誰も来ていなくて、厩舎みんなで口取りだもん。ある意味、すごくいい写真だよね」

 鈴「札幌の新馬戦から強烈な勝ち方で、あれは走るなと思いました」

 国「函館で調教していて正義(蛯名騎手、現調教師)が、『ちょっと…』とか言っていたら、7馬身差だもんな。そりゃG1を勝つよ。あの馬もすごかった」

 鈴「いろんな馬に乗ってきましたけど、フォルタレーザという馬もいましたね」

 国「いたなあ。中山で腰骨をやってしまって助からなかった(左寛骨骨折で予後不良)けど、圧倒的に能力は抜けていた」

 鈴「ブラックホーク2世かと思いましたもんね。東京の新馬戦を“ジグザグ走行”で勝って…」

 国「レース後にノリ(横山典弘騎手)が怒ってさ(苦笑)。うまくいったらG1クラスだったから、すごく悔やまれるよね。まあ、パワーが違った」

 鈴「バネもあって迫力がありました。あの頃はいい馬がそろっていましたよね。先生が毎年、外国に行って馬を買ってきて」

 国「クールモアからとか、みんなレベルの高い馬だった。フジさん(藤沢和雄元調教師)を中心に調教師5人くらいで馬主さんと行って、(元調教師の)伊藤正徳さんとか田中清隆さん、高橋祥泰さんとかと行ったね」

 鈴「皆さん、意識高い系ですね(笑)」

 ◆国枝 栄(くにえだ・さかえ)1955年4月14日生まれ。岐阜県出身。70歳。71年の日本ダービー馬ヒカルイマイをきっかけに競馬に興味を持ち、東京農工大農学部獣医学科卒業後、78年から美浦・山崎彰義厩舎で調教助手。89年に調教師免許を取得して、90年に開業。JRA通算9493戦1119勝。JRA・G1・22勝を含む重賞70勝。著書に「覚悟の競馬論」がある。趣味はゴルフとボウリング。

 ◆鈴木 勝美(すずき・かつみ)1967年1月26日、群馬県出身。59歳。85年4月に美浦・矢野幸夫厩舎の厩務員になり、山崎彰義厩舎、八木沢勝美厩舎を経て、90年9月から国枝厩舎の調教助手に。忘れられない思い出の一頭は、厩舎に重賞、G1初勝利をもたらしたブラックホーク。