プロ野球選手はファンあってこその「プロ」という職業だ。同時に、雇い主がいるからこその職業だ。その一点において、この日の西…

プロ野球選手はファンあってこその「プロ」という職業だ。同時に、雇い主がいるからこその職業だ。

その一点において、この日の西武で最も光ったのは長谷川信哉外野手(23)だった。

2日、宮崎・南郷キャンプ。全体練習の開始前に後藤高志オーナー(76)の訓示が行われることは、事前に決まっていた。

おのおのが外野でのウオーミングアップに入り、訓示予定の5分ほど前にベンチ前へ戻る。半円を作り、選手やスタッフ100人近くでオーナーを待つ。

半円が生まれ始めた時点ですでに、帽子を脱いでいる人物がいた。それが長谷川だった。

最前列に立ち、そのままオーナーの到着を待って訓示を聞いた。

最終的にはほぼ全員が帽子を脱いだ。だから長谷川が1番手なのも、たまたまだったのかもしれない。

その時のことを尋ねられると「偉い方がいらっしゃるので。帽子を取ってお話を聞く、というのはもちろんベースにあって。今回は事前に分かっていることなので、最初から帽子は取っていました」とした。

京都生まれ、母は元舞妓(まいこ)さん。「礼儀は本当に厳しくしつけられました」という。なぜ、自分はプロ野球選手でいられるか-。その本質に迫るような場面で、敬意を自然に表現できるのは「さすが」のひと言ともいえる。

物事の本質を見抜く力はこれにとどまらない。外野手が集まってコーチの説明や指導を聞いた。長谷川は自然とコーチの隣で聞いていた。

外野手だけの守備練習が始まった。誰が最初でもいい状況で、長谷川は先頭に並んだ。スパイクへの履き替えもとても速い。

「競争というところで、一番目立たないといけないので。悪い意味で目立ったらダメですけど…。先頭でアップするとか、そういうことはヘッド(=鳥越ヘッドコーチ)から口酸っぱく言われてきたので、そこは染みついていますね」

教えを真っ向から受け止める。感じる。生かす。いいことも、そうじゃないことも。

後藤オーナーの訓示はコンプライアンス関連にも及んだ。昨今、プロ野球界でもいろいろな問題が起こる。順守を厳命された。

長谷川も昨年、その当事者になってしまった。自ら決意して、ヒーローインタビューの場でファンに謝罪したこともあった。

だからこの日のオーナー訓示も「自分にも言われていることだと受け止めました」と真っ正面から向き合った。帽子は誰よりも長く取ったまま。

昨季は右翼守備で再三、ファンをわかせた。でも今季、レギュラーは白紙だ。打たなければスタメンのチャンスがぐっと減る。

外野手にも新戦力が加わった。当然、彼らにまずチャンスが与えられることも悟ってはいる。

「本当に競争になるので、そこはしっかり戦っていかないといけないです。まずは味方との戦いを」

そこを制してこその、投手との戦い。今年こそ脱皮なるか。追い風とはいえ、居残り特打では8割の出力で10本のサク越え。打ち終えると、ヘルメットを取って打撃投手におじぎした。【金子真仁】