2月1日、神戸。SVリーグの男子オールスターゲーム、『エムット presents SV.LEAGUE ALL STAR…
2月1日、神戸。SVリーグの男子オールスターゲーム、『エムット presents SV.LEAGUE ALL STAR GAMES 2025-26 KOBE』がGLION ARENA KOBEで開催された。
「今日は楽しくできたらうれしいです。自分たちのチームのほうが雰囲気はいいですよ!」
宮浦健人(ウルフドッグス名古屋)はマイクに向かって言った。無骨な彼なりのリップサービスだろう。TEAM KENTO(試合はTEAM TAITOとの対戦)のキャプテンとして、会場を盛り上げようとする精一杯の煽りだ。
第1セットが終わった後、打ったサーブをレシーブで網の中に入れるエキシビションでは、宮浦はサーブ役として、森愛樹(日本製鉄堺ブレイザーズ)がパスしやすいボールを連続で入れている。いつもの剛腕ではない。味方のことを考えた丁寧なボールだった。やや大袈裟に言えば、雄大な男の優しさが表出していた。
SVリーグオールスターゲームでTEAM KENTOのキャプテンを務めた宮浦健人photo by YUTAKA/AFLO SPORT
2025-26シーズンも、宮浦は精強な武人のような風体でコートに立っている。ウルフドッグスの攻撃軸として、総得点数は日本人1位。オポジットという攻撃に特化したポジションを担う。ウルフドッグスは豊田合成時代からイゴール・オムルチェン、バルトシュ・クレク、ニミル・アブデルアジズと世界トップのオポジットがいたが、その系譜を継ぐ日本人オポだ。
宮浦は最後のパスを託される立場で、得点の責務を一身に引き受ける。空に飛び立つような跳躍力で跳ね上がり、高い位置で振り下ろす左腕の軌道は、敵の希望を挫く斬撃(ざんげき)にも映る。サーブは日本人屈指の破壊力を誇り、時速120キロを超える。しかも鋭い回転をかけており、ボールに魔法をかけたように手元でグンっと曲がる。
もっとも、宮浦自身は、求めるオポジット像にはまだ達していないという。
――宮浦選手は、大阪ブルテオンの西田有志選手とも異なる、世界有数のオポジットの雰囲気を持った選手だと思います。
今シーズン開幕前のインタビューでそう話を向けると、宮浦は毅然としてこう答えていた。
【「"オポジットの雰囲気"がまだ足りない」】
「いや、まだ足りないですね。今回(昨年9月に行なわれた世界バレー。グループステージ敗退に終わった)、代表で戦って感じたのは、"自分がチームを引っ張る意識がまだ足りない"ということで、もっと必要だと思います。そういうマインドを持っている選手がコートにいればいるほど強い。(世界バレーで)うまくいかなかったひとつの理由は、そこにあると思っていて。結果的に"何かうまくいかない"という空気が生まれてしまった。あらためて自分がまだ足りないと強く気づくことができたので、この瞬間も"どう行動していくか"が大事だと思っています」
一切の言い訳をせず、責任を転嫁しないのは、宮浦らしかった。自らを律し、不要なものをそぎ落とし、技を鍛え上げる。その静謐(せいひつ)さに色気が立ち上る。
「何かを変えられるのは、常に自分自身だと思っているので。もちろん、バレーはチームスポーツだから難しいですが、まだまだ、『もっとこうしておけばよかった』ということがたくさんあるので、もっと自分がやるべきことがあると思っています」
彼には辿り着きたい境地があるのだろう。だからこそ、自らを極限まで追い込み、その負荷で心身を鍛え上げる。
「世界トップのオポジットは自分の世界を持っているし、"オポジットの雰囲気"を持っています。自分には、まだそれが足りない」
宮浦は悔しさを滲ませたが、その硬骨さはまさにオポジットの"艶"ではないか。
「どんな状況であっても、『自分がやるんだ』という気持ちでやらないといけないと思っています。苦しい局面も『自分が打開するんだ』って。オポジットはそういうポジションなので。オポジットが醸し出す雰囲気、余裕というのがあって、競った場面でも『自分に持って来てくれたら問題ないよ』という雰囲気を出せるように......」
けっして多弁ではないが、ひとつひとつの言葉に重みがある。それは彼の放つスパイクにも似ている。生き様が込められていると言うのか、生き方そのものが詩的なのだ。
だからこそ、本人は承服できないだろうが、敗北すら絵になる。負けが、そこで終わらない。捲土重来、次の戦いを予感させるのだ。
――むしろ敗北が、宮浦選手を大きくしているのではないですか?
そう訊ねたとき、彼は低く太い声で即答していた。
「それは間違いなく、自分の原動力になっていると思います。足りないところを"もっと"っていうところで。それは世界選手権でも感じたことだし、大会中に修正し、改善できたらよかったですけど、少なくとも気づくことはできたんで、次に生かしたいですね。そういう(修正、改善の)繰り返しかなって思います。できれば成功体験を増やしたいですけど、負けることもある。目の前のことに集中し、全力でやったうえで勝ちか負けか。結果は出るけど、やり続けられるかどうか」
宮浦の質朴さは剛直さに通じる。日々の鍛錬が彼を形作っている。それは匂い立つほどに。2025-26シーズン後半戦も、左腕は唸りを上げる。