2月1日、神戸。『エムット presents SV.LEAGUE ALL STAR GAMES 2025-26 KOB…
2月1日、神戸。『エムット presents SV.LEAGUE ALL STAR GAMES 2025-26 KOBE』がGLION ARENA KOBEで開催された。SVリーグ男子のトッププレーヤーだけを揃えた大会だ。
TEAM TAITOとTEAM KENTOに分かれて行なわれた試合で、髙橋藍(サントリーサンバーズ大阪)は、1セット目のスタートからコートに入った。きれいな形のレシーブでボールを受ける。それは繰り返し研ぎ澄ませてきた技術の結晶だ。
いつものような勝負を問う試合ではなく、髙橋はリラックスしていた。スパイクがイン・アウト微妙なところでアウトになっても、朗らかな笑顔だった。水町泰杜(ウルフドッグス名古屋)、アントワーヌ・ブリザール(大阪ブルテオン)など、いつもは敵同士の選手との共演を楽しんでいた。ただ、「エムットボール」という特別ルールにより、1点が2点になるボーナスポイントを失えば負ける場面で、髙橋は一度、スパイクを決めて踏ん張っている。それも彼らしさだったか。
SVリーグオールスターゲームの
「ふうせんバレー体験会」に参加した髙橋藍photo by YUTAKA/AFLO SPORT
2025-26シーズンも、髙橋は首位を走るサントリーの先頭に立って、「勝負の天才」ぶりを発揮している。スパイク、サーブ、ブロック、レシーブとまさに八面六臂。オールラウンドなプレーを見せ、味方を奮励し、敵を屈服させる。
オールスターゲーム前の記録で、総得点は日本人3位の357点、アタック決定率はエバデダン・ラリー(大阪ブルテオン)に次ぐ日本人2位。サーブ効果率も水町に次ぐ日本人2位で、ショートサーブ、スパイクサーブを使い分けてレシーバーの頭を悩ませている。ブロック決定本数(1セットあたり)は日本人8位だが、上位の選手がミドルブロッカーであることを考えたら、どれだけ優れた数字か明白だ。サーブレシーブ成功率も全体で6位に入り、ディグも含めてリベロ顔負けだ。
これだけオールコートで技を繰り出せる万能選手はSVリーグにいない。おまけに、スペクタクルなプレーの連続だ。天性の感覚で足を使ってレシーブを上げ、猛禽類が上空から襲うようなバックアタックを仕掛け、フェイクセットでトリックを使ってトスを上げ、背面ショットでスペクタクルを演出し、勝負に怯んでいないからこそ、即興で技を繰り出せるのだ。
【「"いいバレー"をしないと勝てない」】
「自分が好きっていうのでバレーを始めてないので。兄(髙橋塁/サントリー)が始めるって言ってなければ、僕も始めてなかったですね。兄はバレーボールがめっちゃ好きで......ずっと『やりたい』って言っていたんですよ。ただ、うちの両親はどちらもバレーを知らなくて、始めるのに1年間かかったんですけど、兄は1年間も言い続けた」
髙橋はかつてのインタビューで、はっきりと語っている。バレー自体よりも、バレーに伴う勝負の楽しさに取りつかれたのだ。
「兄には、『バレーボールでよかったん?』って言われますね。兄が始めた時からついていって、僕の人生を動かしたわけじゃないですか? だから責任感もあったようで、『やめたい』って言い出した時もあったから、"バレーでよかったのかな"というのはあるみたいです。今では僕も『お兄ちゃんに感謝している』って言いますし、兄は『そう言われて救われる』って言っていますね」
パリ五輪の直前、髙橋はそう漏らしていた。バレーを極めることよりも、勝負を極めることで、誰よりもバレーの技術を身につける。そのパラドックスこそ、髙橋の正体だ。
「自分自身、(トップ選手と比べると)身長がそこまで高くないので。レシーブのところでクオリティの高いバレーボールをしない限り、勝つのは難しい。セッターが上げやすい位置にレシーブをして、セッターがいい状態でトスするという"いいバレー"を常にしないと勝てない。自分は何でもやるプレーヤーだからこそ、そこのクオリティにはこだわっていますね」
髙橋はそう言うが、常勝の矜持が鋭利な集中力を生み出す。特筆すべきは、"猛練習を重ねた"という我執は見せず、あっけらかんとやってのける点だろう。勝利には欠かせない献身と言うのか。それは彼のバレー人生に通底するもので、中1までは158cmとスパイカーとしては小さかったが、小さな自分と向き合ってリベロに没頭した。
「身長があるスパイカーだったら、レシーブを磨かなかったかもしれません。小さかったからこそ、"レシーブだけでも目立とう"って思いが小学生からずっとあって。レシーブだけは負けないってやっていました」
「ちっちゃい頃から、僕はできないものを人前で見せない。親の前でも見せないです。できるようになってから見せていました。やれない自分を見せるのがすごく嫌で。何にしても負けず嫌い。負けたらすごく悔しがるし」
その生き方が、彼に光を灯した。
――タイトルを左右する勝負のヒリヒリ感はプレッシャーにならないのか?
そう訊ねた時、髙橋は間髪入れずに答えていた。
「ならないですね(笑)。"そこで"勝てないなら意味がないと思っているんで」
真の勝者になったあと、髙橋はほんの一瞬だけ、人目を憚るほどの恍惚感を浮かべる。本人は「ホッとする」とその気分を表現するが、世界とひとつに溶けた感覚に近い。言わば、"生"の実感だろう。
SVリーグ後半戦も、勝負師は大車輪だ。