老いてなお意気軒昂。ダルビッシュの持つ経験は日本代表にとっても尊いものとなる(C)Getty Images年功序列の空気…

老いてなお意気軒昂。ダルビッシュの持つ経験は日本代表にとっても尊いものとなる(C)Getty Images
年功序列の空気も取っ払ったダルビッシュの心意気
お茶の間を沸かせたドラマチックな戴冠劇から約3年。世界が「打倒・日本」を掲げる中で、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)連覇を目標にする井端ジャパンがいよいよ本格的に始動する。
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去る1月26日に手続き等の関係で遅れている1人を除くメンバー29人を発表した井端弘和監督率いる日本代表は、2月14日から宮崎県での合宿をスタートさせる。10日間の短期間で、個々のコンディションアップ、ひいてはチームとしての結束を深められるかは、大会を占う上でのキーポイントともなる。
WBCへの機運も高まる中、日本代表にとっては心強い一報も舞い込んでいる。それはダルビッシュ有(パドレス)が、宮崎合宿から帯同するというものだ。無論、昨年10月に右肘にトミー・ジョン手術を執行した39歳は、リハビリの真っただ中。とてもボールを投げられる状態ではない。そのため、与えられたのは、本大会の開幕まで“特命コーチ”。あくまで限定的な役割となる予定だ。
期間は短く、できることも限られている。それでもダルビッシュの存在は、侍ナインにとって小さくないエッセンスとなり得る。日本が世界一まで駆け上がった前回大会も、彼の存在が「結束」の鍵となったからだ。
そもそも宮崎合宿からのメジャーリーガーの参加は「厳しい」という見方が大半を占めていた。実際、MLBが設ける保険の関係によりプレーの制約によって、ダルビッシュを除いた3人(大谷翔平、鈴木誠也、ラーズ・ヌートバー)は不参加を余儀なくされた。
それでも日本の後輩たちのためになるならとダルビッシュは宮崎に乗り込んだ。そして様々なアドバイスを送った。ピッチングの技術論はもちろん、日々のコンディショントレーニングの仕方、さらには食事に至るまで、多くの選手たちの抱く疑問に答え続けた。
初日はどこか“近寄りがたさ”もあった。一回りも年下の選手たちには緊張感もあった。それでも「壁」は、「ずっと長いこと一緒に過ごしている人と思って接するようにしています」と心がけていたダルビッシュ自身が積極的にコミュニケーションを図ることで自然と消えていった。オフの日には食事会も開催し、年功序列の空気を取り除いた。
代表戦と言えば、「絶対負けられない」という過度なプレッシャーが付き物ではあった。日本代表への期待が異常な盛り上がりを見せていた当時の国内では、「当然勝つだろう」という雰囲気もあった。それが特に若手選手たちの肩に重くのしかかった。
しかし、ダルビッシュは、連日のように熱心なファンが押し寄せ、日増しに重圧も高まった宮崎の地で「野球なので」とキッパリ。「やっぱり小さいときから楽しそうだから始めたことだと思うし、そこの原点を分かってほしいなと思います。とにかく楽しくやるのが野球だと思います」と指摘した。
時に「人生の方が大事ですから。言い方はあれですけど、野球ぐらいで落ち込む必要はない」とも説いた。とにかくダルビッシュは、硬くなりかけた後輩たちに「お祭りじゃないですけど、本来はそういう風にあるべきだと思うんで。国別の力比べというか。あっち(メジャー)の選手とかアメリカ人に訊いてもそんな感じなので、そこまで肩に力を入れることはない」と自然体で臨む重要性を語りかけた。

メジャーリーガーの中で唯一、宮崎合宿から参戦した前回大会のダルビッシュ(C)CoCoKARA next
「あの人がいなければ――」今永がWBC開幕前夜に漏らした感謝
楽しんでこその野球――。その心得を説かれたナインのケミストリーはかくして深まった。その空気感は、当時の栗山英樹監督が「ダルビッシュ・ジャパンと言ってもいいくらい。何十年かたったときに、日本の野球界にとって本当に大きなものになるのは間違いない」と認めるほどの価値を生んだ。
まるで“歩く教科書”のようだった。当時のダルビッシュの存在意義は、刺激を受けた後輩たちの言葉は如実に物語る。
約1年後にカブスと4年5300万ドル(約81億3300万円)の契約を締結し、メジャーリーガーとなった今永昇太(当時DeNA)は、WBC開幕前夜の取材で「チームを作ってくれた」と言葉を残していた。
「本当に家族のような感じになっています。冗談を言い合ったり、お互いに技術を教え合ったりして高め合ったり、時には弱みも見せたりする。そういう関係性が築けている。自分は本当に宮崎合宿から参加してくれたダルビッシュさんには感謝しています。あの人がいなければ、投手陣がここまで良い心境で大会を迎えられなかったと思います」
もちろん、宮崎合宿での帯同が実現すれば、3年前と状況は異なる。右肘の故障を抱えるダルビッシュは、あくまで選手としてではなく、「特命コーチ」という立場となる。ゆえに声のかけ方も変わるかもしれない。
それでも「前回大会の陰のMVP」とも評された名投手の存在が、ふたたび侍ジャパンの合宿を有意義にさせる可能性は大いにあると言えるのではないだろうか。
[文:羽澄凜太郎]
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