サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような、「超マ…

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回は、「歴代人口最少のワールドカップ出場国」について。

■低予算を乗り越える知恵

 キュラソー・サッカー協会が豊富な資金源を持っていたわけではない。「オランダ選手の帰化」というと、思い起こすのは近年のインドネシアの躍進だが、こちらは個人資産80億ドル(約1兆2400億円)とされる実業家エリック・トヒル会長の財力で選手を誘っている。資金源を持たないキュラソー協会が考えたのは「有名監督の招聘」だった。監督の名前でスポーサーを獲得しようという意図だった。

 2015年には、オランダのレジェンドであり、キュラソーにルーツを持つクライファートが監督に就任、2020~2021年にはオランダが生んだ世界的名監督のフース・ヒディンクもキュラソー代表を率いた。そして現在は、やはりオランダの名監督ディック・アドフォカートが存在感を放っている。

■逃せなかった大チャンス

 アドフォカートは1947年9月27日生まれの78歳。今夏のワールドカップでは最年長監督になる可能性がある。選手として代表に選ばれたわけではなかったが、オランダで10クラブの指導に当たったほか、ドイツ、ロシア、イングランド、トルコのクラブでも指揮を執り、代表チームも、オランダ(3期)、韓国、ベルギー、ロシア、イラクと歴任してきた。ワールドカップも、1994年のオランダ代表、2006年の韓国代表で戦った経験を持っている。

 2023年、キュラソー協会のギルバート・マルティナ会長は2026年ワールドカップを目指す代表監督を探していた。アメリカを中心にカナダとメキシコを含む3か国共同開催の2026年ワールドカップはキュラソーにとってビッグチャンスだった。出場が48チームに増え、共同開催の3か国を除くチームで「3枠+0.5枠×2(国際プレーオフに2チーム進出)」と、大幅に「広き門」となっていたからだ。ちなみに、2022年大会まで北中米カリブ海連盟に与えられていたのは、「3.5枠」だった。

 当時のキュラソー代表は、オランダ生まれのレムコ・ビセンティーニ監督を解任した後、スリナム出身で選手としてオランダやイングランドで活躍したディーン・ゴレが暫定的に監督を務めていたが、彼は「ビッグネーム」ではなかった。

■まさかの逆オファー

 最初にコンタクトを取ったのは2010年ワールドカップのオランダ代表監督、ベルト・ファンマルワイクだった。だが彼はすでに引退しており、再びサッカーチームを率いる気はないと返事をしてきた。次に当たったのはルイス・ファンハール(FCバルセロナ、オランダ代表、バイエルン・ミュンヘンマンチェスター・ユナイテッドなどの監督を歴任)だった。だが彼の返事はすげなかった。

「もし私が再び監督を務めるなら、それはワールドカップで優勝が可能なチームしかない」

 そんなときに、なんと、ディック・アドフォカートから電話がかかってきたのだ。

「キュラソーが代表監督を探していると聞いたんだが…。私でよければやるよ」

 マルティナは飛び上がった。

「私は彼にビジョンを語った。すると彼は『ギルバート、もしあの選手たちを獲得できれば、間違いなくワールドカップに出場できるチームになるよ』。私が『あなたの仲間を使ってスポンサーを獲得してもいいか』と聞くと、『もちろんさ』と言ってくれたんだ」(キュラソー・サッカー協会会長、ギルバート・マルティナ)

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