高校野球が転換期を迎えている。 2028年の第100回選抜大会をめどに全ての公式戦で7イニング制を採用することが望まし…
高校野球が転換期を迎えている。
2028年の第100回選抜大会をめどに全ての公式戦で7イニング制を採用することが望ましい――。昨年12月、日本高校野球連盟の「7イニング制等高校野球の諸課題検討会議」は、そんな結論の最終報告書を示した。
最終報告書を受けた昨年12月5日、そして1月29日の理事会では導入の可否について結論は出なかった。
29日の理事会では「様々な意見がある中、慎重に進める必要がある」「全国選手権大会において可及的速やかに採用すべきである」などの意見が出された。
なかでも、議論の経過などについて都道府県高野連や加盟校、そして社会に対して広く周知していくべきだ、という意見が多数を占めたという。
なぜ、いま野球の根幹ルールを変えようとしているのか。
喫緊の課題は、近年の暑さから選手や関係者の健康を守ることだ。
昨夏(6~8月)の全国の平均気温は平年より2.36度高く、統計のある1898年以降で最も暑かった。夏の地方大会では選手だけでなく、観客や審判の熱中症も相次いだ。
■2部制は「効果あった」が……
最終報告書によると、7イニング制にすることで、試合時間を約30分短縮でき、投手の球数も約30球減らすことができるという。これにより、熱中症やけがのリスクを減らすことが期待できる。
延長回数の短縮やタイブレーク制の導入、投手の球数制限など、日本高野連はこれまでも暑さや選手の健康対策に取り組んできた。
2024年夏の全国選手権からは、試合を午前と夕方に分ける「2部制」を導入。昨夏のデータでは、選手の熱中症疑いの数は6割減った。出場校アンケートでは8割以上が2部制に賛成だった。
ただ、2部制で行われた昨夏の大会第4日の第4試合、高知中央―綾羽(延長十回タイブレーク)は雨の影響で開始が遅れ、試合終了が午後10時46分だった。高校生の部活動として適切ではない、という意見もあった。
7イニング制であれば、試合終了が遅くなることもなくなり、大会役員や指導者の働き方改革にもつながるとしている。
■反対派の懸念は
また、最終報告書は少子化の影響で硬式野球部員数が減っていることにも触れた。試合や練習時間が短縮されることで日々の活動時間にも変化が生まれ、気軽に競技に取り組みやすくなり、普及効果も見込めるという。
U18(18歳以下)のワールドカップなど国際大会のほか、米国や台湾など多くの国・地域の高校年代が7イニング制を採用していることも理由に挙げた。
ただ、反対の声は多い。
昨年9月、滋賀県で開催された国民スポーツ大会で7イニング制が初めて実施された。「夏になれば良いと思うかも」「心地よい緊張感だった」という選手もいたが、監督や選手の大半が「物足りない」「早すぎる」と9イニング制を推した。
昨年6月に日本高野連が行ったアンケートでも、加盟校の約7割が反対だった。一般向けのモニター調査では7イニング制の賛成が反対を上回ったが、ファンらを対象に日本高野連ホームページで募った意見は9割が反対だった。
関西のある監督は「この状況で、現場の意見を『あくまで参考』で終わらすのは、あんまりではないか」とこぼす。
7イニング制になることで、過去の記録との比較ができなくなり、歴史的な価値が失われるという声や、八、九回の「ドラマ」がなくなることを残念がる声も多い。
また、2イニング=6アウトがなくなることで、選手たちのプレー機会を奪ってしまう。この点について、検討会議では、今春から全ての公式戦で指名打者(DH)制の導入を決めた。投手の疲労軽減だけでなく、選手に新しく活躍の場を与えることが狙いだ。
ほかにも、1校から複数チームの公式戦参加や選抜大会の出場枠増加などの案も挙がる。
最終報告書は春夏の甲子園大会がテレビやインターネットで日本だけでなく世界にも中継、配信されていることを重く見ており、熱中症リスクや働き方改革など社会的な課題に対して、「解決へ向けて自ら変化していく」ことの必要性も訴える。
次回の理事会は2月20日に予定されている。(室田賢)