昨秋の落馬事故で戦列を離れていた幸英明騎手=栗東・フリー=が1月31日の京都競馬から復帰することになった。同騎手は28…
昨秋の落馬事故で戦列を離れていた幸英明騎手=栗東・フリー=が1月31日の京都競馬から復帰することになった。同騎手は28日から調教騎乗を再開。一時は生命の危険も感じる状態であったこと、現役引退もよぎるほどの気持ちであったことなどを語った。
久々に味わう馬上の感覚がうれしかった。幸はこの日から栗東での騎乗を再開。シルクロードSに出走予定のオタルエバー(牡7歳、栗東・中竹和也厩舎、父リオンディーズ)などの手綱を執った。「トレセンの雰囲気も、馬に乗るのも好きですから。左足首にピンが入っているのでどうかと思いましたが、思っていたよりは良かったです」と笑みを浮かべた。
11月22日の落馬事故で鎖骨と左くるぶしに加え、肋骨10本も骨折。そのうちの3本が肺に刺さり、その肺に圧迫された心臓が体の真ん中あたりまで押されていたという。「搬送される時は死ぬのかなと思いましたし、お医者さんに『あと10分、20分ぐらいかかったら危なかった』と言われました。骨折の場所が重傷になりづらい場所だったのが不幸中の幸いでした」と壮絶な負傷を振り返る。
史上最速でJRA騎乗2万回を達成するなど“鉄人”と呼ばれるが、今年1月12日には50歳に。脳裏に今まで考えもしなかった思いが浮かんだ。「このまま辞めようかな」。これ以上、家族に迷惑をかけられないという強い責任感。妻は理解してくれた。
しかし、引き留める人がいた。「デビューするまで乗っておいてほしい」。今は競馬学校生で、来春のデビューを予定する息子の大斗さんだ。昨秋に栗東で研修に来ていたが、当時は夏の落馬事故からの療養中でほとんど会うことができなかった。「1回も息子と併せ馬をできなかったんです」。大斗さんは現在、栗東にはいないが、来月には再び研修を行う予定。息子の成長した姿を間近で感じる瞬間も、ようやく訪れようとしている。
リハビリ中にはバレットや、同じレースで負傷した浜中俊騎手=栗東・フリー=の呼びかけで若手騎手から寄せ書きも届いた。その人柄はベテランとなった今でも、多くの人から愛されている。「いきなり、復帰週で重賞に乗せていただく。ありがたいですね」。逆境を乗り越えた“鉄人”がもうすぐ戦いの場へ戻ってくる。(山本 武志)