蘇る名馬の真髄連載第31回:ビワハヤヒデかつて日本の競馬界を席巻した競走馬をモチーフとした育成シミュレーションゲーム『ウ…

蘇る名馬の真髄
連載第31回:ビワハヤヒデ

かつて日本の競馬界を席巻した競走馬をモチーフとした育成シミュレーションゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)。2021年のリリースと前後して、アニメ化や漫画連載もされるなど爆発的な人気を誇っている。ここでは、そんな『ウマ娘』によって再び脚光を浴びている、往年の名馬たちをピックアップ。その活躍ぶりをあらためて紹介していきたい。第31回は、芦毛の馬体でGⅠを3勝したビワハヤヒデの走りを振り返る。


三冠最終戦の菊花賞でついに戴冠を遂げたビワハヤヒデ(青帽)

 photo by Sankei Visual

『ウマ娘』のビワハヤヒデは、実妹ナリタブライアンの圧倒的な才能に対抗すべく、鍛錬を重ねていくキャラクター。また、同期にはナリタタイシンやウイニングチケットなど、才能豊かなウマ娘が多数いるのも特徴だ。

 こうした設定は、競走馬・ビワハヤヒデをモチーフとしたもの。ウマ娘の物語では姉妹になっているが、実際のビワハヤヒデとナリタブライアンは兄弟。ナリタブライアンと言えば、クラシック三冠を含むGⅠ5勝の成績を残した"怪物"だ。

 そのひとつ上の兄がビワハヤヒデである。同馬は、ウイニングチケットとナリタタイシンという同世代のライバルと「三強」を形成。そして、この3頭が熱き戦いを繰り広げたのが、1993年のクラシック三冠だ。

 この年、4歳(現3歳。※2001年度から国際化の一環として、数え年から満年齢に変更。以下同)のビワハヤヒデは、デビューから着実に勝利を重ねて牡馬クラシックへ駒を進めた。それまでの戦績は6戦4勝、2着2回。一冠目となるGⅠ皐月賞(中山・芝2000m)には、ウイニングチケットに次ぐ2番人気に支持された。

 大外枠発走ながら、好位の5~6番手につけたビワハヤヒデ。4コーナー手前から進出していって直線半ばで先頭に立ったが、ゴール前で大外から強襲してきたナリタタイシンに屈して、惜しくも2着に敗れた。

 続く二冠目のGⅠ日本ダービー(東京・芝2400m)。ここでも1番人気に推されたのはウイニングチケット。ビワハヤヒデは2番人気、3番人気にナリタタイシンが続いた。

 レースでは中団馬群の内に構えたビワハヤヒデ。直線、馬群をうまく割って追撃を図るが、先に抜け出したウイニングチケットを最後まで捕えきれず、再び2着惜敗に終わった。

 2度の苦汁を味わった春。その悔しさを胸に夏場を過ごして迎えた秋、ビワハヤヒデについに躍動の時が訪れる。

 前哨戦のGⅡ神戸新聞杯(阪神・芝2000m)を快勝し、春のリベンジを誓って臨んだ三冠最終戦のGⅠ菊花賞(京都・芝3000m)。2番人気ウイニングチケット、3番人気ナリタタイシンを抑えて、ビワハヤヒデは堂々の1番人気に支持された。

 ゲートが開くと、ビワハヤヒデは先団へ。ウイニングチケットはその後ろでレースを進め、ナリタタイシンは最後方の位置取りだった。

 4コーナーの勝負どころに差しかかると、ビワハヤヒデがスッと先頭に並びかけていく。三冠すべてでコンビを組んできた鞍上の岡部幸雄騎手は、手綱をがっしり持ったまま。余裕十分の手応えだった。その直後にいたウイニングチケットは、それを見てゴーサインを出す。ナリタタイシンは大きく遅れを取った。

 直線、レースは完全にビワハヤヒデのものとなった。一気に抜け出すと、後続を大きく突き放す。ダービー馬のウイニングチケットが懸命に追うが、その差は詰まらない。外からは伏兵のステージチャンプが追い込んできたが、ビワハヤヒデはその影さえ踏ませなかった。

 結果は、後続に5馬身もの差をつけたビワハヤヒデが念願のタイトル奪取。レコードタイムによるリベンジ達成に、テレビ中継の実況を務めた杉本清アナウンサーも「菊の舞台で春の無念を晴らした岡部とビワハヤヒデ!」と声を挙げて称えた。

 この勝利を皮切りに、ビワハヤヒデは全盛期を迎える。翌年(1994年)には、GⅠ天皇賞・春(阪神・芝3200m)とGⅠ宝塚記念(阪神・芝2200m)を連勝。ファンの関心は、同年の三冠戦線で圧勝を続けていた弟ナリタブライアンとの"直接対決"に移っていった。

 しかし、この夢は現実とはならなかった。ビワハヤヒデはその年の秋に屈腱炎を発症。引退を余儀なくされたのだ。もしも究極の兄弟対決が実現していたら、どんなレースが繰り広げられただろうか。当時を知る競馬ファンなら、つい語りたくなるトピックである。