蹴球放浪家・後藤健生は世界中でサッカーを目に焼き付けてきた。それと同時に、世界中の人間も見てきた。日本でも世界でも嫌な…
蹴球放浪家・後藤健生は世界中でサッカーを目に焼き付けてきた。それと同時に、世界中の人間も見てきた。日本でも世界でも嫌なニュースが目につくが、蹴球放浪家には人間の善性を信じるだけの経験がある。
■どこにでもいる悪人たち
「蹴球放浪記」には、これまで数多くの悪人が登場してきました。
ブエノスアイレスで僕にピストルを向けてバッグをかっぱらっていった少年2人組とか、アルゼンチンやブラジルで僕のバッグや服に変な臭いのする液体をかけた何人かの“ケチャップ強盗”。ヨーロッパ各国の路上でお出ましになった偽警官たち……。
アフリカ各国には、さまざまな口実を設けて金をせびりに来る人たちがいました。そして、最初から存在しないファーストクラスのチケットを売りつけたシリア国営航空……。
まさに、人種や宗教を問わず、さまざまな手口を仕掛けてきました。
……といったことを書くと、「海外は危険なところ」とか、「外国人は犯罪者だらけ」といった誤解を持たれてしまいかねません。
たとえば、「海外では忘れ物をしたら絶対に戻ってこない」といったことがよく言われます。海外在住の人とか、ガイドさんたちが、日本から来た安全ボケしている観光客に警告の意味を込めてこうした言葉を口に出し、それが広まったものなのかもしれません。
■スペインでの感動
でも、必ずしもそんなことはありません。
スペインのバレンシアだったと思うのですが、考えごとをしていて、タクシーを降りたときに車内にカメラを忘れてきてしまったのです……。すぐに気が付いたのですが、タクシーは走り去ってしまいました。
「さて、どないするかのぉ~」
タクシーからは一応、領収書をもらっていたので、「これを警察に見せれば何とかしてくれるかな?」「まず、タクシー会社に電話しなきゃな」と道端で考えを巡らしていました。
すると、さっきのタクシーが戻ってきました。
「おおい、カメラ忘れてんゾ!」とドライバー。
こうして、カメラは無事に戻ってきたのです。
同じようなことは、タイのバンコクでも経験しました。「あのときは、何を忘れ物したのか」。それすらも忘れてしまいましたが、ね。
■ロシアでの大ピンチ
最大のピンチは、モスクワ南部にあるヴヌコヴォ空港での出来事でした。
ロシア・ワールドカップのグループリーグ最終戦、日本対ポーランドの試合を観るために、試合当日の朝、ロシア南部のヴォルゴグラードに向かおうとしていたのです。
手荷物検査場を通過してから2階に上がって、チェックイン・カウンター前の行列に並んでいました。
日本や西側諸国ではチェックインを済ませて搭乗券を受け取ってから、搭乗口に行く途中に保安検査場で手荷物検査がありますが、空港の建物に入るところで手荷物検査が行われる国もたくさんあります。
行列に並んで、順番が近づいてきたのでパスポートを用意しようとして気が付きました。
「ヤバッ」、パスポートや財布を入れたポーチがなかったのです。
すぐに遺失物の窓口に駆け付けましたが、そこには誰もいませんでした。
必死で記憶をたどります。
「そうだ、手荷物検査場に置いてきちゃったんじゃないか?」