【島田明宏(作家)=コラム『熱視点』】 今週の月曜日、1月19日に2004年の桜花賞馬ダンスインザムードが、翌20日に…
【島田明宏(作家)=コラム『熱視点』】
今週の月曜日、1月19日に2004年の桜花賞馬ダンスインザムードが、翌20日には2004年の皐月賞などGIを5勝したダイワメジャーが世を去った。
同い年で、同じ社台ファームの生産、そして、何度も同じレースで走った2頭が、互いの存在を世にあらためて印象づけるかのように、相次いで永眠した。25歳だった。
ダンスインザムードは繁殖牝馬として、2011年のフェアリーSを勝ったダンスファンタジアをはじめ11頭の仔を産み、ダイワメジャーは種牡馬として、メジャーエンブレムやアドマイヤマーズなど数々のGI馬を送り出した。
前述したように2頭は何度も同じレースに出走し、うち3回、ワンツーフィニッシュになっている。3回とも、勝ったのはダイワメジャーだった。直接対決でダンスインザムードが先着したのは、ダイワメジャーが喘鳴症(ノド鳴り)のため能力を出せなかった2004年の天皇賞(秋)だけだった。
だからダイワメジャーのほうが強かった、と言うつもりはなく、特にワンツーフィニッシュしたときなどは、「馬体を併せて叩き合ったら牡馬が牝馬を威圧して前に出る」という「競馬の常識」が作用した、と私はとらえている。特に2006年のマイルCSなどは、外から伸びてきたダンスインザムードが突き抜けそうな勢いだったのに、ダイワメジャーと馬体を併せそうになると、自分でブレーキをかけたような感じだった。
もちろん、抜かされそうになったらまた伸びるというダイワメジャーの強み(妹のダイワスカーレットもそうだった)による部分もあったのだろうが、それ以上に、たまたま「牝牡(ひんぼ)の差」が出やすい間柄だったのだと思う。
ダイワメジャーの武器は産駒にも伝えられ、それが顕著に見られたのは、アドマイヤマーズが直線でグランアレグリアと馬体を併せて制した、2018年の朝日杯FSだった。アドマイヤマーズに乗っていたミルコ・デムーロ騎手に、意識してグランアレグリアに併せに行ったのかと訊くと「もちろん」と答えた。ダイワメジャーで皐月賞を勝つなど、父の武器も知悉している騎手ならではのファインプレーだった。だからといってグランアレグリアのほうが弱いというわけではないのは先ほどの例と同じで、まだ2歳の少女時代に、勢いのある男子に競りかけられ、精神的に消耗して(あるいは嫌気が差して)しまい、3着に終わってしまった、というところだろう。
これまでも、私は、「牡馬と牝馬が叩き合ったら威圧感に勝る牡馬が前に出る」ということの例として、ダイワメジャーとダンスインザムードのワンツーフィニッシュをよく挙げていた。
その2頭が、こうして一緒に(と言っていいと思う)旅立ってしまったということに、何か不思議な、感慨めいたものを感じた。
どちらもサンデーサイレンス産駒なので現世では結ばれなかったが、天国でも仲よくしてほしいと思う。
さて、時は前後するが、先週、乗馬を愛する人たちによる「フリーダムライディングクラブ(FRC)」の定例会に参加してきた。定例会といっても堅苦しいものではなく、新橋の中華料理店で食事を楽しみ、その後半に講演が行われる、というものだ。今回は、日本初の女性オーナーブリーダー・沖崎エイさんの孫で、鍋掛牧場代表の沖崎誠一郎さんが講師をするというので、私も拝聴させてもらうことになった。
その店には、「優駿エッセイ賞」の選考委員会の打ち上げなどでも行ったことがあったのだが、今回は30人ほどでワンフロアを借り切るという、ゆったりとした雰囲気からして、とてもよかった。会場に着くと、コビさんこと小桧山悟元調教師が手を振って、「島田君はここね」と、コビさんと沖崎さんの間の席を指さした。
沖崎さんの、私と反対側の隣にはFRC代表の田中雅文さん、その隣にはこの店のオーナーが座った。オーナーもかつて乗馬を嗜んでいたという。
配られた参加者リストに「第204回」とあったので驚いた。この集まりは25年もつづいているのだという。
沖崎さんの講演は、教え子である東北大馬術部の選手の奮闘ぶりや、五輪の近代五種競技で馬術が行われるようになった経緯、そして、鍋掛牧場を創設した祖母の話など、とても面白かった。『優駿』に連載している「一代の女傑」の取材で、少なく見積もっても50時間以上話を聞いているはずだが、それでも初めて知る話もあった。そのひとつが、沖崎さんがモスクワ五輪の総合馬術の代表候補だったときの話だ。日本がボイコットしたため、選手は「五輪代表」と表現することは認められず、結団式は行われなかったのに、解団式だけ行われたのだという。
乗馬と競馬、馬術と競馬の距離が、ここ数年でどんどん近くなっているのを感じる。引退競走馬に対する注目度が高まっていることと無関係ではないはずで、このテーマに関しては、またあらためて考えたい。
フォーエバーヤングと坂井瑠星騎手が2025年の「Number MVP賞」を受賞した。北米の「エクリプス賞」の年度代表馬などの発表も現地時間22日夜(日本時間23日朝)と、近づいてきた。
また、告知には少し早すぎるかもしれないが、浦河を拠点にサラブレッドの撮影をつづけている内藤律子さんの写真展が、2月11日から丸善日本橋店で行われる、という報せを受け取った。
先月の半ばあたりから、ばね指が再発してしまった。結局手術することになるのだろうか。職業病のようなものだから、まあ、仕方がない。