📖 この記事でわかること・✓ 地域クラブ指導者の時給・月収・年収の具体的な相場感・✓ 競技別に求められる資格と取得方法…

📖 この記事でわかること

・✓ 地域クラブ指導者の時給・月収・年収の具体的な相場感
・✓ 競技別に求められる資格と取得方法
・✓ 契約書で必ず確認すべきポイントと交渉のコツ
・✓ 自分に合った働き方を選ぶための判断材料

「地域クラブで指導者として活動したいけれど、実際にいくらもらえるの?」「資格がないと指導できないの?」「契約で気をつけることは何?」――地域クラブ活動への参画を検討するとき、こうした現実的な疑問が浮かぶのは自然なことです。


第15回では、雇用・業務委託・ボランティアという3つの参画方法の全体像を解説しました。本記事では、その次のステップとして、報酬相場・必要資格・契約条件という3つの観点から、より具体的な条件面を詳しく解説します。スポーツ庁の実証事業データや自治体の公開情報をもとに整理しました。自分に合った働き方を見つけるための判断材料として、ぜひご活用ください。

時給1,600円?2,300円?地域クラブ指導者の報酬相場

地域クラブ指導者の報酬は、地域・競技・雇用形態によって大きく異なります。「思ったより高い」と感じる方もいれば、「想像より低い」と感じる方もいるでしょう。まずは実証事業や自治体事例の傾向を把握し、ご自身の状況に照らして判断することが大切です。

時給・日給の傾向と地域差

地域クラブ指導者の報酬について、スポーツ庁が全国統一の基準を定めているわけではありません。報酬は自治体ごとの裁量に委ねられており、地域によって大きな差があるのが実情です。

ただし、参考となるデータはあります。令和3年度(2021年度)にスポーツ庁が全国約100自治体で実施した「地域運動部活動推進事業」では、指導者への謝金は時間単位で支払われるケースが70%を占め、平均時間給は2,292円でした(出典:教育新聞「指導者の平均時間給2292円 部活動の地域移行の実践事例を公表」2022年11月2日)。

一方、自治体が独自に設定する部活動指導員の時給は1,200〜2,500円程度と幅があり、1,600円前後に設定している自治体が多く見られます。たとえば、東京都の都立学校では時給2,300円(交通費別途支給)で募集されている事例があります。

🔑 図解:まず押さえる“3つの数字”(本文の根拠)

レンジを見る前に、本文に出てくる代表値を3つに固定すると判断が速くなります。

平均(実証事業)

2,292

円/時

令和3年度「地域運動部活動推進事業」

(約100自治体/平均時間給)

よく見られる帯(自治体例)

1,600

円/時 前後

部活動指導員の時給に

「1,200〜2,500円」程度の幅

募集例(都立学校)

2,300

円/時

交通費別途支給の

募集事例として提示

▲ 3つの数字を基準にして、地域・競技・雇用形態の条件で上下する、と捉えると読み違いが減ります。

📍 図解:相場がズレる3要因(地域×競技×雇用形態)

本文の要点「地域・競技・雇用形態で大きく変わる」を、確認順で整理しました。

地域差

自治体裁量が大きく、1,200〜2,500円など幅が出やすい。

都市部業務委託が多め/やや高めになりやすい

地方謝金・ボランティアが多め

競技差

競技人口が多い種目は指導者も多く、相場が低めになる傾向。

専門性が高い/指導者が少ない競技は高めに設定される場合も。

雇用形態差

ボランティア/謝金/業務委託/パートで支払い方が異なる。

例:都立の募集例は時給2,300円(交通費別)

▲ まず「地域→競技→雇用形態」の順に見ていくと、相場の見誤りを防げます。

報酬形態別に整理すると、以下のような傾向が見られます。

・ボランティア:無償、または交通費実費程度の支給が一般的
・謝金型:時給換算で1,200〜1,800円程度が多い
・業務委託:専門性や競技によって1,500〜3,000円程度まで幅がある
・パート雇用(会計年度任用職員等):1,200〜2,300円程度

地域による差も見られます。都市部では業務委託型が比較的多く、時給もやや高めの傾向がある一方、地方では謝金型やボランティアベースの活動が多いのが現状です。

競技による差にも注目が必要です。サッカーや野球など競技人口が多い種目は指導者も多く、相場はやや低めになる傾向が見られ、専門性の高い競技や指導者が少ない種目では報酬が高めに設定されるケースも。

注意点:上記の数値はあくまで実証事業や自治体事例をもとにした参考値であり、実際の報酬は自治体・運営団体との交渉や契約条件によって異なります。

雇用形態別の月収・年収シミュレーション

第15回で解説した3つの参画方法別に、月収・年収のモデルケースを見てみましょう。

🧾 図解:月収の見積もり手順(本文のケースで確認)

「時給 × 1回の時間 × 週の回数 × 4週」でまず計算し、次に現実の制約を確認します。

STEP 1

まず計算

時給 × 時間/回 × 回数/週 × 4週

数字で“上限”を掴む

STEP 2

ケースで当てはめ

ケース1:2,000×2×2×4=約3.2万円

ケース2:1,500×3×4×4=約7.2万円

ケース3:掛け持ちで10〜15万円も

STEP 3

現実の制約

移動・調整コスト

募集要項の上限

年間上限20万円の設定例

▲ 本文の結論どおり「指導だけで生計」は難しいケースが多い前提で、無理のない見積もりを。

【ケース1】週2回・各2時間の業務委託(時給2,000円)の場合、月収は約3.2万円に(2,000円×2時間×2回×4週)。

【ケース2】週4回・各3時間のパート雇用(時給1,500円)の場合、月収は約7.2万円となる計算です(1,500円×3時間×4回×4週)。

【ケース3】複数クラブを掛け持ちするフリーランスの場合、月収10〜15万円も可能。ただし移動時間や調整の手間も増えます。

率直に言えば、「指導だけで生計を立てる」のは現状では難しいケースが多いのが実情です。複数の自治体の公開情報を確認すると、指導者への年間報酬上限を設定しているケースが見られます。たとえば、年間上限を20万円程度に設定している自治体が多く、これは確定申告の扶養控除の範囲を意識した設計と考えられます(出典:各自治体の部活動地域移行実施方針)。

そのため、副業・兼業として取り組むことを前提に、現実的な収入イメージを持つことが大切です。持続可能な働き方については、第19回「キャリア展望と副業両立」で詳しく解説します。

どんな資格が必要?競技別の要件と取得ルート

「資格がないと指導できない」と思われがちですが、実際は競技や活動形態によって要件が異なります。資格が必要なケースと不要なケースを整理しておきましょう。

競技団体公認資格と日本スポーツ協会資格の違い

指導者資格には、大きく分けて2つの系統があります。

日本スポーツ協会(JSPO)公認資格は、スポーツコーチングリーダー、コーチ1〜4など、競技横断的な汎用資格です。令和6年度(2024年度)からは「スポーツコーチングリーダー」が基礎資格として整備され、完全オンラインで受講可能になりました(出典:日本スポーツ協会「公認スポーツ指導者制度」)。

競技団体公認資格は、JFA公認コーチ(サッカー)、日本バスケットボール協会公認コーチなど、各競技の連盟・協会が発行する専門資格です。

令和7年(2025年)12月に策定された「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」では、認定地域クラブ活動において「適切な指導体制」の確保が求められており、資格保有者の配置が推奨されています(出典:スポーツ庁)。

取得ルートは、共通科目(JSPO実施)と専門科目(競技団体実施)の講習受講が基本。費用は数千円〜数万円、取得期間は数日〜数ヶ月程度が目安です。

🛣️ 図解:資格取得ルート(共通→専門→現場)

本文の「共通科目(JSPO)+専門科目(競技団体)」を、取りやすい順に整理しました。

STEP 1

共通科目(JSPO)

競技横断の基礎

オンライン受講も可能

STEP 2

専門科目(競技団体)

種目ごとの要件

連盟・協会の講習

STEP 3

配置・研修(自治体/クラブ)

認定地域クラブ活動の体制整備

研修受講が求められる可能性

▲ “法的義務”ではなく、ガイドライン上の推奨・体制整備の観点で求められるケースが増える可能性があります。

資格なしでも指導者になれる条件

資格が必須ではないケースもあります。

有資格者の監督下で補助指導者として活動する場合は、資格がなくても参加できることがあり、また、まずはボランティアとして活動に参加し、段階的に資格取得を目指すルートも現実的な選択肢です。さらに、豊富な競技経験や指導実績が評価され、資格要件が緩和される場合もあります。

ただし、新ガイドラインでは「認定地域クラブ活動指導者」の登録制度が新設される方向性が示されており、今後は一定の研修受講が求められる可能性があります。

「まずは活動を始めてから資格を取る」というステップも現実的な選択肢です。活動しながら必要な資格を見極め、計画的に取得していくことをおすすめします。

後悔しないための契約チェックリスト

報酬や資格と同じくらい重要なのが、契約条件の確認です。あいまいなまま活動を始めてトラブルになるケースも少なくありません。契約形態に関わらず、事前に確認すべきポイントを押さえておきましょう。

契約書で必ず確認すべき5つの項目

雇用・業務委託・ボランティアのいずれの形態でも、以下の5項目は必ず確認してください。

🧷 図解:契約前に見る順番(5項目→3つのリスク例)

本文のチェック項目を「交渉の起点」になる順で並べ、見落としやすい点を強調しました。

1

業務範囲

準備・片付け・保護者対応まで含むか/拘束時間が増える可能性

2

報酬・支払条件

支払時期/交通費・備品費/(業務委託は)源泉徴収の有無

3

活動時間・頻度

固定か変動か/急な変更への対応義務の有無

4

契約期間・更新

単年度か自動更新か/解約条件(何日前通知か)

5

責任範囲・保険

事故時の責任分担/保険加入の有無と負担者(最重要)

▲ 口頭ではなく書面で残す、という本文の指示を前提に“確認順”として使ってください。

口頭での約束ではなく、必ず書面で残すことが大切です。団体側の視点については、第30回「地域クラブのリスク管理と法務」でも解説します。

あいまいにしがちな責任範囲の明確化

トラブルになりやすいのは、「責任範囲のあいまいさ」です。具体例を挙げて考えてみましょう。

例1:練習中の怪我。誰の責任になるのか、保険は誰が加入しているのか。地域クラブ活動では、学校の災害共済給付制度の対象外となるため、スポーツ安全保険などへの加入が推奨されています(出典:公益財団法人スポーツ安全協会)。

例2:保護者からのクレーム対応。指導者が直接対応すべきか、運営団体が窓口となるのか。役割分担を明確にしておかないと、指導者個人が過度な負担を抱えることになります。

例3:備品の破損・紛失。弁償義務はあるのか、保険でカバーされるのか。

契約前に「こういうケースはどうなりますか?」と確認しておくことで、トラブルをみぜんに防げます。第18回「リスク管理とハラスメント防止」では、指導者の法的責任についてさらに詳しく解説します。

不安な点は契約前に解消し、納得した上で活動を始めることが何より大切です。

✅ まとめ

本記事では、地域クラブ指導者として活動を始める前に知っておきたい3つのポイントを解説しました。

・報酬相場:実証事業での平均時間給は約2,300円だが、自治体により1,200〜2,500円と幅がある。年間上限20万円程度の設定が多く、副業・兼業としての活動が現実的
・必要資格:JSPO資格や競技団体資格の取得が推奨されるが、必須ではないケースもある。「まず活動を始めてから資格を取る」選択も可能
・契約条件:業務範囲・報酬・責任範囲を書面で確認することが重要。特に保険加入の有無は必ずチェック

条件面を正しく理解した上で、自分に合った働き方を選んでいただければと思います。

次回予告:第17回では「学校教員との効果的な連携と指導方針の調整方法」を詳しく解説します。

📚 参考文献

スポーツ庁「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」(令和7年12月)

https://www.mext.go.jp/sports/content/20251222-spt_oripara-000046180_00234.pdf

スポーツ庁「部活動改革ポータルサイト」

https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop01/list/1372413_00003.htm

スポーツ庁「令和5年度 地域移行についてのスポーツ団体の取組状況等に関する調査」

https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop01/list/1372413_00003.htm

教育新聞「指導者の平均時間給2292円 部活動の地域移行の実践事例を公表」(2022年11月2日)

https://www.kyobun.co.jp/article/20221102-02

日本スポーツ協会「公認スポーツ指導者制度」

https://www.japan-sports.or.jp/coach/

公益財団法人スポーツ安全協会「学校部活動の地域連携・地域クラブ活動」

https://www.sportsanzen.org/chiikiiko.html