<猛虎リポート>阪神近本光司外野手(31)が今年も鹿児島・沖永良部島で単独自主トレを行っている。あえて離島を選ぶのはトレ…

<猛虎リポート>

阪神近本光司外野手(31)が今年も鹿児島・沖永良部島で単独自主トレを行っている。あえて離島を選ぶのはトレーニング環境とは別に、未来への思いがある。子どもたちに「体験」というきっかけを与え、学び、そして還元とつながる末永いサイクル作りを理想に描く。随時企画「猛虎リポート」で報告する。【柏原誠】

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沖永良部での近本効果は想像以上だった。人口1万人超の島で単独優勝パレードを開催。パレード車をにぎやかに先導したのは地元の野球少年たち。その後に行われたセレモニーでは近本の登場曲に合わせてキッズがダンスを披露。質問コーナーでは笑いが絶えなかった。主役は近本であり、島の子どもでもある。真ごころのこもった手作りイベントは胸を打つものだった。

来島歴は6年目。シンプルで自然豊かな環境に身を置いてトレーニングに没頭できる。もう1つの重要な目的がある。日本の未来、島の将来を担う子どもたちへの影響だ。毎年継続して来島するだけで大きな意味がある。「きっかけ作り」という言葉をよく使う。

「プロ野球という職業について、いろいろな活動を始めました。人に(恩を)返すというより、次に思いをつなぐことが大事だと思っています。すぐには結果は出ないけど5年後、10年後には(ある程度)結果が出る。正解は分からない。間違いもあるかもしれない。でも大事なのはそういうことなんじゃないか」

近本というプロ野球選手が島に来ていた記憶。サインを書いてもらった思い出。交わした会話…。すべてが少年少女にとっては「きっかけ」だろう。これまでずっと実体験の大事さを説いてきた。出身地・淡路島で得てきた自らの経験が大きい。ただ、そこに押しつけは一切ない。自らで選択することが何より肝要だと思っているからだ。

「プロ野球は結果がすべての世界。でも教育は結果どうこうではない。子どもたちが何を感じて、何を切り取って自分のものにしていくか。それは周りの誰も想像できない。僕から強制するわけでも、レールを敷くわけでもない。あくまできっかけです。彼らがなぜその選択をしたのか、その先で何を学び、どう成長していくのかがすごく大事です。大人になった時に地域のために何かできることがないかな、と行動に移してくれるかどうか。野球を続けることだけが大事だとは思っていないです」

最も重視するカギはきっかけ作りとサポートの継続。ただ、その2つには労力を要するし「難しいこと」とも言う。現役選手という身分だからできることがあると信じて、行動する。自身も決して無理をするわけでもなく、心の奥底から湧き出る意思に基づいてナチュラルな形で動いてきた。

与えるだけではない。沖永良部自主トレには自身への大きなメリットも感じている。「人との交流だったり、素で人と関われることですね。自分がなんで野球をやりたいのか、なんでここまで野球を続けてきたのかをやっぱり考えさせられる。思い出させてくれるのがこの島なんです」。

混じりっけのない気持ちで過ごすこの時間が、大きな意味を持っている。