NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26ディビジョン2 第3節2026…

NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26
ディビジョン2 第3節
2026年1月10日(土)14:30 江東区夢の島競技場 (東京都)
清水建設江東ブルーシャークス 26-21 レッドハリケーンズ大阪

描いてきた夢の、その先へ。理想にたどり着いたフッカーが切り拓く未来の自分


清水建設江東ブルーシャークスの田森海音選手(右から2人目)

レッドハリケーンズ大阪を二度の逆転の末に退け、清水建設江東ブルーシャークスは開幕3連勝を飾った。その熱狂に満ちた試合において、後半の勝負どころでピッチへ送り出されたのが、背番号16を着けた田森海音だ。

彼が受け取るのは、単なる交替のサインではない。37歳の鉄人・立川直道という『絶対的な壁』が築き上げた、泥臭くも強固なスクラムの流れだ。


清水建設江東ブルーシャークスの立川直道選手

「出てきた瞬間からインパクトを与えられるように。後半から出るときは特にそこを意識しないといけない」。そう語る若きフッカーの瞳には、勝利への渇望と、ある種、順調過ぎたキャリアへの戸惑いが混在していた。快進撃を続けるチームの陰で、いま、一人の選手が「描いてきた夢の、その先」を見つけようともがいている。

明治大学という名門を経て、一部上場企業の会社員として働きながら、リーグワンという国内最高峰の舞台で体をぶつけ合う。彼にとって現在のキャリアは、少年のころに思い描いていた中でも最上のものだという。

しかし、田森はいま空白の前に立っている。「ここから先、プランがないんです」。そう語る彼の言葉は、決して後ろ向きなものではない。むしろ、自らの手で人生の正解を一つずつ手繰り寄せてきた現在の充実感の裏返しでもあった。高校、大学、そして社会人。大学時代には、生き残るためにバックローからフッカーへの転向も自ら志願した。そして、かつての自分が思い描いた“理想の場所”へとたどり着いたのだ。

一方で、第3節のグラウンドでは課題も顔をのぞかせた。「個人としては、そこまで良くなかった」。スクラムでペナルティを奪えた場面もあれば、逆に取られた場面もある。安定感が求められるポジションだからこそ、細部への意識が結果に直結する。これまでポジションや強みを変えることで成長してきた田森にとって、“いまいる場所”から逃げずに、どれだけ丁寧に積み上げられるかが問われる時間なのかもしれない。本人が口にする「プロセスへの立ち返り」が、そのカギを握る。

それでも、いまの田森は誰よりもラグビーを楽しんでいる。「仕事をして、この環境で、世界のトップを見てきた選手たちもチームメートにいて、ラグビーができている。どう考えてもハッピーですよ」。そんな田森を、仁木啓裕監督も「好不調の波がなく、やるべきことを理解している頭の良い選手」と評し、信頼を寄せる。その期待に応え、自らの想像すら超えて立ち位置が少しずつ変わっていったとき。そのときこそ、かつての少年も描けなかった、最高に贅沢な景色が「プランのないここから先」に広がっているのかもしれない。

(奥田明日美)

清水建設江東ブルーシャークス


清水建設江東ブルーシャークスの仁木啓裕監督兼チームディレクター(左)、安達航洋キャプテン

清水建設江東ブルーシャークス
仁木啓裕 監督兼チームディレクター

「まずは、この試合開催にあたりご尽力いただいた関係者の皆さまに、心より感謝申し上げます。正直、いつもどおり胃が痛くなるような展開でしたが、14点差をしっかりはね返して勝ち切れたことは、チームとして一つ壁を乗り越えられた証だと感じています。成長をはっきりと実感できる試合でした。

昨季も連勝したあと、年明けに日本製鉄釜石シーウェイブスさんと対戦して敗れ、そこから自信の部分で少し下を向いてしまった時期がありました。今回は14点ビハインドの状況から逆転し、勝利をつかめたことが何より大きいです。これまでの会見でも繰り返し話していますが、チームは確実にタフになってきていますし、成長を感じられる一戦だったと思います。本当にありがとうございました」

──かなり風が強い中での試合でしたが、影響はどの程度ありましたか。

「江東区夢の島競技場を使わせていただいて5シーズン目になりますが、今日の風はその中でも1、2を争うほど強かったと思います。ただ、それも含めて夢の島らしい条件ですね。こうした想定もしながら、いろいろなゲームプランを立て、コーチ陣が天気予報も見てしっかり準備してくれました。実は木曜日の夜練習でも、今日と同じくらいの強風が吹いていて、そういう部分でも運がついていたのかなと思います。そうして良い予行演習ができましたし、試合に出ていないメンバーが仮想レッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)として非常に良い準備をしてくれたことも大きかったです。上のコーチングボックスから見ていても、仮想RH大阪がプレーをしているのを思い出させてもらえるようなRH大阪の攻撃だったので、今日は本当に全員でつかんだ勝利だと思っています」

清水建設江東ブルーシャークス
安達航洋キャプテン

「前半は風下を選択しました。相手がキックを強みにしているチームだということは分かっていたのですが、前半は風下でしっかり我慢して、後半にそこをはね除けて勝とう、というプランは試合前から会話していました。14点を先に取られましたが、そこは想定内で、ハドルでは『もう一度ボールを継続して前に出ていこう』という話をしました。実際に前半のうちに2トライを返すことができ、良い形で前半を終えられたと思います。後半はエリアも取ることができ、プランどおりに試合を進められた結果、勝利することができたと感じています」

──シーソーゲームの展開になる中で、キャプテンとしてどんな声掛けをしていましたか。また、個人としては復帰戦でしたが、手応えはいかがでしょうか。

「前半は風下をとって、厳しい展開になることは分かっていたので、『想定内だから慌てず、まずはディフェンスで前に出て、アタックはボールを継続しよう』という声掛けをビリー(・バーンズ)中心にしていました。個人的には、もっとディフェンスでチームを前に出したかったという思いはあります。ただ、規律の部分や声掛けなどでチームに貢献できた部分もあったと思います。この3節をとおしての課題でもあるので、日野レッドドルフィンズ戦までの次の1週間でチームとしてもう一度徹底して取り組んでいきたいです」

レッドハリケーンズ大阪


レッドハリケーンズ大阪の松川功ヘッドコーチ(左)、山口泰輝バイスキャプテン

レッドハリケーンズ大阪
松川功ヘッドコーチ

「本日の試合開催にあたり、協会関係者の皆さま、レフリーの皆さま、そして清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)のファンの皆さまを含め、多くの方々にご尽力いただき、誠にありがとうございました。江東BSは昨季に続き、さらにレベルアップした非常に魅力的なチームだと感じています。そうした相手に対して、われわれがどこまで自分たちの戦い方を発揮できるかに挑戦するつもりで今日の試合に臨みました。ただ、大事な場面でスコアを取り切れなかったことや、ペナルティが重なったことで、自分たちが求めていた勢いや流れを80分間キープし続けられなかった点は、残念な部分です。一方で、自分たちが目指している形は徐々に出せてきているとも感じています。そこをさらに強化しながら、今季をとおして成長できるよう取り組んでいきたいと思います。本日はありがとうございました」

──大事な場面でトライを取り切るために必要なことは何でしょうか。また、今日の強風は想定していましたか。

「正直に言うと、想像していた以上に風は強かったです。近隣のホテルに宿泊したのですが、ここまで強くなかったですし、事前に強いという話は聞いていたのですが、グラウンドに来てみてあらためて風の強さを実感しました。前半と後半で戦い方をどうするかは考えましたが、今回は風を理由にプランを大きく変えることはせず、事前に準備してきた形を貫きました。

今後強化していかなければならないところとしては、小さなところですが、通常のプレーの中でもストレスが掛かること、プレッシャーが掛かった状況、時間的・精神的・点数的なストレスの中でも、いかに正確なプレーを継続できるかという点です。例えば、フォワードのピック&ゴーの場面でも、小さなパスが少し浮いてしまうだけでボールがキープできなかった場面がありました。そうした細かい部分に、よりこだわって取り組んでいきたいと考えています」

レッドハリケーンズ大阪
山口泰輝バイスキャプテン

「まず、この試合を開催するにあたり、協会関係者の皆さま、そして江東BSの皆さまに感謝申し上げます。今季ここまで2試合を戦ってきて、われわれの課題として挙がっているのがペナルティの多さです。そこを改善していかなければ勝てないと感じています。今回のゲームテーマは『アグレッシブチャレンジャー』でした。江東BSは昨季よりも明らかにレベルアップしており、特にスクラムをはじめとしたセットプレーを強みにしているチームです。そこに対抗できるよう、しっかり準備をして試合に臨みました。前半の入りは、ディフェンス・アタックともに良いマインドセットでプレーできていたと思います。しかし、徐々に相手のフィジカルやアタックを受ける形になり、最終的には敗戦につながったと感じています。リーグ戦はまだ続きますので、規律やフィジカルの部分を鍛えて、次の試合に臨めたらと思います。ありがとうございました」

──点の取り合いとなる中で、ピッチ内ではどのような声掛けをしていましたか。

「かなり拮抗した試合の中で、前半にこちらが2トライを取ったあと、相手に2トライを返されましたが、前半は14対12で終えることができました。後半は風下になる状況だったので、ゲームキャプテンとして『もう1回、0対0の気持ちで後半に入ろう』と声を掛けました。ただ、風下の影響もあり、相手に押し込まれる場面が多く、そこは改善が必要だと感じました。一方で、後半の終盤にはしっかり敵陣に入り、自分たちのアタックを展開できた場面もあったので、その点は良かったと思っています」